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135.三題噺「初恋、句読点、ハンドボール」

 僕は後輩ちゃんに誘われてハンドボールスクールの体験に来ていた。

「先輩、今日は一緒に来てくれてありがとうございます」

「たまにはちゃんと運動して汗掻いたほうがいいと思ったからちょうどよかったよ」

 説明を聞きながら一緒に受けている人たちを見てみる。

 高齢の人もいれば、大学生っぽい人もいて、最年少はたぶん僕と後輩ちゃんだ。

 僕はその中でも大学生らしき男女が気になった。

「あの男の人、たぶん隣にいる女の人のこと好きだよね?」

「え? なんでそう思ったんですか?」

「だって、明らかに他の人と接する態度と違うから。それに、側から見ててもソワソワして落ち着かない感じに見えるし。たぶん、大切に思ってるんだろうなって」

「先輩。そこで鋭さを発揮しなくていいです」

 僕は後輩ちゃんにジト目を向けられた。
 どこで鋭さを発揮すればいいんだろう?

「後輩ちゃんは初恋いつだった?」

「えっ……。先輩は?」

「僕は小学生の時だよ。後輩ちゃんは?」

「そ、その人は……どんな人だったんですか?」

「えっと……。近所の子だったよ。転校しちゃって会えなくなって失恋したんだけどね」

「わ、わぁ〜。ありがちですね〜」

「それで、後輩ちゃんは?」

「うっ……。逃げられなかった……」

「流石に厳しいと思うよ」

「デスヨネ〜」

 カタコトでそう言って、はぁと後輩ちゃんは観念した。

「私の初恋は、中学三年生の時、というか、高校に入る前の春休みの時です」

「結構遅めなんだね」

「悪いですか」

 後輩ちゃんはむぅっと唇を尖らせて拗ねた。

「そういうのは人それぞれだから良い悪いなんてないよ。どんな人なの?」

 うぅと後輩ちゃんは唸った。

「言わなきゃ、ダメ、です、よね……。先輩も。話したんだから……」

 変なところに句読点がついている。
 なんで動揺してるんだろう。

「その人は、頭がよくて優しくて、いざという時には頼りになるかっこいい先輩です」

 うちの高校にそんな人いたかな?
 後輩ちゃんが先輩って言うってことは二年か三年だろうけど……。

「目の前にいるのに……。やっぱり鈍い。でも今ばっかりは助かった……」

「協力しよっか?」

「絶対! いりません!!」

 かなりの勢いで拒否られてしまった。
 後輩ちゃんは素直じゃないなぁ。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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