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104.三題噺「まつぼっくり、ブランド品、土下座」

 生徒会長をしている俺は、先生の家にお呼ばれしていた。

 前回も来たことはあるが、いまだに緊張して体はガチガチだ。

 部屋番号を押してオートロックを解除して貰おうとしたら、随分声が聞こえるのが遅い。

「先生?」

「……あぁ、すまん……。呼んだ立場なのに寝坊してしまった」

 先生はどうやら寝起きのようだ。

「いくらでも待ちますよ」

「いや、外で待たせるのも悪いから入ってくれ。鍵は開けておくから」

 言われるがまま、俺は先生の部屋に上がった。
 そうだ。手洗いうがいはしないと。

 俺は洗面所へとつながる扉を開けた。

「……え?」

 先生が目を見開いて俺を見ている。

 パジャマのボタンが全開で、可愛いおへそが丸見えになっていた。

「す、すみません!」

 数秒硬直していた俺は、急いで床に膝をつき、土下座する。

「わ、わかった。わかったから……。リビングで待っていてくれ」

 あぁ……。先生に嫌われてしまった。
 真面目に生きてきた俺の人生もこれでおしまいになってしまうんだ。

「まあ、座りたまえ」

「は、はい」

 お互いよそよそしいままソファに腰掛けた。

「嫁入り予定すらないのに肌を見られてしまった。もう、濡れたまつぼっくりのように傘を閉じて閉じこもってしまうしかない……」

「本当に申し訳ないです。でも、そんなこと言わないでください」

「なら、君が私を嫁に貰ってくれるのか?」

「え!? いや……それは、どうでしょう」

「やっぱり私はずっと独り身なんだぁ……」

 俺が先生を貰うと言いたい。
 でも、それを伝えることはできなかった。

「旅行の時も今日も、見苦しいものを見せてしまって……。旅行の時は恥ずかしくてビンタまでしてしまって……。こんな私はやっぱり嫌か? どうしたら私のことを許してくれる? ブランド品でもあげればいいか?」

「高校生に貢ごうとしないでください。俺は悪い感情なんて抱いてないですよ」

「……ほ、ほんとに?」

「ええ」

「嫌いにならない?」

「絶対になりませんよ」

「じゃあ、落ち込んでる私を一杯励まして」

「え?」

「おねがい……」

 大人の魅力を持つ幼児退行した先生という可愛さの化け物に屈し、俺はヤケクソになってたくさん先生を甘やかした。

 帰宅後に謝罪の連絡が大量に来たのは言うまでもない。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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