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コミュニケーションのコツ(続)―自己啓発・組織運営に効く文化人類学入門#9

第4章 コミュニケーションは受け手本位!?(続)

 コミュニケーションが効果的に行われるための原則の続きです。

メッセージが固定化しないこと

 第5に、メッセージが固定化(stereotype)するとき、コミュニケーションはインパクトを失います。

 伝え手は、意味を変えないように注意しつつ、形態を柔軟に変える勇気が必要です。同じだとインパクトが失われてしまうからです。

 たとえば学校であれば、

 「創立以来変わらない建学の精神を引き継いでいる」

という表現を使います。

 引き継ぐべきは建学の精神・意味であり、建学の形態ではありません。

 教育の形態は、時代のニーズに合わせて柔軟に変えて行くほうがギクシャクしません。

 問題は、時代に合わせた新しい形態が、必要な意味を伝えることができているかです。これは検討の必要があります。

 形態を変えないという固定化は、

 受け手から柔軟性がない、あるいは頑固

ととられます。

 あまり変えないでやり続けると、メッセージは歪められます。

情報は伝えるのではなく自分でみつけてもらう

 第6に、受け手が自分で新しい情報を発見できるように促されたとき、コミュニケーションは成立しやすくなります。

 伝え手は、意味をわかってもらおうとシャカリキになるのではなく、メッセージの内容と価値を、受け手が自分で発見できるように促すほうがうまく行きます。

 人間は教えられることが嫌いです。しかし、自分で気づくように促されると、メッセージを受け取ろうという気持ちになります。

 指導は、受け手が知らない情報を受け手に渡すことでも、教えることでもありません。

 ヒント 受け取らせたい意識は焦り。受け取っていただきにくくなる。

コミュニケーションは双方向のプロセス

 第7に、コミュニケーションは双方向のプロセスです。

 伝えることと受け取ることが双方向で行われるとき、コミュニケーションは成立します。

 ですから、伝え手は良い聞き手でなければなりません。

 ヒント 伝える作業は、同時に受け取る側の声を聴くこと。

受け手に対して良いイメージを持つ

 第8に、コミュニケーションは、伝え手が受け手に対してどのようなイメージを持つかに影響されます。

 伝え手が受け手に対して良い印象を持てば持つほど、コミュニケーションはうまく行きます。

 反対に、敵対的な印象を持てば、コミュニケーションは成り立ちません。

 上手に伝えたかったら、受け手に対して良い印象を持てるかが鍵になります。

 カスタマーに対して、

 「みなさんは本当にすばらしい方々です」

という良い印象を持つよう心がけるほうが賢明です。

 ヒント 伝えるときには、相手を素晴らしいと思って伝える。そのほうが伝わる。

肯定的であること、褒めること

 8つの原則を提示しました。

 コミュニケーションの鍵は、人に対して肯定的であることです。

 これも簡単ではありません。人間は自分の人生を背負って生きているからです。

 人を見ると、人の足りないところばかり目につき、この人はこの点で成長しなければ、みたいに考えます。

 しかし、そう思っていたところでその方が成長するわけではありません。

 逆に、相手から見れば自分を肯定してくれない人を信頼することはないでしょう。

 当然、コミュニケーションは成り立たちません。

 わたしたちはもっと肯定的でよいのではないでしょうか。

 少なくとも肯定的であるように、よいところがあったら

 「すばらしいですね」

と素直に言える習慣を身につけたいものです。

 コミュニケーションはそのほうがうまく行きます。

 続く ―次回は、人間の良心やモラルとコミュニケーションの関係について書きます。


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