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「不便な旅」のはじまり

入社に合わせて借りた部屋の、引き払い準備を進めてます。
初任給で買ったドラム式洗濯機は半年足らずで手放し、24歳にして念願かなって始めたベッド就寝生活も即終了。
ジモティで、孫のために別荘を作ってるおじいちゃんに譲りました。
なんか良いことした気分なのでまぁ良し。


高校の寮を出て一人暮らしを始めた時には、冷蔵庫とレンジ、洗濯機しか持ってなかったんですが、いつのまにかずいぶんと物の多い部屋になってました。
思えば、僕は昔から持ち物が多い。

町を歩いてると、異常にデカいリュックを背負ってる人っていますよね。歩道のど真ん中でリュックの中身をゴソゴソ探ってたりするような人。
あと、各クラスに1人くらいいた、どんな工具でも持ってる子とか。
あれ、僕です。

思春期に肥大化しすぎた自意識のせいかおかげか、周りの目を異常に意識するようになりましたが、それがなければ今もパンパンのリュックをブラブラさせて街を闊歩していたことでしょう。
(パンパンのリュック背負ってる人を露出狂みたいに扱ってしまってごめんなさい。)

あれがあった方が快適かもしれない。
あれがないと不便な思いをするかもしれない。
色々と心配してしまうのです。
そして、そんな思考の積み重ねの結果が、人目に触れない自分の部屋に溜まりました。

よく考えてみると、ないと生きていけないものなんてそう多くないはずです。
究極的には、水と食料と雨風しのげる場所さえあれば、まぁまぁ快適に生きられるはず。
狩猟採取の時代、ヒトは身一つでその日の食料を求めて彷徨っていたわけですが、過剰なまでに快適を追い求める自分は、そうした野生から随分とかけ離れてしまっている。
上下ポリエステルの服着てるくせに、今頃なに野生追い求めちゃってんだって感じですが、便利すぎるのもどうかと最近になって思うのです。
理路整然と並んだ快適の中に生きるよりも、ところどころ穴ぼこのあいた不便の中を生きる方が、いくらか楽しいこともあるんじゃなかろうかと。


モノやサービスが溢れるようになって、お金さえ出せば、簡単に便利・快適を得られるようになりました。
洗濯物放り込んでスイッチ押せば翌朝には着れる状態になってるし、大概の食べ物は玄関先まで持ってきてもらえるし。
しかしそのことは同時に、めんどくささに隠れた面白さから、僕たちを遠ざけ続けているのではないでしょうか。
良い例えが思いつかなかったので、ドラム式洗濯機とフードデリバリーという、なんだか手放した先の面白さが全く見えない例えになってしまいましたが、なんかそういうことってあると思うんです。

所さんが昔テレビで言ってました。
「腹いっぱいになることは”食”でしかなくて、いろんなめんどくさい段取りがあっての食べる『こと』が”食事”」
大事なところで人の言葉借りてるのがダサくて仕方ありませんが、こういうことが言いたかった。
色々と便利になって、めんどくさい過程を取っ払った結果だけを享受するのが簡単になりましたが、本来経なければいけなかった過程をすっ飛ばして得た結果は、本来のものとは必ず違っているはずで。


サラリーマンだった時はなるべく無駄な時間を減らして快適に暮らしたかったし、それは仕事に追われる日々の中では至極真っ当なことだと思います。
一所懸命働けば働くほど、余裕がなくなるのは当然のことです。
でも、仕事辞めて時間が有り余ってる今まで、無駄のない詰まった生活をする必要ないのでは。
仕事中、公園でタバコ吸ってぼーっとしてるおじいちゃんの姿を見て何度救われたことか。
無職までせかせかしだしたら世界のなにかしらのバランスが崩れる気がしてなりません。

仕事を辞めて、いかに合理化された余白のない日々を追い求めていたかが見えるようになったからこそ、とことん不便な生活をしてみたい。
そう思うようになりました。

では、手っ取り早く不便の中に身を投じるにはどうすればいいのか。
「自分の家を持たないこと」ではないかと思いました。
寝る、食べる、風呂に入るなど、生きていくために最低限必要なことって大概家でしますし、出不精の自分は、本読んだり映画見たり「生きる+a」の楽しいことまで家で済ませてしまいます。


久しぶりに昔のプレイリストを掘り起こして聴いていたら、銀杏boyzのぽあだむという曲が流れてきました。
「僕の部屋は僕を守るけど、僕をひとりぼっちにもする」
わかりやすく自分の殻に引きこもってきた自分にとっては、耳が痛い言葉です。
24歳にもなってまだ銀杏boyzに影響を受ける僕がコドモすぎるのか、銀杏boyzがすげぇのか。


部屋の立ち退き期限が迫ってます。
次の部屋は借りてません。
そんなこんなで、ザックひとつの「不便な旅」に出ることにしました。。。

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