80.三題噺「ベーコントースト、排気ガス、知っている」
朝、ベーコントーストを食べ終えた僕に電話がかかってきた。
朝早いのに誰だろう、と画面を見ると名前が目に入った。
「同クラさん……?」
電話に出て、真っ先に同クラさんから追求されるとは、この時の僕は知らなかった……。
「私、知っているんだよ」
真っ先に僕を責める言葉が聞こえた。
「……え。なんのこと?」
当然、僕に心当たりはない。
「私、知っているんだから……」
何かしちゃったっけ。やばい。同クラさんの声がマジだ。
何もいけないことをしてないはずだし、そもそも同クラさんに対して後ろめたいことを思う関係でもない。
同じクラスの仲良しの女の子で、ちょっと最近意識し始めた関係というだけなのに……。
僕は心当たりがなさすぎて焦った。
排気ガスのごとく空気を汚染するほどの呪詛を澱みなく吐く同クラさんは、やけに芝居がかっている。
「君はいろんな女の子と仲良くしてるんだから、この際、責任を取ってもっと私を弄んでよ。ハーレム形成してみんな幸せにしてよ」
何のことを言っているのかさっぱりだ。
申し訳なく思っていると、同クラさんはクスッと笑った。
「うふふっ。冗談♪ 君の声が聞けたのが嬉しくてふざけちゃった」
「なんか、まるで徹夜明けみたいだね」
僕の発言と同時「ふわぁ……」と欠伸が聞こえた。
「ふえぇ……? 何か言った?」
同クラさんは一転してふわふわになった。
「テンションが変だねって言ったよ」
「え……。私、何か言ったっけ? あれ? そもそもなんで君と電話してるの?」
「む、無意識だったんだ……」
同クラさんは今更意識し出したのか、いつも通り気弱な態度になり、状況を認識して焦り出した。
「ご、ごめんっ! 病みがちな女の子が出てくる本を読んでたら朝になってて……。なんか気分が高揚して変になってたみたい……」
「う、ううん。いいよ。これから寝るの?」
ハーレムとか、弄ぶとか、全く僕に当てはまらないワードが聞こえたけど、気にしないことにした。
「そうだね……。流石に寝ないとしんどい」
「そっか。おやすみ」
「イ……イケボ助かるっ!」
同クラさんはそれだけを言って即切りした。
僕は朝からカロリーが高過ぎたせいか胃もたれし、その後、妹の友達で同クラさんの弟のナル君が来てさらに濃い空間に巻き込まれるという一日を過ごして疲弊した。
「夏休み、早く終わらないかな……」
僕は少しだけ学校が恋しくなった。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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