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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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虚無と世界の行方を辿って|ゼルダの伝説|知恵のかりもの|ネタバレ|考察


まずは注意事項!必ず目を通してください!!

  • これはまだ公式からのアナウンスや確定情報が提供されていないのをいいことに筆者が勝手に時系列を考えてみようという遊びです

  •  知恵のかりものや歴代ゼルダ作品のネタバレを含みます

  • 個別のタイトルの詳細、時系列、ハイラル史等に関する詳しい解説はここでは行わないのでゼルダポータルやハイラル百科での確認をお願いします

  • これは筆者の解釈であり公式の見解ではなく、今後公式によって否定され得るものです

  • またこれはあなたが考察したり想像した時系列や世界への解釈を否定するものではありません

  • 各作品の略し方は公式の略称ではなく、筆者独特のものなのであまり気にしないでください

  • 文章や画像に誤りがあった場合報告していただけると助かります


知恵のかりもの(以下知恵かり)はゼルダ姫を主人公とした外伝的な作品でもあるため、ゼルダ無双やケイデンス・オブ・ハイラル:クリプト・オブ・ネクロダンサー feat.ゼルダの伝説のように時系列に組み込まれない可能性も高いとは思ったのですが、一方でプロデュサーの青沼氏が考えた台本にこれまでの要素を足す形でシナリオが作られたとも語られており、これまでのハイラル史と全く無関係でもないと筆者は考えています。



特にシナリオ中盤において、今までゲーム中の言伝や関連書籍の中でのみ登場していた三大神と直接言葉を交わしたことには大いに驚き、歴代シリーズとの繋がりを感じられたのは個人的にとても嬉しい体験で、まさに主人公がゼルダだったからこそ出来たシナリオだと思いました。

そこで今回は知恵かりにて明言されているテキストや描写を元に「もし知恵かりがハイラル史に組み込まれるならどの地点になるか」を考える遊びに筆者も参加します。筆者が出した結論は既にゼルダのファンコミュニティで提唱されているものと変わらないかとも思いますが、自分の考察した道筋を辿るための備忘録として残したいと思います。




◆情報を整理する


「考察」という遊びを行う上で、まずは明確に言及されている台詞や実際の描写で特に時系列に関わりがありそうなものを整理しようと思います。


▽明言されている情報

  • ガノンは作中で「青い魔物」と呼称されており、ニセモノであると明言されている

  • トライフォースの名称は直接登場せず、作中で一貫して「大いなる力」と呼称されており、王家にその存在自体は伝わっている

  • オルディン火山、フィローネ湿原、霊峰ラネールは三大神ゆかりの地と王家に伝わっている

  • 三大神から証を授かった (三大神に認められた) 者のみがいにしえの森のデクの木の元へ行くことが許され、大いなる力への道が開かれる

  • 「姫巫女と勇者共に手をたずさえ~」という伝承 (※1) が王家に存在している

  • ハイラルが創世される以前の世界は「無」の世界しかなく、ヌゥルは天地が創造される前から無の世界に存在していた


※1 全文「大いなる力を欲す 悪しき者現れし時知恵深き姫巫女と 勇敢なる勇者も また現る 姫巫女と勇者 共に手をたずさえ悪しき者の歩みを 止めん…」


▽描写の有無から推察される情報

  • 青い魔物がガノンと判明した後も王族等から特に詳しい言及はされない

  • トライフォースは完全体 (3つ全て揃った状態)でいにしえの遺跡に安置されていた

  • 地形は概ね神々のトライフォース(以下神トラ)や神々のトライフォース2(以下神トラ2)を踏襲している

  • マスターソードは登場しない


まずは考察が飛躍しすぎないよう個人的に注意したいポイントの整理をしましょう。


  • トライフォースの行方について

筆者はトライフォースの行方や状態は時系列を考える上でかなり有力な情報だと考えています。 もちろんトライフォースの状態だけで時系列を特定することはできませんが、知恵かりではトライフォースが完全体として揃っていた以上、トライフォースが分裂している時期には当てはめにくいと思われるため、各シリーズにおけるトライフォースの状態をよく確認する必要があります。




