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46.三題噺「ゴッドハンド、歌唱力、いちごオレ」

「後輩くん! あそぼあそぼあそぼ!」

「あ……。ちょっ!」

 放課後、僕が自販機でいちごオレを買っていると、手を引かれて先輩の同好会で無断使用している教室に強制連行された。

 先輩の奇行にはもう慣れっこだ。
 僕は抵抗を諦めた。

「何して遊ぶんですか?」

「じゃんけん!」

 先輩は豊かな胸を張って言った。

「はいはい。わかりましたから」

 なんか今日は先輩の様子がおかしい。
 テンションが高すぎる気がするんだよな。

「私のゴッドハンドにひれ伏すがいい後輩くんよ」

 先輩はふっふっふっと不敵に笑って構えた。

 抜群の歌唱力でじゃんけんの歌を披露する先輩。

 歌い終わりと同時にお互い手を出し、勝敗は決した。

 僕はグー、先輩はチョキだった。

「な、なんだってぇ……!?」

 先輩はチョキの姿勢のまま固まってわなわなと震えている。

 僕も驚きだ。一回目の一発目から勝っちゃったよ。

「も、もういいもん。後輩くんなんて知らないもん!」

「……? なら、僕、生徒会の用事あるので行きますね」

「あ、うん……。ありがとう。またね」

 先輩が手を振ってくれたから手を振りかえした。

 ~~~

 ばいばい。

 私は後輩くんの背中を見送った。

 まだ緊張で体が震えている。
 膝なんてもうガクガクで立っているのがやっとだ。

「はふぅ……」

 私は倒れるように椅子に全体重を預けた。

 気を抜いた瞬間。
 モーニングコールをした時のことがフラッシュバックした。

 ──先輩、大好き。

「うぅぅぅぅぅぅ……」

 何度思い出しても照れる。

 寝ぼけてたから本音じゃないだろうけど、それでも好きな人から大好きと言われたのは嬉しい。嬉しすぎる。

 とはいえ、後輩くんを見ると平常心でいられないのは困る。

 私は火照った頬を挟んだ。

「私、変じゃなかったよね? いつも通りだったよね?」

 私を振り回す後輩くんは魔性の男の子だ。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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