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117.三題噺「ラスボス、シャンパンファイト、フランケンシュタイン」

 昼休み、僕が購買へお昼ご飯を買いに行っていると、先輩と出会った。

「旅に出た後輩くんとエンカウントした」

 BGMを口ずさみながら、先輩は抑揚のない機械音声の声真似をした。

 今日はRPGごっこをするみたいだ。

「どんな設定なんですか?」

「後輩くんは魔王軍に所属するけど人類と仲良くしたいフランケンシュタインで、人の心を学ぶために旅に出たの。今は檜の棒を装備しているよ」

 かなり変な設定だった。

「それで、さっそくバトル開始というわけですか」

 うんうん、と頷いて先輩はファイティングポーズ。

「先輩の設定は?」

「ん? 裏切り者を粛清しにきたラスボスの魔王」

 全く悪びれもせず、先輩は言った。

「……理不尽」

 敗北は濃厚、というか勝率ゼロだ。

「ちなみに、負けた方がお昼ご飯奢りね」

「完全にカツアゲですね」

 そんなやりとりをして、僕は先輩と自販機で炭酸飲料を買った。

「シャンパンファイトだから勝てる見込みはあるよ!」

「勝利の喜びを表現する方法でどう決着をつけるか分からないですけど、お昼ご飯がかかってるので負けるわけにはいかないです!」

 流石に飲み物をかけあうわけにもいかず、一気飲みをすることになった。

 缶のプルタブを開け、腰に手を当てて勝負スタート。

 先輩と僕は一口目から、呻き声をあげた。

「……先輩、どうして炭酸苦手なのにこの勝負にしたんですか」

「勢いで、つい……。後輩くんも炭酸苦手だから勝負降参してもよかったのに……」

 もう飲めないよぉ、と先輩は涙目。

「しゅわしゅわして口の中痛い……」

 そんなことを言いつつも、先輩は躊躇いがちに口をつけながら飲み進めていった。

 僕はそれ以上飲めず、先輩に敗北した。

 はっはっはと先輩は高笑い。
 でも全部飲んだから流石に苦しそうだ。

「勝てるわけにゃ、い……じゃないですか」

「……後輩くん、噛んだ?」

「……そもそもすぐ魔王と会うとか世紀末すぎませんか?」

「ねぇねぇ、噛んだよね?」

 誤魔化してもダメだった。

 今、僕の顔は林檎のように真っ赤だろう。
 穴があったら入りたい。

 その後、宣言通りお昼ご飯を奢ることになり、仲良く一緒にお昼を食べた。

 泣きっ面に蜂だけど、先輩に奢るだけでこの時間を手にできるのなら、まぁいいか。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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