22.三題噺「内職、石油王、電子辞書」
予習済みの範囲の授業を流し聞きしながら、私は退屈さにため息をこぼした。
窓の外は雨だ。
誰かが吊るしたてるてる坊主がそのままになっていて、びしょ濡れになっている。
インクが滲んで黒の涙を流してるみたいでちょっと可哀想。
隣の席を見ると生徒会長のマカロンくんが電子辞書を引いて調べ物をしてはノートに書き写していた。
「ねえねえ、マカロンくん。なんの勉強してるの?」
マカロンくんは授業中だけメガネをかけてるから賢さ度が上がる気がする。
「予習済みで暇だから英単語調べてる」
「マカロンくん頭いいのに調べる必要あるの? ほとんど覚えてるでしょ?」
「調べてるんじゃなくて記憶が正確か確かめてるって感じだな」
「私それ知ってるよ。学校の授業中に授業内容とは違う勉強をすることを内職って言うんだよ」
「妙なことを知ってるな」
「すごいでしょ?」
「すごいが、無駄知識の可能性もあるな」
「あはは、そうなんだよねぇ。受験には役立たない可能性大だよね」
教室を見渡してみると、ほとんどの人が授業とは違うことをしている。
寝てる人とか、スマホを触ってる人とか、イヤホンして音楽を聴いてる人が数人いた。
先生は気づいてるんだろうけど、特に注意はしないみたい。
「あーあ。石油王になって莫大な富を得て楽したいなあ」
「結局、石油王も王族だから治世とか政略結婚とかあって完全な自由とは言えないみたいだぞ」
「あぁ〜……。しがらみが多いのは嫌だなぁ。諦めよ」
「決断早いな」
「現実的に考えたら不可能だし」
「たしかにな」
「社会人になったら勉強しなくていいのかなあ」
「勉強は一生続くみたいだぞ。学校の授業とは違うけど学ぶことばかりだ、って兄さんが言ってた」
「生きるって、大変だなあ……」
そうだな、とマカロンくん。会話が終わると、また内職に戻った。
後輩くんと同じ大学に行って、ずっと一緒にいたいから勉強しよう。
疲れたらたくさん我が儘を言って甘えよう。
……よしっ。
呆れた顔をしながらも相手をしてくれる後輩くんのことを想像したら、なんだかやる気が湧いてきた。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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