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166.三題噺「モデルチェンジ、ポチッとな、勝ち抜き」

 今日から文化祭。

 学校はハロウィンを先取りした飾り付けがされていて、朝から賑わっている。
 準備期間が半月とものすごく長い分、かなり豪華だ。

 そんな校内の隅っこで、僕は誰にも見つからないように潜んでいた。

 何故かというと……。

「こんなところに逃げたの? 後輩くん……じゃなかった。後輩ちゃん」

 全身着ぐるみを着た先輩が僕に追いついた。
 僕は先輩によって女装をさせられたのだ。

 先輩自作のメイド服はかなり際どい。
 スカートなんて太ももが半分くらい見えている。

「先輩のせいでどこにも行くことができないですよ……」

 今はフリーな時間だからいいけど、僕にも仕事があるのに……。

「こっちから先輩の気配〜……。って……。えっと、そちらの女性はどなたですか?」

 後輩ちゃんまでやってきてしまった。

 先輩は丁度いいとニマニマ唇を歪ませる。

「ええええっ!? 後輩ちゃんがふたりいるぅ〜!」

 棒読み台詞の先輩は大きな口を開けて驚き、わざとらしく手で隠した。

「先輩が女装させたんでしょう……」

 僕はげんなりと肩を落とす。
 この格好のせいで文化祭を楽しめやしない。

「先輩だったんだ……。可愛い……」

 後輩ちゃんがフォローをしてくれたけど、嬉しくない。

「この衣装は驚きの機能もあるんだよ〜!」

 先輩は僕の胸元のリボンを引っ張った。

「な、何をするんですか! どうなっちゃうんですか! セクハラですよ!」

 僕の声は未知への恐怖で震えている。

「ポチッとな!」

 明らかに効果音が違うというツッコミをする余裕なんてなかった。

 メイド服がハラハラと解けていく。

「なっ! なんで!」

 僕は慌てて自分の肌を隠そうとした。
 このままじゃ女の子の前で突然下着姿になる変態になってしまう。

 ……なんてことはなく、メイド服はセーラー服にモデルチェンジしていた。

 仕組みが気になるけれど、恥ずかしいことに変わりはなかった。

 二人が呼んだのかいつの間にか同クラさんもいる。

「後輩くん、その姿で最終日のミスコン出ようよ。勝ち抜き性のトーナメントだからもしかしたらグランプリ取れちゃうかもよ?」

「絶対出ないです!」

 僕は涙目で抗議をした。きっと顔は羞恥で真っ赤だ。

 それが嗜虐心のようなものを刺激してしまったのか、先輩も同クラさんも後輩ちゃんも、みんな合わせて僕を囲んで写真を撮りまくられた。

 黒歴史確定だ。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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