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あなたへ

下を向いているであろうあなたへ
私はあの日、歩きながら、自転車に乗りながら
朝露に濡れて光る
お花の姿を携帯のカメラで切り取り続けました。

あなたがお花に興味がない事位
その位は覚えてる。

でも、初めて私の家に泊まりに来た日の朝
駐車場へ一緒に歩きながら
ふと見たバラに向かって
キレイやな〜って
目尻が下がったの、私は忘れられないの。

一回り年上のあなた
歯磨きした後に温かいスープを飲んだ時
あの時みたいに目尻が下がってた。

その後スーツに身を包んだら
何時もの企業戦士みたいな武装派のあなただったけど
スープを腰を軽く曲げて飲む姿はおじいちゃんみたいで
ちょっと可愛かったわ。

あなたの未来を見れたみたいで嬉しかった。
私はあなたの未来を実際には見る事が叶わない。
だから余計に嬉しかった。

私は曖昧なこの関係に
もう蓋をする事に決めたから。
この一瞬一瞬が最後だと
私の眼がシャッターを大事に切って居るのがよく分かる。

玄関先で後ろ姿のあなたの両肩
私の両手のひらでしっかり力を込めて
ポンっと叩いて
大丈夫ょ、大丈夫
気を付けて行ってらっしゃい!
そう、笑顔で最後の言葉。

おぅっ!
と、軽く振り向いたあなたの頬が柔らかかった。

あぁ、もうこの人は大丈夫だ、心配ない。
心の底からそう思えたわ。

だから、私
あの日の写真
1枚もあなたへ送らなかった。
私のお気に入りのアルバムに1度は入れて
満月の夜
全部を消した。

あなたも私も
満ちた場所に居るだろうから。

愛したあなたが
同じ地球の何処かで健やかな事を祈ってます。

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