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投資基準8選 Part4"競合優位性/勝ち筋"

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はじめに

 YJキャピタル(ヤフーのベンチャーキャピタル)の大久保です。ツイッターもぜひフォローください!今回は投資基準8選のうち、4つ目のPart”競合優位性/勝ち筋”についての記事です。投資基準8選をサクッとおさらいしたい方はコチラ是非ご一読ください。また、競合優位性に関わるプレゼン参考資料はコチラのシリーズも合わせてご参考ください。
 PMFで顧客への価値提供を実現したらあとは、なぜ、競合に勝てるのかという点を突き詰めます。今回は、競合優位性の定義から、投資基準との関連(unfair advantage)、示し方(VRIO、戦略キャンバス)、作り方(ピーター・ティールの市場独占の4つの鍵)等をご紹介します。また、競合優位性を、市場における勝ち筋仮説とfitさせる重要性について記事化します。

競合優位性とは

修正優位性def

 競合優位性と一言で言っても人によって思い描く定義は違うでしょう。最もシンプルな定義は「競合優位性=価値がある&独自性ある」です。上図のA.競合優位性の状態です。当たり前のように思うかもしれませんが、意外と難しいです。例えば、B.コモデティのような、「確かに価値はあるけど、他もやっているよね、すぐ真似できるよね」とか、C.価値なしのような「他との違いはわかったけど、それって顧客は欲しがってるの」とか、D.価値なしのような「他社みんなやってるけど、それってそもそも価値あるんでしたっけ」といったパターンです。自分の事業・競合優位性を考えるときは、常に、「価値があるか、独自性があるか」を問い続けましょう。

留意点競合

ここで、”価値”といったとき、事業上は大きく2つの意味合いあります。「利益=売上ーコスト」の方程式において、売上を上げるための”価値”とコストを下げるための”価値”です。一般的にイメージしやすいのは売上を上げるための価値(iphoneはクールだよね、や、フリマといえばメルカリだよね)です。ただ、コストを下げる価値、すなわち、例えば原価であれば、価格交渉力(規模の経済)や、広告費であれば、集客のハック(口コミやリファラルが広がる仕組み等)や、人件費を下げるためのオペレーションの最適化等も、大きな競合優位性になることは意識したいです。
 ちなみに、英語では競合優位性のことを、「unfair advantage」と表現することがあります。直訳すると「不公平なくらいの優位性」です。不公平なくらいな圧倒的な優位性構築を目指しましょう。

競合優位性の示し方 

 ここではVRIOとビジネスキャンバスという一般的ではあるもののスタートアップでも有用だと思う考え方を紹介します。
VRIO分析

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 VRIOとは著名な経営学者バーニーが提唱した「リソースド・ベースド・ビュー」の代表的なフレームワークです。VRIOはValue(価値がある)・Rarity(希少性があるか)・Imitability(コピーが難しいか)・Organization(組織が実行できるか)の略です。理想的な競合優位性は上図のように、全ての項目が”yes”の状態です。つまり、価値があり、独自性(希少性があり、コピーされず)があり、組織としてオペレーション構築ができている状態が望ましいです。自らの事業がどの状態かの確認、及び、全てyesの状態にするには、今後どのような施策を講じていく必要があるのかといった点を考える際に役立てつと思います。

・戦略キャンバス(ブルーオーシャン戦略)

戦略キャンバス

 一時期ブームとなったブルーオーシャン戦略に登場する戦略キャンバス(上図)も頭の整理には有用です。横軸が顧客が感じる価値の軸、縦軸がプロダクトが持つその軸の度合いです。直感的にもわかりやすい図です。この腕欠けているのは、横軸の価値の重み付けです。上図で云うと、価格と花形パフォーマどちらの要素のほうが顧客の意思決定に影響を与えるのか、という”重み”です(重回帰分析で云うところの変数の係数のようなイメージ)。つまりは、競合の比較を考えるときは”価値の種類”&”価値の度合い”&”顧客にとっての価値の重み”の3軸で戦略を考えるのが良いでしょうちなみに、戦略キャンバスでは下図のような価値曲線を4つの軸で変化させることで差別化をすることを推奨してます。頭の体操として考えるのはよいでしょう。

