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25.三題噺「パチパチ、積む、墜落」

 僕は、いつ先輩に伝えようか悩んでいた。

 放課後、先輩が好き勝手使っている空き教室で僕たちはジェンガで遊んでいた。

 何かしたいと言った先輩のいつも通りの突拍子もない行動で、持ち込んでいる玩具の中からとってきたのだ。

 真向かいに座っている先輩が、抜いたブロックを上に積む。

 次は僕の番だ。

 難所に差し掛かっていて、気を抜いたら今にも崩れそうだ。

「……」

 僕は無言のままブロックを慎重に抜いて上に積んだ。

「おぉ〜! すごいすごい!」

 先輩はパチパチと手を叩いた。

「次、先輩の番ですよ」

「なかなか後輩くんは手強い男だねぇ」

 むむむ、と唸りながら先輩はブロックを取る。

 真剣な表情で集中している先輩は、たぶん僕が見ていることに気づいていない

 伝えるなら、今だろうか。

 と思っていたら先輩が僕を見た。

「……え?」

 ポトリと先輩が手にしていたブロックは重力に従って床に墜落。
 動揺した先輩が顔を覆おうとして、手が当たったジェンガは崩れた。

 僕は先輩から目を逸らさない。

「先輩」

「ひゃいっ!」

 体が跳ねる先輩。頬が赤らんでいる。
 多分、僕も同じくらい赤いんだと思う。

 でも、今言うべきだ。

 見つめ合うこと数秒。沈黙する空き教室。

 僕は意を結した。

「明日の放課後、予定空けといてください」

「へ? ……なんで?」

「なんでもです」

 先輩は安堵したように髪を整え、深呼吸した。

「……わかった」

「お願いしますね」

 納得してくれてよかった。

「何かあるの?」

「今はまだ内緒です。でも、楽しみにしていてください」

「……?」

 気づいてないみたいだけど、明日は先輩の誕生日。

 みんな集めて盛大にお祝いする予定だ。

 無事、誘えてよかった。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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