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23.三題噺「空回る、数字、テレビ」

 私の隣には、後輩くんと同じクラスで隣の席の同クラちゃんが傘をさして歩いている。

 なぜこうなったのかと言うと……。

「あの……。先輩、一緒に帰りませんか?」

 帰ろうと下駄箱で靴を履き替えていたら突然誘われて、テンパってOKしちゃったからなんだよね……。

 さっきなんか「昨日のテレビ見た?」なんて曖昧な話題をふっちゃって「あ、私、テレビあんまり見なくって……」と、天気の話題くらい会話が広がらなかったから気まずい。

 正直に言うと、私、混乱してる。

「えっと……。あのさ?」

「ひゃい!?」

 私が同クラちゃんを見ると、急いで顔を背けられた。

 ……あれ? この反応って、もしかして話したいことがあるのかな?

 そう思うと、少し気持ちが楽になった。

 女の子同士でしかできない話ってあるよね。

 モジモジしてる同クラちゃんは同性の私から見てもかわいい。
 ハートマークが語尾につくくらい。

 なんというか小動物的な守りたくなる可愛らしさがあるよね。

 私、同クラちゃんとは仲良しになれたらいいなあ……ってずっと思ってたんだよね。

 そんなことを考えていると、同クラちゃんがおずおずとぷっくりした唇を静かに開いた。

「あ、あのっ!」

「なにかな?」

 こういう時は、先輩としてドシっと受け止めてあげないとね!

「私っ。先輩のこと好きなんです……!」

「えっ!?」

 そ、それって……。もしかして……。

「あっ……! もちろん変な意味じゃなくてですね!?」

 混乱する私。

 慌てる同クラちゃん。

 傘の柄をにぎにぎとして、落ち着くためなのか小声で数字を数えている。

「そのっ、憧れというか。ほら、私って根暗でコミュ障だから先輩の行動力とか、明るいところ尊敬していて……。それに、とっても可愛いですし……。だからっ、仲良くなりたいなってずっと思ってて……。だから今日、勇気を出して誘ったんです!」

「え、嬉しい」

 両思いだったことが嬉しくて、思わず本音が出ていた。

「ほ、ほんとですか……?」

 ガチ照れする私と、頬を染めながら喜びを噛み締めている同クラちゃん。

 その後は、傘を並べていろんな話をして、楽しい放課後になった。

 後輩くん談義には一際花を咲かせた。

 会話しようとして空回るなんてことにならなくてよかった。

 これからもっと仲良くなりたいなあ。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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