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地元公共施設の使い方を考える会議に出てみた‐④

ガワを形成しようとして混乱させる

 2回目の会議が先日行われ、参加者の時間を奪う結果にしてしまったので、自戒をこめて至らなかった点まとめていきます。市民参加型の会議される方の参考になれば。
 中身をみんなで議論する前に、前回の会議から変わった状況の整理と会議のガワの部分(進め方や終わり方)をさらっと共有しようと思って、事前に事務局の担当課と会議の会長さんへ説明と相談に。そこではまぁいいんじゃない。という感じだったので会議でも話をしたら、他の参加者さんからNOが。それはそれで会議の結論なので良いのですが、ちょっと無駄な時間だったなーと反省してます。そもそも2回目の会議でなんでガワの形成しようとして混乱したのか、そうなった理由をまとめてみました。

2回目の会議まででできたこと、できなかったこと

できたこと
委員の声を12個同じウェイトに整えること
 (声の大きい方だけじゃなく、全員が同じフォーマットで意見を提出でき
  るようになっています。)
・ビジョンとコンセプトに関する点まで意見を出すこと
 (こんな部屋、あんな機能、イベントがあったらいいね。だけではなく行  
  政が困っていると思われる部分を少し補強できるようにしました)

できなかったこと
・ワーキンググループの結論として太い意見をつくること
 (意見とりまとめは行わない方針)
・委員さんが楽しく、のびのび意見を言う雰囲気にできなかったこと
 (理想だけなら楽しくなるけど、財源やリソースに限度がある中で行う事
  業を決めるときには厳しくなるときもある)
具体的な事業計画を検討する段階まで議論を進められなかったこと
 (現実の事業計画に落とし込むまでに必要な情報や条件を委員さんに提供  
  できなかった)

以上の結果になったのはなぜか、この後分析していきます。

プロジェクトは一本の木のようなもの

会議を会議にするもの

 決断するときに必要なものは物差し情報。会議でも同じです。
首謀者の持つビジョン(根っこ)=事業の物差し
最初に提供する情報の精度=最後の結論の精度
 
会議が楽しく進もうが、かたっくるしく進もうがファシリテーターがいようが、いまいが、これが全てだと思います。
 会議自体が企画段階であるものは事業理念や目的など事業が進むにつれて解像度を上げていくための幹を太くする段階なので、解像度が粗くても問題がなく、事業が進んで見直しが入ってもここまでは戻らない根っこと幹の強さが関係者に伝われば良いのです。
 具体的な枝葉を決める議論の進行度合いに合わせて実はこうで・・・という情報が上がるとそれまでの議論はふりだしに戻り、採算性を気にしたいのに、BSが出てこないとふわっとした話にしかならない。
大切なことは、
 ①この方向で行くんだ、というぶれない根っこを首謀者が示すこと。

 ②欲しい決断に対応した精度の情報を参加者で共有すること。
会議を首謀した側の仕事は始まる前に終わるということです。なんですがそこを徹底できてなかったまま進めたのがいかんかった…

改良点1 事前準備の不足 (根っこと幹はどこにある?)

 施設の有効的な利活用方法を考える会議。そこでの論点は
・具体的な集客方法の検討
・空き部屋の利用方法の検討

(赤字になるであろう運営費を黒字化できる道筋をみつける)
の2つ+1に設定してありました。+1はちょっと置いといて
この2つは木で例えると枝葉になります。枝葉を決めるときは、幹と根っこを通して情報を吸収しないといけません。情報がないと実のなる枝葉を見つけることができません。

根っこにあたるものは
・この建物を作った事業のビジョン、目的
幹にあたるものは
・この施設のコンセプト

根っこを通して吸収する情報は
・行政の施策の中での位置づけ
・この事業のターゲット、およびマーケッティング情報
・周辺地域の状況
・建物の管理方法
・利害関係者の整理
・入居テナントの状況
・この施設の収支目標(建設費回収期間含む)

くらいを最初に前提条件として伝えないと枝葉の形は見つからないと思います。

 今回は根っこと幹の中が弱く、必要な情報も抜けてたり、そもそもなかった状態だったのが苦しい会議のスタートだったかなと思います。

改良点2 自由な議論は自由か?

 会議の枕詞にある、「ゼロベースから皆様の自由な意見で議論していただければと思います。」
参加者の意見を尊重する姿勢を示す言葉ですが、厳しい見方をすると丸投げにも見える言葉です。具体的な方法を検討する会議でゼロベースにしてしまうと、幹や根っこ、前提条件もテーマに入ってしまい、収集がつかなくなってしまう。これを避けるためにも根っこと幹をはっきりと示し、ブレさせない。そして前提条件を最初に伝えることが必要で、ガワを決めてその中で自由な意見を話し合わないと枝葉は方々に伸び結論がばらけてしまいます。

会議のお題である
・具体的な集客方法の検討 ・空き部屋の利用方法の検討
はこんな部屋があったらいいね、こんなイベントあったらいいね。で終わることもできるのですが、実を付けさせようとすると根っこと幹を通して情報を吸収しないと、しっかり熟すことができません。今回の事業は根っこと幹が弱く、栄養も少ないことが1回目の会議でわかりました。ではどうするか?根っこと幹を補強することが一番早い解決方法です。

根っこと幹を作り変える場合は本当にゼロベースからになりますが、その場合の議題は事業計画の見直しになります。今回は完成が目前にあることから見直しではなく、補強するという選択肢にしました。

改良点3 ビジョンとコンセプトはだれが作る?

