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【読書感想】オーバーストーリー
オーバーストーリー リチャード・パワーズ/木原善彦 新潮社
2019年のピューリッツァー賞フィクション部門受賞作。ぶっっ厚い。
序盤はつまらないということもないけど、のめりこむということもなく、このページ数あってこんな調子だと借りている本だし読み終わるか心配だなあという感じだった。例えば元々読んだことのある作家、西加奈子とかだと序盤が単調な感じでも絶対に大きな山場が来てどかんと感動するってわかっているから信じて読めるけど、リチャード・パワーズは初めてなので大丈夫かしら?という感じだった。
けど、心配はいらなかった。あらすじはこんな感じなんだけど
撃墜されるも東南アジアの聖木に救われた兵士、四世代に亘り栗の木を撮影し続けた一族の末裔、感電死から甦った女子大生……アメリカ最後の手つかずの森に聳える巨木に「召命」された彼らの使命とは。南北戦争前のニューヨークから20世紀後半のアメリカ西海岸の「森林戦争」までを描き切る、今年度ピュリッツァー賞受賞作。
それぞれの物語は根の先のように散らばっているけれど、幹として合流し、その後また枝葉として別々の方向に伸びていくような……そういう木を感じさせる構成で、私はその幹として合流しているところを面白く読んだ。それ以外にもそれぞれの家族の物語でもあるから、年輪を感じさせるようにもできている。
この小説を環境保護への訴えとみる人ももちろんいると思うけれど、私は家族の物語として読んだし、自然をさも人間がコントロールできるかのように思ってしまうときがあって、そういう意識で環境にダメージを与えるようなことを平気でしたり、一方で環境を守ろうと動いたりするけれど、支配ー被支配のような、保護ー被保護のような上下の関係ではなくて私たち人間も自然の中の一部に過ぎないというようなことを改めて思わせられるような本として読んだ。
実際に気候変動、汚染、生物多様性の危機、資源の枯渇など起きてしまっている問題はあって何か行動をしようというときにこの、人間も地球環境の一部をなしている一つの構成素にすぎないということを忘れない視点、全ての調和のもとに成っているということを意識すること、人間が何でもかんでもコントロールでき知っているという傲慢さを捨てること、そういうことが必要なのかなあということもぼんやり考えた。
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