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187.三題噺「流行歌、裏切り者、無害」

 早朝の教室。有線イヤホンからは流行歌。

 元生徒会長の俺は一人で勉強をしようと早めに登校をしていた。

 問題集のページをまたひとつ捲り、ペンを走らせていたが、ふと止まった。

 頭によぎったのは好きな女性。

「はぁ……。どうしたものか……」

 俺は腕を組み、眉間に皺を寄せた。

 未だこの恋に進展はなく、年の差があるからか、人畜無害な子供としか見られていないような気がしてならない。

 悩んでいると、頬に温かいものが触れた。

「え?」

「やあ、おはよう」

 顔を上げると、そこには先生がいた。
 お茶のペットボトルが渡される。

「頑張ってる君に差し入れだ。あげるよ」

「あ、ありがとうございます」

 俺は素直に受け取り、一口飲んで喉を潤した。

「珍しく分からない問題があったようだね。どれどれ、私が教えてあげよう」

 先生は俺が解けない問題があったと誤解し、耳に髪の毛をかけて問題集を覗き込んだ。

 至近距離に先生の横顔。
 仕草のひとつひとつが色っぽくてドキドキする。

 こういううぶなところが子供っぽいと思われてしまうのだろうか。

「せ、先生、早い出勤っすね」

 動揺を気取られないうちに話題を提供すると、先生は憂鬱そうにため息をついた。

「友人の家に泊まってて、起こしてもらったんだ」

「よかったですね」

「何がいいものか、友人は彼氏ができたんだ。夜中まで惚気話を聞かされてうんざりだよ。あの裏切り者め」

 そう悪態をつく先生の顔は嬉しそう。
 なんだかんだ言っているが友達の幸せを喜んでいるようだ。

「やっぱり先生はいい女性だ」

 俺は改めてそう思った。

「とっ……突然どうした!?」

「優しいし、綺麗だし、普段はやる気がないだけで仕事ができるし、実は生徒の面倒見もいい。完璧じゃないか」

「や、やめてくれ……」

 先生は頬を赤く染め、手で俺を制した。

「どうしたんすか? そんなに顔赤くして」

「君のせいだろう?」

「え?」

 何もしてないし、何も言ってないはず……。

「き、君だって年下と思えないくらいかっこいいし、頑張り屋さんだし、素敵な男性だと、私は思ってるよ」

 なぜか分からないが、先生からベタ褒めされた。

「……っす」

 俺は、ありがとうございますと真面に言えないくらい、照れた。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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