  • マスターソードの有無について

マスターソードはハイラル史上においてスカイウォードソード(以下スカウォ)で誕生した後に時のオカリナ(以下時オカ)で再登場したことになっていますが、ハイラル史上で時オカの前の時代に当たるふしぎのぼうし(以下ぼうし)や4つの剣(以下4剣)には登場していないので、世界観上存在はしていても作品によって登場しない場合もあったことは心に留めておきたいです。個人的にはマスターソードの有無は時系列を特定する決定的な証拠というよりも、なんらかの説を補強したり反証する材料になり得るものという具合に考えています。


  • 種族や魔物の登場について

種族や魔物は時系列の整合性より遊びを優先させるために登場させたり登場させなかったりする場合も多いと筆者は考えているので、ガノンなどの特定の存在以外は強い考察材料にはなりにくいと思うのですが、知恵かりにおける個人的に前後の整合性を考える補強になりそうな要素を少し挙げてみるなら、川ゾーラと海ゾーラが共存していることと、コンデの種族は明言されていない(※2)ことには注意して考察を進めます。


※2 コンデはトワイライトプリンセス(以下トワプリ)のスノーピークの獣人に似ているが、家族を含め全員ツノが生えており、これはトワプリの獣人にはなくコンデー家のみの特徴で、ツノの形状そのものは夢幻の砂時計(以下夢砂)や大地の汽笛(以下汽笛)に登場したユキワロシ族に近い。


◆時系列分岐以前の時代を考察する


まずは スカウォ→初代ハイラル王国建国(※3)→ ぼうし→ 4剣→時オカの時系列の分岐が発生する前の時代、主にぼうしや4剣前後に知恵かりを当てはめることができるのか考察します。


※3 ハイラル史における初代ハイラル王国建国について考える場合、ティアーズオブザキングダム(以下TotK)において描写された建国がぼうし以前にハイラル史に刻まれているものと同一なのか、もしくは後の時代に一度王国が滅びた後に再建されたのかは未だ断定されていないことに注意が必要です。今回の考察では知恵かりの時系列を考える上で、スカウォの次にTotKにおいて描写された初代王国が建国された歴史があった方が補強される説もあるという程度に筆者は考えています。


上記で整理した事実や描写からこの時期に知恵かりを当てはめた場合について推察すると──


  • この時代には「青い魔物の姿のガノン」が登場したことは観測されていないので「青い魔物」を「ガノン」だと認識出来なかったこと自体には矛盾がない

  • この時代のマスターソードはスカウォの後に時の神殿に置かれたため、仮に知恵かりがこの時代に当てはまるとすると、時の神殿は知恵かりには登場していないので、マスターソードが登場しなくても描写としては特に問題がない

  • ハイラル史における初代王国がTotKで描写された初代王国であった場合、TotKにおいて起こった封印戦争時点では勇者不在であるものの、初代国王ラウルは明確に後の時代の勇者に全てを託すために封印に臨んだので「姫巫女と勇者ともに手をたずさえ~」という伝承がTotK初代王国の時代から伝承されたとも想像することができる


以上のように考えると、この時代に知恵かりを当てはめても大きな矛盾は生じないように思えます。しかし以下の点について考察すると違和感も生じます。


  • ハイラル史上ではスカウォの後にトライフォースは聖地に置かれたが、聖地は初代王国が建国される前に光の神殿(また光の神殿はマスターソードを鍵として時の神殿と繋がっているため、実質的なトライフォースへの最初の入り口は時の神殿である)に納められたことになっているため、いにしえの森の奥地にあるいにしえの遺跡にトライフォースの完全体が存在するのは矛盾していないか?

