『心をつかむ超言葉術』は、書くことに臆病だった背中を優しく押してくれた。
『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』
半年近く、書くことに臆病になっていました。
何を書けばいいのか、何が面白いのか。書いたとしても「つまらない」と言われたら。そんなことをたくさん考えて、noteの画面を見ることも嫌な時がありました。
それでも、今こうして僕が書こうと思えたのは、阿部広太郎さんの『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』に出会えたからだと思います。
タイトルに「超」とか「術」と書かれていて、ちょっと格好つけた難しそうな本かと思いきや、そこにはとても温かくて優しいメッセージがたくさん詰まっていました。
とても素敵な本だったので紹介します。
どんな人に読んで欲しいか
「超言葉術」というタイトルの通り、言葉を扱う人、文章を書く人に向けられた本であることは確かです。ただ、僕としてはこんな人が読んだらいいんじゃないかな、と思いました。
①何かを書きたいと思っている
②書きたいけどどうやって書けば良いか分からない
③書いてみたけど、よく分からなくなっちゃう
④書くことに自信がない
こんな気持ちを持った人に特に勧めたいです。なにより自分が「④書くことに自信がない」状況でした。
この本は①〜④の気持ちを持つ人に、阿部さんが話を聞いてくれる相談所のような一冊です。
文章術や言葉の本ですが、「いきなり文章術の本は難しそうだしなぁ」なんて気持ちだったり、少しだけ文章に興味があるという人にとっても、読みやすく優しい書き方をしてくれています。
文章や言葉関係の最初の一冊にはぴったり。
言葉のことはもちろんだけど
「超言葉術」なので当然ながら、言葉にまつわるエピソードがたくさん書かれているけれど、決してテクニックや戦術ばかりの本ではないと僕は感じます。
それは、著者の阿部さんの一言一言がとても温かいから。
「電通のコピーライター」の方です。超一流。
その肩書きであれば「ドヤァ!こうやるんじゃい!」みたいに書いていてもおかしくない(偏見?)けれど、この中には阿部さん自身が経験した辛いこと、大変だったエピソードがたくさん書かれていました。
悔しかった。
恥ずかしかった。
その言葉が最初は少し信じられませんでした。
こんなに優秀なのに?きっと失敗なんてしないだろうし、初めから自信があったんだろ?、って。
たくさんの悔しい、恥ずかしい経験をしてきたからこそ、読者のことを想った温かいメッセージを送ってくれているんだと、読み進めるうちに気付きます。
初めからできる人は、そういない。
進む途中で転ぶことだってあるはず。
一歩ずつ考えて踏み出していこう。
そんなメッセージが込められた本だと僕は感じました。
「文才」という言葉が嫌いだ
突然だけど、僕は「文才」という言葉があまり好きじゃありません。だって、文章って誰でも書けるもので、それにマルとかバツとかサンカクで判断することに違和感があるから。「文才があるね」と言われた人は良いけれど、「文才が無いね」と言われた人って「何を書いても響かない人」というレッテルを貼られてしまう気がして。
なんだろうか、「美人だね」「ブサイクだね」って言っているのと同じような気がするんです。結構、失礼でしょ?
人それぞれ文章の特徴や癖はあるはず。みんな違って、みんな良いと思うんです。もちろん汚い言葉とか、人を傷付ける言葉はいけないけれど、それは才能とはまた別の話。そういう行為をする人は、そもそもダメですよね。
そうではなくて、自分の気持ちや考えを「書く」という行為、そして「書いた」という結果って、とても大切なことのはずです。
土をこねて壺つくったらすごいじゃないですか。
木を切って棚作ったらすごいじゃないですか。
同じようなものだと思うんですよね。その材料が「言葉」で出来上がるものが「コピー」なり「文章」ということです。
何かを形にすること、今までなかったものを生み出すことって、すごいことなんですよね。書こうと思った時点で、世界になかったものをこれから産み出そうとしているんだから、そりゃ大変なわけですよ。こわいし。
でも、全部手作りなんですよね。一つ一つ違った良さがあるに違いないんです。だから「才」なんか気にせずに、書いたらいいんですよね。
阿部さんが本に書いてくれていることは、その手作りのものを「どうしたらもっと良くなるか」ということだと思います。
壺を作った時に「釉薬を塗ってみたら?」とか「いっそ花瓶にしちゃえば?」と言ってくれているような感じ。棚を作った時に「こうするとちゃんと立つよ」「長持ちするよ」とアドバイスをくれているようなイメージです。
いきなり全部できる人はいないんですよ、世知辛いけど。
でも一つずつ、考えてみながらやってみて、形になったらまた考えてやってみて。それを繰り返していくうちに、出来るようになるんですよね。
あー、手が冷たい、死んじゃうかもなー。
『今のあなただったら「I LOVE YOU」をどう訳すか』、という質問がこの本の中には出てきます。夏目漱石が「月が綺麗ですね」と言ったアレです。
僕だったら、なんて訳すだろう。
何回も考えて、上手い表現を、かっこいいセリフを生み出そうと思ったけれど、一番自分らしいと思ったのが
あー、手が冷たい、死んじゃうかもなー。
でした。
冬だし。もし好きな人が隣にいたら、ポケットから手を出してめちゃくちゃアピールすると思います。愛してる、はなかなか言えないけれど、そばに居たい気持ちは強いから。自分の気持ちを言葉にするなら、こんなセリフのような気がします。
ただ、これだとたくさんの人には伝わらないんですよね。「大久保っぽい」かもしれないけれど、そこまで。
僕は地元が夏目漱石にゆかりがあるんですが、夏目漱石にもきっと怒られると思います。三四郎池に沈められる。東大で30代男性の水死体が発見されたらきっと僕です。南無。
自分の「I LOVE YOU」をどうやってたくさんの人に共感してもらえるか。そのヒントがこの本の中には書かれています。
って言いながら「あー、手が(以下略)」とか書いてるんだから、まだ身に付いてないのかもしれないけれど。
だからこそ、何回も何回も、読み返そうと思います。
その度に「I LOVE YOU」の訳し方が変わっているはず。
100枚以上のポストイットと一緒に
忘れたくないところや気持ちの部分で救われたところにポストイットを付けながら読みました。
気付けば100枚以上。
ちゃんと読んでいるのか、と思われるかもしれないけれど、それだけこの本にはたくさんのメッセージやヒントが詰め込まれていました。
人によって響く部分は違うはずです。ポストイットを使わないでドッグイヤーを付けてもいいし、直接メモを書いてもいいし、何もしないでそのまま読んでもいい。電子書籍もある。
読み方だってこれだけ種類があるんだから、書き方だって人それぞれ。絶対の方法って無いんですよね。何が一番自分に合うか試してみるしかない。
つまりは、書いてみるしかない、ってこと。
215ページにこう書いてあります。
「一番大切にすべき読者は自分だ」
この言葉に、なによりも救われました。それからたくさん考えました。
そして今、ビビリながらもこうして書いています。
きっと大丈夫。
その気持ちでこのnoteを公開します。
自分のように、臆病になっている人がいたら手に取って欲しい。
そして、なによりこの本を書いてくれた阿部さんに感謝を伝えます。
阿部さん
温かくて素敵な本を書いてくれて、本当にありがとうございました。
阿部さんと手は繋げないけど、いつかキンキンの冷たいビールを一緒に飲みたいです。
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