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詩・散文「赤猫」

赤猫

〇猫、夕日を見ているの?
●まさか、西を向いているだけさ。
〇あら?寝ころんだ。
●寝そべった。
〇そうしてじっとアスファルトの熱を体に吸い込んでいる。
●最後の温もりを味わいながら。
〇猫、ないている?
●どうして?
〇わからない。でも、睫毛がキラキラと濡れているみたい。
●錯覚さ。
〇でも、私の影はこんなにも伸びてゆらゆらと・・・
●揺れている?
〇1ミリの厚みもなく。
●幽霊みたいに。
〇街の灯りはまだつかない?

●蝙蝠は鳥でもないのに、なんであんなにひらひらと蝶のように舞っているのだろうか。
〇紺に深い大気の底で、夜が訪問を躊躇っている間に、私の影はこんなにも伸びてしまったの。

●猫、知っているのかな。
〇何を?
●だってほら、寝ころんだまま、じっと、赤く、染まっていく・・・


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