  • 青い魔物のガノンは神トラまたは4つの剣+(以下4剣+)以後の姿に酷似しているため、それ以前の時代 (特に時オカを経る前)に存在し得るのか?

  • 王族がガノンという名称に特別反応していないのは不自然ではないか(※4)

  • スカウォ時点でトライフォースの名称が出ているのに、王家に存在しか伝わっていないのは不可解ではないか(その力の強大さ故に敢えて名称などは明確に伝えなかったと想像することはできる)


※4 ガノンという存在は形や伝承を変えつつも万年の時を経てブレスオブザワイルド(以下BotW)まで伝わっているので、TotKでの初代王国から後の時代の王族がガノンという名前に反応しなかったり、賢者やガノンにまつわる逸話が何も語られないのは不自然に見える。しかしTotKで描写された初代王国が時系列分岐以前に建国されたものではなかった場合、ガノン(ガノンドロフ)という存在をハイラル史上で初めて観測されるのが時オカになるため、ガノンそのものの存在を知らなくても矛盾は生じない。


まず個人的な結論を述べますが、上記の疑問点含めヌゥルの能力を後述のものとするなら、この時代に知恵かりが来るのは妥当ではないと考えています。


◆ヌゥルの能力を考察する


ここでは「ヌゥル」について明言または描写されている情報を整理しようと思います。


  • 天地創造以前の世界に何も無かった時代から存在していた

  • 何もなかった世界に生まれかけたものを貪り消失させるだけの存在だったため、三大神がヌゥルを封印しその上に世界を創った

  • 大地に裂け目を起こして世界を再び無の世界に還そうと企てたが、三大神の遣いであるトリィたちによって裂け目は消され、知恵かり開始まで大きな災いにはなっていなかった(※5)

  • トリィと同様のカリモノの能力を使い、裂け目に飲み込まれたものを複製できる


※5 知恵かりにおける王国の歴史上修復される前の裂け目に遭遇してしまうことも度々あり、主に子どもを行方不明にさせる「神隠し」として伝承され警戒されてきた


ここではヌゥルの「トリィと同様の」 カリモノ (ヌゥルのものはニセモノと呼ぶ)を生み出す能力の由来はどこか可能性について考察します。


▽考えられる可能性

  1. 仮説:複製の力はヌゥルの力であり、それに対抗するため三大神がヌゥルを模してトリィを創り同様の力を与えた

  2. 仮説:複製の力は世界を創造した三大神の力であり、本来ヌゥルは複製の力を使うことが出来ないが、ヌゥルがトリィたちを無の世界に捕らえたことで力を奪い行使できるようになった


仮説1はヌゥルの本体と思しき姿がトリィに酷似していたため、はじめにヌゥルの本体の方が先にあり、それを見た三大神がヌゥルを模してトリィを生み出したとする考え方です。



しかしヌゥルの姿については、最初に三大神から示された姿がトリィには似ていなかったため、三大神が原初に見たこの姿こそ本来のヌゥルと考えることもできますし、仮説1を裏付けるような テキストや描写もありません。



一方で仮説2は最終戦において体内にトリィの仲間が閉じ込められていたりヌゥルに取り込まれているように見える描写や、ヌゥルがニセモノを呼び出す際は捕らえたトリィの仲間を介して呼び出しているように見えることから推察したものです。具体的な言及はないので確実なものでないことには心に留めつつ、筆者は仮説2を採用して考察を進めます。



ここで2の仮説に従い「カリモノ」の能力はトリィの能力と全く同じであり、ヌゥルもゼルダ姫と同じくトリィの能力を「借りて」いるに過ぎないと考えると、ニセモノを覚える条件も同様にゼルダ姫と同じだと考えられないでしょうか。つまり予め対象を倒さなければ(ヌゥルにとっては裂け目の世界に引きずり込まなければ)複製することはできないと考えると、青い魔物のガノンが存在した(青い魔物のガノンを覚えることが可能な)時代を経た後でなければこのガノンの複製は成立しないのではないでしょうか?