戦略キャンバス打ちて

競合優位性関連の投資基準

 では、ここからは競合優位性に紐づく投資基準について見ていきます。

・ジョン・ドーア(グーグル・amazonの投資家)
” 技術的優位性があるか”
・Yコンビネーター
”この企業はコピーされにくいか”
”5つのunfair advantage”
 ①team:世界一ふさわしいチームか
 ②マーケット:巨大 or 20%成長
 ③プロダクト:10倍良いプロダクトか(技術力、価格、利便性etc)
 ④獲得の発明:無料で獲得する仕組 口コミ/リファラル
 ⑤独占しうるか:先行者優位性/ネットワーク効果
・Khosla Ventures
"ユニークなインサイト、彼らしか知らない事実、特異な点があるか"

 上記にように多種多様ですが大きく①チーム②テクノロジー③ビジネスの3つに分類されるように思います。また、ピーター・ティールの市場独占の鍵4点も参考になるのでご紹介します。いずれにしても競合優位性の構築によって圧倒的な参入障壁を築き、対スタートアップへの対抗、対大企業参入への対抗を常に考えることが大事です。

優位性パタン

競合優位性と勝ち筋仮説のfitがベスト

競合3円

 ここまで、競合優位性について記してきましたが、それは基本的に”価値”と”独自性”についてでした。最後に、”勝ち筋”について記します。投資の議論の際もよく、勝ち筋・KSF(key success factor)という観点での議論をします。勝ち筋とは、その領域・市場・業界において勝つために必要な要素は何か、過去の成功企業が成功している理由・KSFは何か、海外の同業界でのNo1 企業が成功している理由・KSFは何か、といった分析に基づいた仮説です。これは非常に重要で、特に、スタートアップにとっては、まだ仮説の部分が多く、それ故に、なぜターゲット市場で勝ちきれるのかに関する勝ち筋分析が重要です。そして、その勝ち筋仮説に必要なケイパビリティが先に述べた価値×独自性にfitしていることが理想的であるのです。

ex.ECにおける勝ち筋が品揃えの豊富さと価格であった場合、その2つを実現するケイパビリティ、例えば仕入れ力(規模の経済)や営業力(出店者営業)等が重要かもしれません
ex.メディアビジネスにおける勝ち筋が低い顧客獲得コストであった場合、それを実現するケイパビリティ、例えば、CPAを低下させる広告運用への注力、紹介を促す仕組み、拡散する仕組みの構築が重要かもしれません

おわりに

 今回は8つの投資基準の内、Part4の競合優位性/勝ち筋を記事化しました。PMFによって価値提供を実現したあとの、スケールの際には必ず勝つための仮説が必要となります。改めて、業界の勝ち筋・KSFの調査、自社プロダクトの価値×独自性(希少性×真似できない)の構築を徹底するとよいでしょう。

付録:想定質問例

・競合優位性は?単純な違いではなく、価値があるのか?
・参入障壁はなに?短期的・長期的な観点でなに?
・参入障壁をどう構築するのか?
・大手参入時の対策は?資本力勝負になったときの勝ち筋は?
・市場/領域における勝ち筋・KSFは何か?
・勝ち筋・KSFをどう実現するのか?
・既存成功企業はなぜ成功したと思うか?

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【全体概要】VCの投資基準8選 〜VCとのMTGをHackする〜(リンク)
①タイミング(リンク)
②チーム(リンク)
③PMF(Product Market Fit)(リンク)
④競合優位性/勝ち筋(本記事)
⑤マネタイズ(リンク先詳細)
⑥グロース戦略(リンク先詳細)
⑦市場/ベンチマーク(リンク先詳細)
⑧ROI/投資収益性(リンク先詳細)



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