172.三題噺「スローダウン、朝日、遅延」
「せんぱーい……もしもーし」
耳元で後輩ちゃんの声が聞こえる。
「っ……。ごめん、意識飛んでたかも」
「眠かったら寝て大丈夫ですよ?」
「後輩ちゃんは眠気きた?」
「私はまだ眠れなそうなので、もうちょっとだけ起きてようかなと思ってますが……」
「なら付き合うよ」
「ありがとうございます。やっぱり先輩はやさしい」
深夜、寝付けなかった僕がスマホを見ると、後輩ちゃんからメッセージが届いていた。
後輩ちゃんは、学校から帰宅してすぐ夕寝をしたそうで夜寝れなくなったらしい。
眠れない夜の仲間同士、僕と後輩ちゃんは通話を開始したのだ。
「私、生徒会に入れてよかったです。先輩と一緒にいられる時間も増えたし……」
「そう言ってくれると僕も嬉しいよ」
生徒会の忙しさに翻弄されるだけでなく、後輩ちゃんなりに楽しんでるみたいだ。
学年が違うから同クラさんほど顔を合わせるわけでもないし、先輩のように遊びに来るわけでもない。
必然的に後輩ちゃんとコミュニケーションが取れる時間は、以前までは少なかったのだ。
僕たちは今までの時間を埋めるように色々な話をした。
そんな会話の勢いも、眠気とともにスローダウンしていく。
耳元で後輩ちゃんの息遣いが聞こえる。
「……おやすみ。後輩ちゃん」
時間を確認するともう朝だ。
僕は自室のカーテンを開けた。
朝日が眩しい。
制服を着た学生が登校している。
あれ、なにかおかしい。
でも頭が回らない。
「むにゃむにゃ……。先輩、おやすみー」
後輩ちゃんは夢の世界へ旅立つところのようだ。
よかった。
……よかった?
僕は今が何時で、今日が何曜日か確認した。
「やば……。今日学校だ」
平常通りの思考なら今日も学校があることなど分かりきっているのに、頭から抜け落ちていたらしい。
「後輩ちゃん! 起きて!」
「ふぇ? せんぱいの声が聞こえる〜」
今はふにゃふにゃしてる場合じゃない。
「登校の準備しないと遅刻だよ!」
「…………え¡¿」
寝ぼけから覚醒した後輩ちゃんは焦り、変な驚愕の声を出した。
どこからそんな声が出たのか気になるけど、今はそれどころじゃない。
時間が遅延すればいいのにという無意味な思考をしながら僕は後輩ちゃんと合流し、通学路を全速力で走って登校した。
言うまでもなく眠気とバトルしまくりの大変な一日になってしまった。
後から聞いたけど、後輩ちゃんは眠気に敗北してちょっと寝たらしい。ずるい。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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