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スキを探す美術館巡り③三菱一号館美術館(丸の内) 芳年vs芳幾 2人のライバル展~浮世絵を超えろ!若手絵師の奔走

昨年10月に、一度訪れている三菱一号館美術館。
現在の建物は復元されたもので、赤レンガ造りの文明開化的な館。
その三菱一号館美術館が今年4月、今の展覧会をもって1年半ほどのメンテナンスのため長期休館になる。

そんな異国情緒溢れる建物が丸の内のど真ん中で、なかなかに面白い企画展が開催されているので行ってみた。(2023年4月9日まで、要予約)

赤レンガ造りが好きだったなと思い出す

子どものころ、横浜の赤レンガ倉庫が改修してオープンした。
そのころからみなとみらいには家族で足を運んでは行って、馬車道アイスを食べて、貨物線路跡を辿りながら歩き回るのが定番だった。

さらに歴史を学べるので純粋に面白かった。

今回、赤レンガ造りの三菱一号館美術館を訪れたいと思ったのも好きだから。かもしれない。

建築美にあこがれを抱いていたのかも

師匠の後継者!正統vs革新の物語

長期休館前最後の展覧会・芳幾vs芳年
聞いたことのある人もいるだろうか。
私はなんとなく…ぼんやりとそんな名前の人がいたな…くらいでした。行くと決めたときにちょっとだけ予習をしましたが。

歌川国芳という浮世絵の第一人者を師匠にもつ弟子2人が、芳幾と芳年。
芳幾のほうが年上で、絵は正統派。師匠の死に絵を描いた。
芳年は年下で、革新的な絵を描く。スランプ気味だったらしい。
約5歳差の若き浮世絵師2人が師匠の後継者として、華の都・江戸でチャキチャキにバチバチしていた…(チャキチャキって通じるのかな)

これだけ聞くとなんともコミカルな感じというか(私の説明がざっくりしすぎている)、喧嘩するほど仲が良い、そんな気もしてくるけども、とにかく2人はライバル意識が高かったようだ
江戸っ子の「勝負だ!!喧嘩だ!!」みたいなもので、火事と喧嘩は江戸の華だてやんでぇ!的なものを感じたのは恐らく見に来ていた人のなかでもいたと思いたい。

実際の絵は2人の性格や張り合いを表しているかのようで、時たま、とてつもなくドロッとしていて闇が深かった…

浮世絵を超える、浮世絵

さて、師匠・歌川の後継者として芳幾と芳年は武者絵から始まり、数多くの作品を通して腕を磨いていた。
時に2人で合作(共作)もしていたようなので、仲が悪いわけでもないようだ。

師匠の後継という重荷というより…期待を背負い、何を思って描いていたのかは絵を見ると分かるような気がする。

ネタバレになってしまうので、見てきたものでも2つをピックアップ。
どちらが芳幾でどちらが芳年かは是非自らの目で見て肌で感じてほしい。
そのくらい見ごたえのあるものだった。(一部撮影OKでした)

青と赤のグラデージョンの背景が美しく、人物の線の細さが際立つ
一見シンプルな気もするが、躍動感があって迫力が凄い

最終的には明治時代・晩年まで絵を描き続けていた2人。
明治時代には各々で新聞を発行して世の中の人々へ絵を届けていたそうな。
流行りやニュースなど、多岐に渡って実に何千枚と描いていた。

それも、江戸の浮世絵を更に進化させるように、時代に合わせ、変化をつけながら…いやぁ、凄い。
食い入るようにガン見してしまった


勝負は結局どうなったのか…

最後には芳年派か、芳幾派か、と甲乙つけ難い感想ふせんを貼った…

気になる勝負の結果は、”引き分け”になったそうだ。
うーん、これは何とも勝負がつかないものである。
歌舞伎役者の絵にしろ、武将の絵にしろ、新聞にしろ、とにかく彼らは師匠亡き20年後まで勝負というか、張り合いが続いたそうだ。

どちらも素人でも驚くほど、切磋琢磨し腕を上げていったことがわかる。

人気や独創性などなど今も昔も人々が評価する部分というのは似たようなものだなと感じたのだが、何せ100年以上前の絵である。
今やシンプルかポップかで心を捉えられるかみたいな風潮があるけども、私は鮮麗でちょっと闇を感じるような絵のほうが正直惹かれる

確かに、見やすさや都会感のあるもののほうがオシャレでかっこいいかもしれないけども、今こそこういった派手派手で繊細な浮世絵を注目しても良いのではないだろうか。
ちょっとしたを通り越してかなり遊びを、否、憎いとも言えるような、プライドが見え隠れしている絵は現代では新鮮で面白いと思う。

カフェメニューでも2人の勝負腰を感じた

三菱一号館美術館内には、銀行営業部分をカフェにした場所がある。
せっかくなのでランチをすることにしたが、なかなかの盛況っぷりでお昼時のオフィス女子を中心に盛り上がっていた。春休みも相まって混雑気味。
(予約はwebで出来るが速攻×になっていた…)

ここで頂いたのは今回の展覧会とのタイアップランチセット。
前菜・メイン・ごはんもの・紅茶orコーヒー。
プラスワンコインでデザートも付けられるので思わず注文。

丸の内というだけで華やかな印象(田舎者)
いかにも銀行の窓口っぽい”しきり”もあるが、復元建築なのだ…すごいディティールだ

料理が運ばれてくると。思わず黙々と食してしまった。そのくらい美味しかった。

メインの鶏のグリル 山椒をつけて頂くがアクセントになり、若き浮世絵師2人を彷彿とさせる
中でもリゾットが気に入った!!クリーミーで優しい味…

デザートは抹茶が苦めで上品な味。江戸っ子のイメージというより京町屋。
上にかかっていたあられのような淡いお菓子が繊細な味を引き立てていた。


併設のライブラリーも訪れると良い

文明開化に想いを馳せて…

作品の展示数はやはり師匠・歌川国芳と弟子門下の2人分なのでかなりのボリューム。午前中の部で予約をしたが、じっくりしっかり見るとお昼ごろまで掛かった。
浮世絵がいかに日本を活気づけ、発展していったか、若き絵師の対決にハラハラドキドキしながら見学が出来て面白かった。

描き方はもちろん、文字のデザインや構図なども師匠から受け継いだ技法もあり興味深いものであったし、何より浮世絵というジャンルが面白い。
要は昔の庶民の情報を得られる手段であるが故に幅が広いと感じた。

最終日は4月9日。
あと1週間ほどで一時閉館を迎える三菱一号館美術館。
ぜひ一度足を運んでほしい場所である。


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