「ヌゥルの能力はあくまでも裂け目を生み出しモノを消滅させる力である。カリモノの力はトリィ達から奪ったものであり、能力を行使するための条件は力を借りているに過ぎないのでゼルダ姫と一緒である」

この仮説を採用した場合、今のところハイラル史上時オカ以前の時代に青い魔物のガノンが存在したことは観測されていないので、知恵かりを時オカ以前の時代に当てはめるのが難しくなると推察できます。


▲行間ナナメ読みの余談1: どうやってガノンを取り込んだの?
青い魔物のガノンが存在した時系列については後程詳しく見ていきますが、例えば敗北ルートだと賢者や姫を捧げる等様々な方法でガノンを復活させようと試みられており、実際青い魔物の見た目のガノンが復活したことは度々あるので、封印地点そのものや復活した瞬間を裂け目に取り込むことでガノンを記憶することができるのかもしれません。似たようなことは神トラ2でユガが行っていますね。とはいえ知恵かりではこの辺りの言及も描写もないため想像の域を出ないことには注意が必要ですが……。


◆仮説に沿って考える:1


この仮説に沿うと勝利大人ルートにも当てはめられる可能性が低くなります。この時系列ではガノンとの因縁に決着がついており、青い魔物のガノンは存在しないからです。

また他にも──

  • 風タクでは物語開始時点でトライフォースは分裂状態、そしてEDの後に夢砂での冒険を経て新天地に王国が再建されてもトライフォースの行方はわからないままのため、後の時代にトライフォースが完全体で登場するのは不自然に見える

  • この時代におけるリト族はゾーラ族由来であり、生き物の住めない海に対応するために進化した種族とされているので、知恵かりにゾーラ族由来のリト族が登場せずゾーラ族が2種族も存在していることと矛盾する(汽笛にも登場してはいないがこの時間軸にゾーラ族が全く存在しないという証拠もないことは留意)

  • 知恵かりには三大神ゆかりの地が登場するが、汽笛では新天地である光の神の大地に新ハイラル王国が再建されたため、新ハイラル王国は三大神とは紐づいおらず関わりは薄いと考えられる


このように上記のように推察することもできるため、知恵かりは勝利大人ルートの可能性も低いように思われます。

また同様に、TotK初代建国→1万年前の厄災ガノン討伐戦→ BotW (TotK) のこの間のいずれかに知恵かりを当てはめるのも難しいと考えています。

この時代の流れにおいて青い魔物のガノンが歴史上観測されていない上に、TotKの初代王国建国からBotW(TotK)に至るまで「ガノン」は何度も国を陥れてきた災いとして伝承が残っているため、いくら青い魔物をガノンと認識することが出来なくても「ガノン」という名前について言及がなかったり伝承が残っていないのは不自然だと考えられるからです。


TotK冒頭より


しかしBotW (TotK)はこれまでのゼルダシリーズの遥か未来であること以外にどの時間軸の後の物語なのかは未だにわかっていないため、青い魔物ガノンが登場した後の物語であるという可能性も否定できません。

ここでは青い魔物ガノンが登場した敗北ルートなのか勝利こどもルートなのかは一旦問わず「BotW(TotK)は青い魔物ガノンとの戦いを経た後の時代である」という仮定の上で考えると、TotK初代王国建国~BotW時点は万年を越えてガノンの伝承が残っているため知恵かりを当てはめられる可能性は低いのですが、TotKより未来の話とするならガノンやトライフォースの伝承が薄れていて、かつ王家に「姫巫女と勇者~」 というBotW (TotK)でのゼルダ姫とリンクの役割に似た伝承だけが残っていても不自然ではないでしょう。

BotWの時点で太古に描かれた厄災ガノンの存在がどう見ても「青い魔物」ではないので、仮にガノンを封印から解き放って裂け目に取り込むことができたとしても青い魔物の姿でニセモノを作り出すことはできないのでは?と筆者は考えていますが、TotKの後という可能性が全く無いと言い切れるほどの材料もないのではないでしょうか。


