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83.三題噺「止める、名推理、ミニスカート」

 夏休みだけど、僕は制服を着て登校していた。

 補講を受ける人以外は登校していないけれど、いつも通り僕の隣には同クラさんが座っている。

「もはや、僕の隣が同クラさんの定位置だね」

 思いつきを口にすると、同クラさんは「えっ……!?」と驚いた。

「……それって、プロポーズ?」

「どうしてそうなるの?」

「あっ……。ご、ごめんっ。気にしないで」

 同クラさんは手をぶんぶん降って否定した。

「えへへ……。奥さん、かぁ……」

「何か言った?」

「ううん! なんでもない! そういえば、夏らしく少しだけミニスカート目指して丈短くしてみたんだけど、わかった……?」

「いや、いつもそんなに見てるわけじゃないから……」

 そうは言いつつも、僕の視線は自然と座っている同クラさんの足に向かう。

 少しだけむちっとした太ももが形を変えていて、柔らかさが視界からも伝わってくる。

 言われてみれば、確かに短いような……?

「ちょ、ちょっと。そんなに見ないでよ」

 恥ずかしそうに同クラさんは手でスカートの裾を抑えた。

「ご、ごめんっ。無意識だった」

 僕が慌てて視線を逸らすと、モジモジした同クラさんは突然ハッと気づき、「もしかして」と呟いた。

「短くし過ぎてパンツが常時見えてて、もはやギャグみたいとか!?」

 同クラさんは、興奮気味に「私ってば名推理!」と自分に驚いている。

 気づかれなくて安心した……。
 でも、もし本当にそうなら気づいた時に恥ずかしがった方がいいと思う。

「全然そんなことないから安心していいよ」

 ふぅ、と僕が安堵した時だった。

 同クラさんはガタッと立ち上がって、スカートの丈を調整し始めた。

「これなら大丈夫? でも、もうちょっと短くてもいけるのかな?」

 僕は強制的に同クラさんの綺麗な足を見せつけられることになる。

 目線を逸らしても「ねえ、どう思う?」「ちゃんと見てよ」と、お叱りを受けた。

 同クラさんだって女の子。
 可愛いに本気なのは伝わるけど、とても理不尽だ。

 あれ……? これって他のクラスメイトから見たら結構やばい光景なんじゃないか?

 杞憂であるうちに、僕は暴走機関車と化した同クラさんを止めることに成功した。

 あらぬ誤解を受けることがなかったのはよかったけれど、僕は悶々として補講に集中できず、気がつけば家で抜け殻のようになっていた。

 もはや補講の記憶はなかった。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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