45.三題噺「仲介業者、カタツムリ、睡眠時間」
なんでだろう。電話が鳴ってる。外が眩しい。
圧倒的に睡眠時間が足りない。眠すぎる。
僕は布団にカタツムリのようにくるまった。
それでもまだ電話は鳴り止まなかった。
誰だろう……。
「……もしもし」
「あ、こ、後輩くん! おはよう……」
「先輩……?」
なんで先輩から電話がかかってくるんだろう。
……だめだ。眠すぎて頭が回らない。まだ寝たい。
「僕、眠いんで寝ますね」
「え、ちょ……!」
「……先輩、大好き……」
おやすみなさい。
最後に僕の口が何か言った気がしたけどたぶん気のせいだろう。
気持ちいい微睡に包まれてふわふわしていると、また電話が鳴ったから耳に当てた。
「う、うーん……」
「起きてっ! 遅刻しちゃうよ!」
「……え?」
同クラさんの焦った声が聞こえた。
昨日は先輩に電話して、なかなか眠れなくて、それで……。
あれ?
ちこく……遅刻!?
はっ、と僕は急速に覚醒した。
時間を確認する。
「……やばっ!!」
一気に目がさめた。超ギリギリの時間だ。
「ありがとう!!」
同クラさんは間に合いそうな複数の最適ルートを調べて僕に丁寧にメリットとデメリットを説明してくれた。
しかも僕の体力まで計算されていた。
プレゼン力あったし会話の苦手意識さえ克服できれば、やり手の仲介業者とかになれるんじゃないだろうか。営業とか向いてるかもしれない。
大人しめの雰囲気だから意外な才能だ。
「な、なんとか間に合った……」
校門に着くと同クラさんと先輩がいた。
「寝癖ついたままだよ。だらしないなぁ」
「いや、ほんとにダッシュで来たから、後で適当に直すよ」
「いつも早めに登校して教室にいるのに、時間になっても来てないから電話してみたけど、役に立てたならよかった」
「ほんとに連絡先交換しててよかったよ。モーニングコールも助かった。先輩もかけてくれたのに二度寝しちゃってすみません」
「……」
先輩は両手で鞄を持ってずっと黙っている。
心なしか恥ずかしがっているように見えた。
「先輩……?」
「ふぇっ!?」
「大丈夫ですか?」
「うんっ! だいじょぶだいじょぶ」
先輩は手を振って否定して顔を逸らした。
どうかしたのかな?
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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