行間ナナメ読みの余談2:なぜトライフォースの正式名称が出てこなかったのか?
大いなる力というのは知恵かりの作中で間違いなくトライフォースを指しています。 なら何故わざわざ正式名称を登場させなかったのでしょうか?筆者も失伝の可能性が高いとは考えているのですが、別の見方として大いなる力がトライフォース以外にも「秘石」を指す場合もあるように読めるよう敢えて設定したのではないかとも想像しました。
TotKで初登場した秘石ですが、実はTotKマスターワークスにおいて「創造神(恐らく三大神を指す)が生み出したもの」という記述が追加されてしまいました。秘石が三大神由来のものであるなら、世界観上はヌゥルと同様に「どの時系列にも存在し得るもの」であるため、姫巫女と勇者が守った大いなる力と呼ばれるものは歴史上トライフォースの時もあれば秘石の時もあり、年月が経つうちに混同された……としても不思議ではないと想像してしまいます。
仮にこの説が正しければ今のところ秘石を巡って争ったのがTotKしかないのでTotKの後の話だとしても更に不自然ではなくなるのですが、これは流石に行間の読みすぎかなと筆者は思います。


◆仮説に沿って考える:2


青い魔物のガノンが存在しているのは敗北ルートにおける神トラ以降または勝利こどもルートにおける4剣+以降になり、仮説に沿うと青い魔物のガノンが存在しないそれ以前の時代に知恵かりを当てはめることは難しいことまで考察しました。

その上でトライフォースが完全体の状態で明確に存在している区間(※6)は以下の3つの地点になります。


  1. 神トラクリア後~きのみクリア前

  2. 神トラ2クリア後~初代ゼルダの伝説(以下初代ゼルダ)開始前

  3. リンクの冒険(以下リン冒)クリア後~


※6 きのみ~神トラ2間は、きのみの最後にトライフォースが離散したことが描写された上に、 神トラ2開始時点で力のトライフォースはガノンと共に封印されていた(知恵は当時のゼルダ姫に、勇気は勇者の心に宿っていた)。知恵かりではヌゥルがガノンのニセモノを使役していたが、力のトライフォースをガノンから入手した訳ではなかったため、きのみと神トラ2の間に知恵かりを当てはめるのは不自然になるので除外する。


勝利こどもルートはトワプリ以降トライフォースの所在が明確ではないため除外すると、敗北ルートのこれらの地点は知恵かりを当てはめることができる余地があると考えられます。

知恵かりの地形が神トラ(神トラ2)を概ね踏襲している点や、海ゾーラと川ゾーラが共存している点など、トライフォースの所在やガノンの存在以外にもこのルートであることを補強する要素は多いのですが、具体的な時期まで絞り込もうとするとそれぞれにやや気になる点も存在しているように思います。このルートは作品が最も多いこともあり、どの地点が妥当なのかを絞り込むため、他の描写も見ながら考察します。



まずアタリマエではありますが、主人公であるリンクが同一人物である作品同士の間に知恵かりを当てはめることはできません。具体的には神トラ~夢島、神トラ2~トラ3、初代~リン冒が除外されます。よってここで考えるのは夢島~きのみ、トラ3~初代、リン冒~のどの期間に当てはめられるかになります。

またこれらの作品間について検討する際も、前後の作品までの時間・時代が相当離れていることも考えられるため、一度ガノンやトライフォースの名称や伝承が消失するほど長い時間が経ってから知恵かりで再びこれらの存在が表面化し、改めて後の時代にガノンやトライフォースの存在が伝承されたとも想像できる余地があることには注意しましょう。


▽夢島~きのみ間

きのみはトライフォースによってリンクに試練が与えられることから物語が始まるため、トライフォースは神トラクリア後から引き続き完全体で存在していたと考えられます。しかし神トラから地形を概ね踏襲しているにも関わらず、森にマスターソードが存在しておらず、後の時代に神トラ2が続くと考えると不自然な点があるため、可能性としては低いように思います。


