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No.444 AETとの忘れがたい思い出


天下の奇祭として有名な岡山・西大寺会場の裸祭りは、奈良時代に始まったそうです。

室町年間の1510年、忠阿上人の時に、修正会結願の日(旧暦1月14日)に参詣の信者に守護札を出したところ、福運の希望者が続出し、やむなく参詣者の頭上に投与すると猛烈な奪い合いに…。「紙のお札だと破れてしまう」ことから、「直径約4センチ、長さ20センチほどの宝木(しんぎ)」と呼ばれるものになり、これを得たものに福を授けたと言います。御福窓から裸の大集団に向かって院主が「宝木」を投下すると、激しい御神木の争奪戦が繰り広げられます。境内で、裸の男たちが、揉み合い圧し合いしながら上気した身体から立ち上る湯気の様は、勇壮無比の証そのものです。その御福に肖ろうと約3万人もの参拝者が境内を埋め尽くすそうです。日本人のみならず、血沸き肉躍る祭りです。

12年前の2月22日(月)朝のこと、外国語指導助手(AET)のT先生が、喉を嗄らした声で「オハヨウゴザイマス!」と職員室に入ってきました。その理由を聴いたら、
「ハダカマツリデ、コエダシスギ…」
と言います。一体、どこの裸祭りのことかと思ったら、何と日本三大裸祭りの一つである岡山の西大寺会場(その年は、2月20日)に19日から参加して来たとのことです。
「ご神木にさわれましたか?」
との答えに、
「Pセンセイガ、フンドシニカクシタケド…、ウバイトラレマシタ!」
のだとか。一度も御神木に触ることが出来ない人の方が圧倒的に多いでしょうに、股間に隠すという荒業をやってのけただけでも神がかり的です。すごーい!

TV画面でその祭を見ただけで思わず後ずさりし、踵を返したくなる程の大迫力です。そんな天下の裸祭りに褌一丁で参加するなんて、このAET二人の行動力は、見た目とは違ってもの凄いものがあります。彼らは、全国にネットワークを持ち、互いに連絡を取り合って、積極的に日本の文化を吸収して母国に帰るようです。その活動的な姿や心意気には、見習うべきものがあります。

その御利益があったかどうかは分かりませんが、その後、P先生は日本人女性と結婚し、今は、大学の教壇に立っています。T先生は、故郷に帰国しました。あの日、日本人と文字通り「裸の付き合い」をしたT先生に一言感想を聞いたら、
「トテモタノシカッタ!」
と親指を上に向けて、私にウインクしました。ウインクすると何故か両まぶたが閉店ガラガラ状態になってしまう私にとって、ウインクできる人はアイドルです。T先生にウインク返しいができないまま別れました。

今日は、私にとって、AETの忘れ難い日です。