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62.三題噺「未来、百鬼夜行、写真」

 夜遅く、僕たちは教室に来ていた。

 夜の学校になぜ入れているかというと、生徒会顧問の先生が同行するという条件で許可してくれたらしい。

 いい加減な先生だから本当か怪しいけど……。

 教室内には大きな笹がある。
 先輩が放課後にどこかから持ってきたと言っていた。相変わらずの行動力だ。

「せっかくの七夕、楽しまないとね〜♪」

 先輩は鼻歌を口ずさんでご機嫌に願い事を短冊に書いている。

 僕以外にも生徒会長のマカロンくんや、同クラさんや、後輩ちゃん、先生もいて勢揃いだ。

 僕はみんなの短冊を見てみようと教室を歩いた。

 同クラさんの願い事は、好きな人と両思い三角関係になれますように。と書いてあった。
 え、どういうこと? 僕は混乱した。

 後輩ちゃんには気づかれて「変態っ」と罵られて隠されてしまった。

 マカロンくんは、僕の願い事を見せるという交換条件で見せてもらえた。
 案の定思い人の先生のことが書いてあって、2人とも似たような願い事だねと吹き出してしまった。

 先生のは、見ようとした瞬間に撃退された。

「先輩」

 みんなで写真を撮った後、意を決して僕は先輩をこっそり呼んだ。

「ん?」

 と先輩は大きな瞳で僕を見る。

 今日は七夕であり、サマーバレンタイン。

 ほんとに小さなものだけど、先輩に贈り物をしたかった。

「ほんの気持ち程度のものですが……」

 僕は先輩に小さなお菓子をプレゼントした。

「えっ。すごく嬉しい」

 先輩はふにゃっとはにかんだ。
 喜んでくれて、僕も嬉しくなって頬をかいた。

「先輩は願い事なんて書いたんですか?」

「ん? えへへ……。内緒。後輩くんは?」

「僕も内緒です」

 僕は自分の短冊に書いた願い事を見た。

 視界の隅で後輩ちゃんが何故か僕と先輩を見てぐぬぬとしていて、同クラさんが必死に押さえていた。

 マカロンくんは先生と談笑して赤面している。
 先生も赤面してるように見えるけど……。もしかして、願い事叶ってる?

 僕は心の中で、この楽しい幸せな時間が未来まで続きますように、と願った。

 その後、案の定先生は許可をとっていなかったらしく、警報が鳴り響いて警備員から逃走することになった。

 夜に奇妙な動きをしながらコソコソ逃走する僕らは、百鬼夜行として学校の怪談のひとつになったとか……。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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