▽トラ3~初代間

厳密にはトライフォースが完全体として揃った神トラ2クリア後から、初代開始前に王家がトライフォースの力を完全に引き継いで治世を行っていた時代までの間になります。仮に知恵かりを当てはめられると仮定しても、ガノンやトライフォースの存在や名称の喪失、マスターソードが登場していない点を踏まえるとトラ3→知恵かり→初代の間はかなり長い時間の開きが必要だと考えられます。また知恵かりには「砂漠の神殿跡」が登場していますが、砂漠の神殿跡の見た目が神トラ2のものよりは神トラのものに似ているというのも気になるところです。全く無い線とは言い切れませんが、後述の地点より当てはめられる可能性は低いのではないでしょうか。


▽リン冒~

リン冒の先は初代ゼルダ姫が目覚めたこととトライフォースを完全に揃えた以上の情報はないため、自然に知恵かりを当てはめられる地点のひとつだと考えられます。マスターソードもしばらく登場していない上、リン冒の後に続く物語も今のところ無いため、平和なままトライフォースやガノンの伝承が薄れていったとも想像できます。しかし引き続き「砂漠の神殿跡」の見た目が神トラ2の後にしては不自然という点は解決していないので注意しましょう。


知恵かりの砂漠の神殿跡は神トラの砂漠の神殿が時間をかけて朽ちたようなデザインに見える。神トラ2の砂漠の神殿は出入り口の数も異なり広場もなく、知恵かりが神トラ2の後とすると不自然にも思える。


よって以上の点に基づいて個人的に比較した結果、解決していない疑問はあるものの、敗北ルートにおいて最も自然に知恵かりを当てはめることができるのはリン冒の後になるというのが筆者の結論です。


行間ナナメ読みの余談3:ゲームシステム面から妄想する
初代ゼルダ姫の悲劇という設定を知っていますか?詳しくはハイラル百科等を参照してほしいのですが、 これは敗北ルートの特定の時期にのみ存在する「初代ゼルダ姫の悲劇以降、王家に生まれた姫には必ずゼルダと名付ける習わしがある」という設定で、この設定が出てくると敗北ルートである可能性が劇的に高まるというものです。
何故筆者がこの話を持ってきたかというと「今作のゼルダは主人公にも関わらず名前を変更できなかったのは王家が初代ゼルダ姫の悲劇を経た後だからではないか!?」と勝手に想像が先行してしまったからです。
BotW等最近の作品では勇者の名前は「リンク」で固定されていますが、勇者の名前がプレイヤーに委ねられた作品も多く、そのため知恵かりも主人公に任意の名前を付けられる可能性もあったとは思うのですが……まあ普通に考えてゼルダの名前を変更できるわけがないですよね。タイトルのゼルダの伝説の「ゼルダ」って何?となってしまいますし(シリーズの中にはゼルダ姫との関わりが薄い作品もそこそこあることは気にしてはいけない)。流石に飛躍しすぎな筆者の妄想です。
とはいえ逆にもしゼルダに通称ではなく王家に生まれた姫の正式名称として任意の名前をつけることができたなら、確実に初代ゼルダ以降は当てはまらないことが明確になりますので、この仕様で良かったような、なんとも惜しいような気持ちもあります。


◆別の可能性はあるか?