 民間事業をする場合、事業のビジョンを決めるのは間違いなく「社長」です。そしてリスクを背負ってリターンを取りに行くのが事業です。批判されようが、関係ありません。自分の意思で進むことができます。
 公共事業はどうでしょう?ビジョンを決めるのは「行政のトップ」ではありますが、議会も市民も関係します。強いビジョンをトップが発信した場合、賛成もあれば、反対もでてきます。そしてそれを無視することはできません。そこが公共事業がどうしても強いビジョンを押し出せない理由の一つになります。
 また、市民参加型の会議で、ゼロベースからビジョンとコンセプトを決めてください。というお題が出ても、これは!という意見なかなか出てこないと思います。普段から情報を集め、課題を見つけ、解決策を考えている人間じゃないと芯の強いビジョンをつくることはできません。

改良点4 枝葉から根っこを補強できるか?

枝葉を決めたいけれど、根っこが弱い。ではどうやって補強するか?ここが私の悩みどころでした。
選択肢1 行政にビジョンを作ってもらう
会議がスタートしてしまっているなかで、担当トップに「ビジョンはこれです」と言ってもらう。
 →弱い「賑わい創出」の現状のまま。

選択肢2 会議でビジョンを決める
会議の中でビジョンをみんなで決める。
 →10人いれば10個あるのがビジョンで、それは妥協できないものです。
  ビジョンをみんなで決めることは無理でしょう。

選択肢3 枝葉を考えつつ、幹や根っこを想像してもらう
会議に参加している方が想像しやすいのは枝葉です。それを最初に描いていただいて、逆算で幹や根っこのありかたをそれぞれから提案してもらう。
 →ばらばらにはなるけれど、参加者の中で共通点があれば行政の「賑わい   
  創出」という根っこを補強できる。

 私が採ったのは選択肢3です。この枝葉から幹、根っこを想像していくのは普段仕事でしている逆流になるので、苦しいとこですがこれしか幹と根っこにたどり着かないかな、と会議のガワをつくりました。

改良点5 それはだれが利害関係なの?

 この会議を開いている間にも工事は進み、オープンは近づきます。そして枝葉を議論していただいている会議を差し置いて、行政がこの施設に関することを決めてはいけないのではないか?という配慮から、委員が話し合うのではなく、行政と直接の利害関係者が話し合う方が良いことも会議の中に入ってきました。こういった配慮は必要ないんじゃないかと私は思います。この会議の守備範囲はここまでです。と最初に伝えることで利害関係のある方との交渉は行政が進めていくという役割分担ができます。そして委員は会議のメインテーマに集中した議論をした方が活きた会議になります。

改良点6 ガワを決めるのはだれか?

 改良点1~5を会議の中で見つけて、ガワの提案をしている私はファシリテーターでも、ディレクターでも、事務局でもなくただの委員のうちの一人です。これが混乱の一番大きな原因です。
 行政が主導して開く会議の場合、行政に対して批判的な方が一人まじるだけで、行政VS委員の査問委員会みたいになるし、行政が仕切ると現状ありきになってしまうので、委員さんで忌憚ない意見交換をお願いしたい。という場合は委員だけだと話が進まないので、まとめ役一人必要です。

 
委員の立場でガワを作ろうとするのは非常に厳しいです。なんであの人仕切ってるの?特別な何かなの? という疑問が他の委員さんに芽生えます。でも会議では気づいた人間はみなに共有しなければなりません。じゃないと問題点の炙りだしができなくなります。だから身悶えながらやりました。
進行しながら、自分の意見もいうのはバランスが非常によくないのです。

 私が委員ではなく、事務局の一員として担当課に混ざって話を最初からするとガワの部分も混乱なく、進んだと思います。

結論

  1. ビジョンは首謀者がはっきりと伝える

  2. 会議に必要な情報を事前に準備する(後だししない)

  3. 進行役を一人決めて、ガワの部分を作っておく

  4. 利害関係を整理して、役割分担を決めておく

  5. 会議が始まったら首謀者、進行役は見守る

この5個ができていれば、成果につながる会議になるのかなと思います。

 この会議自体はまだ3回目が残っていますが、私の中ではゴールまで形が見えたので、この④で終了したいと思います。皆さんが参加される行政と市民の会議が実りあるものになりますように!


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