167.三題噺「貯金、見どころ、探索」
今日は文化祭二日目。
「貯金を使い果たす勢いで楽しむぞ〜」
「廊下は走っちゃダメですよ」
一仕事終え、休憩時間になった途端に先輩に手を引っ張られて僕は校内を連れ回される。
縁日をやっている教室で水ヨーヨー釣りをした後は、食べ歩きをしたり、プラネタリウムを見たりした。
どれも文化祭というクオリティを超えたものばかりで、見どころがいっぱいだ。
先輩は歩きながらいちご飴を食べている。
後輩ちゃんのクラスがやっていた屋台で買ったものだ。
「後輩くんも食べる?」
はい、と渡されるけど恥ずかしくて食べられるわけがなかった。
「歩きながら食べちゃダメですよ」
どう反応したらいいか分からなかった僕は適当な注意で誤魔化した。
「次はどこに行きますか?」
「後輩くんのクラスのお化け屋敷!」
「わかりました」
「その次は学校探索ね! 宝探し独り占めするんだ〜」
先輩の目はキラキラしている。
これは今日一日付き合うコースかな。
「はいはい」
自分のクラスにつき、お化け屋敷に入る。
ホラーは苦手じゃないし、仕掛けを知っているから怖くはない。
先輩も作り物のホラーは大丈夫のようだ。
ありがちな怖がってしがみつかれるみたいなのはなかったのだけど……。
「きゃっ」
うちのクラスにはランダムで驚かしポイントがある。
流石の先輩もこれには小さく悲鳴をあげた。
けれどその反動で転びそうになっているのが暗闇の中でもわかった。
「あ、あぶなっ!」
支えようとして暗闇に手を伸ばすと、先輩の体温と共にふっと唇に何か柔らかな感触がして離れた。
……? なにが触れたんだろう。
暗いから何も見えない。
「えっ? え、あ……」
先輩は何かに気づき、きゅっと、僕のクラTの裾を掴んできた。
「先輩……?」
声をかけても返事はない。
立ち止まってると迷惑がかかるし、とりあえずお化け屋敷を出ることにした。
「こ……後輩くん。用事、思い出したから、帰るね」
廊下に出てわかったけど、先輩のほっぺが赤い。
指先で唇に触れて俯いている。
「わかりました」
なんだか唇がやけに甘い。いちご味だ。
僕は唇に触れた暖かく柔らかな一瞬の感触を思い出した。
いや……まさか。まさかね?
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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ランダム単語ガチャ
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