ここで先ほどはトライフォースの行方が曖昧であるため勝利大人ルートの4剣+以後に知恵かりは当てはまらないとしましたが、果たして本当に除外してもよいでしょうか?……実は個人的にこのルートも全くない線ではないと考えているところがあります。

その具体的な理由としては──

  • 4剣+のガノンも対峙した際の姿が神トラの「青い魔物ガノン」に近い姿である

  • 4剣+には「東の神殿」や「砂漠の神殿」が存在している等、一部の地形や舞台は神トラ準拠になっている

  • この時代のマスターソードはトワプリの時の神殿に返されたと思われるため、時の神殿の森がいにしえの森と同一でない限り知恵かりにマスターソードが存在しなくても矛盾はない

  • この時代ではトワプリで時オカの造形に近いゾーラ(海ゾーラ)と、4剣+において魔物のゾーラ(川ゾーラ)が登場しているため、後の時代で2種族が共存していても不思議ではない

  • 知恵かりには雪山で暮らすコンデが登場しておりトワプリの獣人との関連性が考えられるため(ただしコンデ家族がトワプリの獣人と同一の種族だとする確定的な情報はないことに注意)


上述のものが挙げられ、また以下は筆者の想像になってしまいますが──

  • トワプリの後にガノンドロフから力のトライフォースが消えたため、描写はないものの後にトライフォースが完全体で存在することになったとしても不自然ではないようにも考えられる

  • 勝利こどもルートでは時オカのガノンドロフの野望が未然に防がれた世界であり、トワプリのガノンドロフの暗躍も表向きには「影の一族(ザント)の侵攻」だったため、その後の歴史でトライフォースやガノンの存在の伝承が薄れるのも不思議ではないとも想像できる

  • 4剣+にはゼルダ姫以外にも巫女が登場しており、ゼルダは巫女達の長のような役割なのでこの時の活躍から後に「姫巫女」と称されるのにも違和感がないように思える

  • 王家には姫の由緒正しい旅装束が残っているが、ゼルダがポニーテール姿になるため4剣+のゼルダを彷彿とさせる(4剣を彷彿するともいえるが)

  • 4剣+では青の巫女の村で子どもが闇の世界に迷い込んで行方不明になる事件が起きており、神隠しを連想させる



以上の理由から筆者としてはこのルートも全く可能性がないわけではないのではないか!?というのを推していきたいです……が、見ての通り考察というより描写が無いのをいいことに想像した内容が混ざっているため、これらはあまり妥当なものとは言えませんね。

具体的に示された描写からより自然に知恵かりを当てはめることができるのはやはり敗北ルートでしょう。


◆筆者の結び


それでは上記の考察をまとめたいと思います。今回の記事ではヌゥルの能力を仮定した上のものですが、それを踏まえた上で知恵かりを当てはめ得るのは──


  1. 青い魔物のガノンが登場した歴史を経た後のTotKの遥か未来:可能性低

  2. 勝利こどもルートの四剣+の後:可能性低 (個人的な希望としては高)

  3. 敗北ルートのトラ3と初代の間:可能性やや低

  4. 敗北ルートのリン冒の後:可能性高


以上が筆者の個人的な結論になります。

なるべくは既存の設定と矛盾していないか個々の要素を検討し考察したのですが、そもそもヌゥルの能力が本当に記事で仮定したもので正しいのかもわかりませんし、推察という名の想像も多く含まれている結論というのは改めてご了承願います。

しかし時系列についてはファンが公式から受け取れる情報の範囲の、どの情報を重要視するかでいくらでも異なる結論を出すことはできますよね〜。

例えばこれはヌゥルの能力を仮定して出した結論ですが「マスターソードが登場しないのはマスターソードが失われてしまったから」と仮定すると、勝利大人ルートのマスターソードはガノンドロフと共に海の底に沈んでしまい完全に失われたともいえるため、最も可能性があるのは筆者の結論では除外した勝利大人ルートになります。
またこの記事では冒頭で「時オカ以前には当てはまらない」としましたが、矛盾点が少ないのもこの時期なので、青い魔物のガノンや聖地を重要視しなければ知恵かりを当てはめることは出来るようにも思えます。

しかし勝利大人ルートだとやはりトライフォースや三大神と無関係な新生ハイラル王国について考えなければいけませんし、時オカ以前の時代はハイラル百科に載っている設定がどれほど後の作品にも設定として残っているか考えなければいけませんし……まあ、そこが考察をする上で面白いところなんですけどね(ろくろを回す)。

