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#イベントレポート01 |「隠岐をつくった石のふしぎ」

#イベントレポート
ジオパークとは、貴重な地質やその上に成り立つ地域の自然・文化を守りつつも、多くの人に知ってもらったり訪れてもらったりすることで活用されるエリア。隠岐ユネスコ世界ジオパークでは活用の一環として、ジオパークを土台とした学びや交流のため、イベントを開催しています。
今回の舞台は、隠岐ユネスコ世界ジオパーク泊まれる拠点として、2021年夏にOPENしたEntô。ここはホテルでありながら、展示室ジオルーム "ディスカバー"やジオラウンジを併設し、交流施設としての役割も果たしています。

思い思いの岩石を手に取り、ルーペで観察する子どもたち。

12月10日(土)に開催した、イベント「隠岐をつくった石のふしぎ」。
15人の子どもたちとその親御さんがEntôジオラウンジに集まり、賑やかな時間となりました。

イベントテーマ:地質多様性

突然ですが、みなさんは『地質多様性』という言葉をご存知でしょうか?
摩天崖や赤壁など荒々しい断崖が観光スポットとしても人気が高い隠岐ですが、これらを成り立たせている地質にも多様性があります。

知夫里島の赤壁。
火山の噴出物が酸化したことによる赤色の地層と、それを縦に貫く白色の岩脈が印象的。

地質多様性とは、下記のように定義されている言葉です。

地質学的(岩石・鉱物・化石)、地形学的(地形・プロセス)、そして土壌学的特徴の自然な多様性。これらの集まりや関係、特性、解釈、システムを含む。

Gray(2004) Geodiversity: Valuing and Conserving Abiotic Natureを和訳。

つまり、生き物が数千万種存在していると言われるのと同様に、岩石や鉱物などにもたくさんの種類があるということです。
この地質多様性は、生物多様性や人間の暮らしを下支えてしていることから、International Geodiversity Dayという日が設定されるなど、近年その保護・保全の重要性が認識されはじめています。

今回は、貴重な地質資源の上に暮らしている隠岐の方に、地質多様性を知ってもらいたい!という思いから、隠岐の岩石を用いたイベントを開催する運びとなりました。

企画イベント「隠岐をつくった石のふしぎ」

対象はこれからの隠岐を担っていく子どもたち。隠岐の岩石に興味を持ってもらうことを目的として、「カルデラ形成実験」と「岩石の中の宝石探し」を行いました。

まず、Entôジオラウンジからの景色を見ながら、Entôが位置する海士町を含む島前地域がカルデラ地形であることを確認します。

さすが島の子どもたち、どれがどの島か完璧に答えてくれました。
隠岐が火山でできた島であることや、「カルデラ」という言葉も知っているんです。

ちなみに、カルデラ地形とは「火山活動によってできたくぼ地」であり、日本国内では熊本県阿蘇山や北海道屈斜路湖をはじめとして、様々な地域に存在します。
島前地域のカルデラは、そのくぼ地に海水が入り込み3島の内海となっていること、そしてそこに人が住んでいることが非常に珍しいとされています。

赤く色付けした部分がくぼ地によりできた内海。
中央の焼火山はカルデラの形成後に再度噴火が起こり、形成された。
(※フリーの白地図を編集)

カルデラ形成実験

ここで「島前カルデラがどうやってできたのか?」を、米粉と風船で再現する実験を行いました。米粉でつくった山を火山、風船をマグマに見立てます。
実験の手順は、以下の通りです。

① 米粉でつくった山の中に、風船を隠す。
② 噴火によって中のマグマが出る様子を、風船に針を刺して空気を抜くことで、
  再現する(風船にセロテープを貼ることでゆっくり空気が抜ける)。
③ 風船がだんだんとしぼんでいくと、山の中心がくぼんでいく。

子どもたちは、最初は風船が割れることを怖がっていたものの、だんだん米粉の山がくぼみ始めると、興味深く見つめてくれました。
このくぼ地が目の前の海になっていると伝えると、「じゃあ底があるの?」という質問があがるなど、しっかりカルデラのでき方を理解してくれたようでした。

カルデラ形成実験の様子。

岩石の中にある宝石探し

次に、隠岐をつくっている岩石に話を移します。今回は、島前カルデラの岩石(玄武岩)など5種類の岩石を用意しました。この中に宝石が隠れている岩石があるよ、探してみよう!と伝えると、子どもたちは真剣にルーペ越しに岩石を見つめて、「これは?これは?」と尋ねてくれました。

観察したい岩石を選ぶ子どもの様子。「隠岐片麻岩」が人気。
見つけた宝石を見せてくれている子どもの様子。

また、子どもたちが見つけた宝石の大きなサイズの標本をお披露目すると、触っていい?とキラキラした目で聞いてくれるなど、とても楽しんでくれた様子でした。

水晶(石英)の標本を目の前にして、
触ってみたり、占いができないか試してみたり。

最後に、それぞれがお気に入りの岩石を持って、集合写真を撮って、企画イベント「隠岐をつくった石のふしぎ」は終了となりました。

それぞれお気に入りの岩石を持って、集合写真を。

企画展「隠岐の風景と岩石のつながり」

ここからは、イベントに合わせて12月10日(土)から18(日)にかけて、Entôジオラウンジにて開催した企画展「隠岐の風景と岩石のつながり」を紹介します。
この展示では対象を子どもから大人に変え、主に島民に、「岩石が隠岐のくらしを形づくり、支えている」という視点を持ってもらうことを目的としました。

展示の案内文。
展示の全体像。

隠岐のくらしを切り取った『風景』と、それを作ったり支えたりしている『岩石』を組み合わせて展示することで、普段のくらしの中ではあまり感じないであろう2つのつながりを直感的に伝えることを試みました。

例えば、なぜ離島である海士町ではお米が作られているのでしょうか?
これは、豊富な湧水に加え、海士町には「平らな土地」があるからです。そしてこの平らな土地は、約280万年前に海士町の明屋海岸付近で起こった噴火で流れ出た溶岩などによって作られました。

海士町の田んぼ。
山々の中の平らな土地に作られていることがよくわかる一枚。
明屋海岸で採取した玄武岩質の溶岩。
(※国立公園範囲内のため、環境省に許可を得て採取しています。)

他にも、石垣とグリーンタフ(緑色凝灰岩)や、焼火神社と火砕岩などの組み合わせを取り上げ、6つの写真と岩石が並ぶ展示となりました。

展示を見てくださった方からは、「ジオパークと島の生活や一次産業との関係性に新しい視点を与えて頂きました。」などといったお声をいただき、短い期間ではありましたが、意義のある展示になったと感じています。

さいごに

イベントと企画展を通して、隠岐の地質や岩石に興味を持っていただくことはもちろんですが、その先に少しでもそれらを「守る」ことを思う時間が生まれていたら嬉しいと思います。

また、NPO法人隠岐しぜんむらさんや海士町教育委員会さんをはじめ、多くの方のご協力と、参加してくださった方のおかげで、このようなイベントと企画展を開催することができました。改めてこの場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました!


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