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75.三題噺 張本人、磨りガラス、震える

 チャイムが鳴って、期末試験2日目が終了した。明日を乗り切れば夏休みだ。

 隣の席を見ると、同クラさんが机に突っ伏してどんよりした空気を纏っていて、明らかに落ち込んでいた。

 艶やかな黒髪が机に流れるように垂れていて、余計に陰鬱さを強調している。

「ど、どうしたの……?」

 声をかけるべきか悩んだけど、気になったから聞いてみた。

 同クラさんはもっさりした緩慢な動きで顔をあげた。目は、うるうるしている。

「もう、私、ダメすぎて震える……」

「どういうこと?」

「私の未来は磨りガラスみたいに曇って先行き不透明ってことだよぉ……」

 詳しく話を聞くと、同クラさんは期末試験ができなかったみたいだ。

「珍しいね。何かあったの?」

「たくさんの人から好かれてる人にアタックする方法とか、上手にハーレムを形成する方法を考えてたらテスト勉強できなくて……。今回は10位くらいに下がってるかも……」

 落ち込むレベルに思えなかったけど、同クラさんにとっては将来を悲観するくらいにはショックだったみたいだ。

「私、自主的に夏休みの補講受けるよ……」

「そ、そっか……」

 僕にはかけられる言葉がなかった。

「でも、同クラさんって好きな人いたんだね。ちょっと意外かも。結構モテる人なんだね」

「……」

 僕の発言に、同クラさんは「むぅっ」とほっぺたを膨らませて不満げな目で睨んできた。

「……何もまずいこと言ってないよね?」

「もういい……」

 何だかよくわからないけど、同クラさんは納得したみたいだ。

「僕も補講付き合おっか? 一人だと寂しいでしょ」

「……そういう優しいところが女の子たらしの原因なんだよ」

「え、何か言った?」

「なんでもありませ〜ん!」

 同クラさんはプイッと顔をそらした。

「張本人が好意に気づかない鈍感難聴系無自覚女たらしだから、もっとアピールしないと……。あわよくばハーレム形成して、みんなも幸せ、私にとっても眼福な空間にしたい……。うん、がんばろ」

 同クラさんは張り切っている様子だ。

「頑張ってね」

「うん。私、この夏、頑張るよ」

 やる気に満ち溢れた同クラさんの表情は、勉強以外のことも含まれているように見えた。

 さっそく放課後に先輩と同クラちゃんと3人で集まって話し合いをしてた場面を見たけど、何の話をしたんだろう?

 僕は蚊帳の外にされて少しセンチな気持ちになった。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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