と、こんな具合にこの辺りで締めないと結論を出した後にも関わらずいくらでも考察という名の妄想をこねくり回してしまいそうなので、とりあえず筆者は人事尽くして天命を待つことにします。後は公式の匙加減ですね。個人的には公式から与えられている範囲の情報で有意義な考察ができたように思いますので満足しています。

ところでこうした考察遊びに対して「公式はいくらでも後付けが出来るのだから意味がない」という考え方や「こうした設定にがんじがらめになるのはゲームとしての面白さを損なう恐れがあるので設定から解放されて自由に作ってほしい」といった意見もあり、筆者個人としてもうーん!わかるよ!!わかるけども!!!と毎回唸ってしまいます。

まあこれは筆者の独特な価値観なのですが、筆者にとってゼルダをゼルダ足らしめているのってやはり「伝説であること」と言いますか、女神の血筋と勇者の魂と魔王の怨念の巡る世界と物語の中にいられることだと思っていて、ゲーム性の面白さだけ求めるなら極論別にゼルダというIPを使わなくても良いと思っています(当然といえばそうですが)。

ゼルダ無双のファイが無双リンクに出会った際に「マスターと異なるが同じ」と発言したように、生まれる時代は違ってもそこにある魂(プレイヤー・私)は同一なので、かつて救った世界の息吹が感じられることほど嬉しいことはないと思って筆者は遊んでいます。

とはいえ設定のせいで遊びが面白くなくなるなら設定に縛られてほしくないという考え方も自分の中で両立していますし、BotW以降新規プレイヤーも増えたこともあり、過去作オマージュは別に(主に新規層への)面白さに寄与していないとする率直な意見も見かけますし、この辺りの事情も十分理解もできますから難しいですね!

しかしTotKのインタビュー(※7)において「ゼルダを考古学的におもしろがってもらえるのがいちばんいいかな」と青沼氏も語っていましたし、筆者自身の考察スタンスもまさにこれで、やっぱりゼルダの新しいゲームが出るということはこの壮大な輪廻の物語の新たなる歴史の資料が見つかったのと同じことだと思っています。

※7 以下リンク参照


新しい作品が出る度に、これまでこうだと思っていたことが異なっていましたということも多々あるんですけど、筆者はそれを歴史的な新発見!新解釈!として受け取って面白がっていきたい所存──というより公式なんだから好きに後付け(味付け)して楽しませてくれ!というのが筆者の想いです(まあこれはゼルダというゲームが筆者にとっては毎回面白いものという信頼の上に成り立っているというのもありますがね)。

さて、今回の知恵かりは特にゼルダというゲームがすきな人たちが作ったゼルダというのをひしひしと感じましたが、本当に毎作毎作ゼルダに関わった人たち全員に対して筆者は感謝を捧げるばかりです。
ありがとうございます!知恵かりは確かにトップビューゼルダの新しい表現を確立したと思いました!!これからも「従来の新しいゼルダ」が紡がれていくと思うと喜びで一杯です!!!

そしてこの記事を最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました!

この記事があなたの思うハイラル史へと更に思いを馳せる手助けになるのであれば筆者はとても嬉しいと思います。

みなさんもどうか「公式が明かしていないからこそ出来る今しか出来ない遊び」の世界に飛び込んでみてください!それではまたどこかでお会いしましょう!良きゼルダライフを!!



◆参考文献


  • ハイラル百科

ゼルダのアタリマエ──全てここにあります。過去作と比較する際は絶対に必要な聖書(バイブル)。設定だけでなくアイテムや敵も全て網羅してあるのでゼルダの資料集としても最大限楽しめます。


  • ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム マスターワークス

TotKの背景を探究できる禁断の書。未だに筆者もその全てを読み解けてはいません。どういう意図で世界が作られたのか?を考える助けになるTotKがより面白くなる一冊です。

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