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No.897 あなたの地方では、何と?

「トッキョキョカキョク!」
昨日、早朝6時半ごろ散歩をしていたら、遠くの空でホトトギスの鳴き声がしました。滑舌の良い、空を切り裂くような鋭い鳴き声で、初夏の到来を告げています。

ホトトギスは、古くから初夏の風物詩として捉えられていました。 そして、既に奈良時代(8世紀)の頃に「托卵する渡り鳥」であることが知られていました。例えば、『万葉集』巻第9・1755番の歌に、
「鴬の 卵(かひご)の中に 霍公鳥(ほととぎす) 独り生れて 己(な)が父に 似ては鳴かず 己が母に似ては鳴かず…」
(うぐいすの 卵の中に ほととぎすは 独り生まれて お前の父に 似ては鳴かず お前の母に 似ては鳴かない…)
とあるように、ホトトギス(「カッコー」という説もあるそうです)がウグイスの巣に托卵していたことがハッキリ知られます。万葉人の鋭い観察眼に恐れ入ってしまいます。
 
ところで、「ホトトギスの兄弟」の話は、日本の民話の一つです。その山形のお話を紹介します。ホトトギスが、どうしてあんな風に鳴くのかを教えてくれます。兄弟の確執?いやいや、食べ物を巡る邪推とは、恐ろしいものであるという教訓でもあります。

『ホトトギスの兄弟』
 とんとむかし。
 あるところに、兄と弟が住んでおった。あるとき、兄は病気になって、ちっとも働けんようになってしまった。それで、弟は、
 「あんちゃんの分まで、おれが働かないかんな」
と、毎日毎日、汗みどろになって働いていた。
 五月に入ると、山芋(やまいも)が食べごろになった。弟は、土深くうまっている山芋を掘(ほ)ってきては、
 「あんちゃんは病気だから、うまいとこを食ってけろ」
と、兄には山芋のうまいとこを食わせ、自分は皮やつるのまずいとこばかり食っていた。
 
 兄は、そんなことなど知らんから、はじめは、
 「うまい、うまい」
と、山芋を食っておったが、だんだん、
 「おれは働かなくても、こんなにうまいものを食っているのだから、弟はどんなにうまいものを食っているかわからん」
と、思うようになった。
 ある夜、兄はどうでも弟の食っているものが見とうなって、寝ている弟を殺してしもうた。そして、腹をさいてみたところ、弟の腹の中は、山芋の皮やつるばかりだった。兄は、
 「自分でまずいとこ食って、おれにうまいとこ食わせていたのか。こんな兄思いの弟を殺すなんて、おれはほんとに悪いことをしてしもうた」
と、後悔したが、もう取り返しはつかん。
 兄は、泣いて泣いて泣き通した。泣いているうちに、いつか、ホトトギスになってしまい、 
 〽 弟恋しい 弟恋しい
 と、山の中を飛び回るようになったと。
 今でもホトトギスは、山芋のとれる五月になると、
  〽 弟恋しい 弟恋しい
 と、毎日、八千八声鳴く。ホトトギスの口ばしが赤いのは、あんまり鳴きすぎて、口から血をはくからだとさ。それでモズは、ホトトギスをかわいそうに思って、虫をとっては木の枝にさしておいて、ホトトギスに食べさせているんだと。
 山に行ったときには、ホトトギスの鳴き声をよーく聞いてごらん。
  〽 弟恋しい 弟恋しい
 と聞こえるから。
 どんぺからっこ ねっけど。

出典:民話の部屋「とんとむかしあったとさ」

このように、民話では、その話の内容と絡めてホトトギスの鳴き音の理由を教えているようです。ネットで調べたところでは、
「オトトコイ、オトトコイ」(三重県多気郡、旧勢和村)
「本性になった。本性になった」(鹿児島県薩摩郡)
などの例がありました。
 
私には「特許許可局」に聞こえてしまいます。しかし、特許庁の設置は、1949年(昭和24年)5月の事だそうですから、昔の人々の知るところではありません。そのほか、「テッペンカケタカ」や「ホンゾンカケタカ」などの聞きなしもあるそうです。

皆さんの地方でのウグイスの鳴き音の「聞きなし」は、どんなものですか?


※画像は、クリエイター・INOUE Tomohiroさんの、タイトル「11月の花」をかたじけなくしました。説明に「ヒロハノタイワンホトトギス」とありました。お礼申しあげます。