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クリスマス、とあるFacebookページの1ポストに救われた話

クリスマスが今年もやってきた。
まりやが、達郎が、マライアが、ジョンが、ワム!が街中をジャックするこの季節。

何かと慌ただしい師走。そのクライマックスであるクリスマスの時期になると、必ず思い出す文章がある。

今年も読み返して、すごく応援されたような気持ちになったので、その文章についての話をしようと思う。

まずはこちら↑をじっくりと読んでほしい。

2012年12月24日、『クリスマスという「人類のOUR IDEA」について』というタイトルで、Facebookページ「コピーライターの目のつけどころ」に投稿されたコラムだ。

多くの場合、クリスマスといえば、サンタクロースがドジをするほっこり物語か、ちょっと切ないけどじんわりするような思い出の話が多いけども、このコラムでは「クリスマス」という概念について掘り下げているのが面白いところ。

もともとはキリストの誕生日を祝う日だったクリスマス。
あるときからサンタクロースが登場するようになり、
あるときから、歌が生まれ、
あるときから、街をイルミネーションで飾るようになり、
あるときから、家族でケンタッキー食べる日になり、
あるときから、クリスマス商戦とかいう戦いがはじまった。

形は変わったけど、クリスマスという日は人類が数千年かけて、みんなでつくりあげた「人類のOUR IDEA」であり、それはポジティブにとらえると「人類が幸福に向かって、突き進むエネルギー」みたいなものから生まれている。

この投稿を初めて読んだとき、その壮大さと著者の方の着眼点(目のつけどころ)に鳥肌が立つほど感動したのを覚えている。
大学4回生のクリスマスイブ、「俺がやりたいのはこういう仕事だ!」とワナワナしていた。

時間が流れて、2年後のクリスマスイブ、僕はマッサージ屋のバックヤードでこの記事を読んでいた。

大学生のころはなんとなく、「言葉を扱う仕事」につきたいと思っていたが、僕はなぜかマッサージ屋に就職し、クリスマスはひとりで店舗の前でチラシを配っていた。

オープンからラストまで1件も予約のないお店になんとか人を呼び込むために、サンタの服装にダウンを着て必死にチラシを配った。

当時、長い間まともな休みもなく、身体もわりと限界だったが、売上をあげないことには誰も自分を見てくれなくなる。そう考えて、なんとかお客さんを呼び込もうと、まるで拝むようにチラシを渡していた。人が数字に見えた。

KFCのバケツ型容器やスーパーの袋に入った四角いケーキの箱を持った人をやけに恨めしく思い、「自分はいったいこの飲み屋街の端っこでサンタのコスプレをして、何をしているのだろう?」と、ふとした瞬間に虚しさが押し寄せて、たまらずバックヤードに駆け込んだ。

スマホを開く。クリスマス投稿で賑わうタイムライン。
「クリスマスなんて大嫌い」というクレイジー・ケン・バンドみたいな単語が頭をよぎったが、Facebookがふと過去の投稿をリマインドする通知が飛んできた。

2年前にシェアした「人類のOUR IDEA」についての記事だった。

久しぶりに読んで、これまたものすごく感動してしまった。
それと同時に、このままでは自分はだめだと、血まなこでチラシを配る己を省みた。今の自分では、チラシの1枚すらも届けられない。

結局その日はお客さんは入らなかったけども、閉店後に休みだったはずのスタッフの子がお店にやってきて、「店長、いつもお疲れ様です!無理しないでね」の置き手紙とともにお菓子をくれた。

大事にかばんに詰めて、帰り道に山下達郎を聴きながら、意外と星の見える大田区の空を見上げて、ちょっとだけ泣いた。

それから5年後、僕は編集、ライターの仕事をしている。

マッサージ屋のお店での取り組みが評価されて、自社の広報とかマーケティングの部門に移動して、文章を書くことが仕事になった。
そのあと、会社は変わったけど、今は当時思っていたような「届けること」で人を幸せにするための仕事をしている。
かたちは変わったけど、2014年の経験が、確実に今日につながっている。

今思えば、「人類のOUR IDEA」の投稿はあの日の僕にとってのプレゼントだったのかもしれない。
そう考えると、あの文章を書いてくれた方は僕にとってのサンタクロースだったのかもしれない。

今年、ひょんなご縁から「コピーライターの目のつけどころ」の中の人、牧野さんに会う機会があった。(澤山さん、ありがとうございます!)

そのときはあまり時間がなかったから話せなかったけど、2020年、お会いしたときには直接感謝を伝えたいと思う。
カラオケも行かねば。

話は変わって、「Merry Christmas」という言葉はキリスト教の方に向けて言う言葉だそうで、海外では「Season's Greeting」というらしい。
ちなみにこれは山下達郎のアルバム名から知った。

Season's Greeting、直訳すれば「季節のあいさつ」だ。

今となっては毎年読み返す「人類のOUR IDEA」のコラムも、僕にとっては季節のあいさつとなっている。

何かを書く仕事をしていると、この情報爆発社会で何度も読み返してもらえる文章というのは本当に貴重だなぁと思う。

手ざわりの持ちにくいインターネットの世界ならなおさらだ。
それを、タイムラインがビュンビュン流れるFacebookページの1投稿として残した牧野さんはやはりすごいなぁと思う。

そして、僕も「届ける」を仕事にする人間として、顔の浮かぶ人たち、これから出会う人たちが、ざっくり言うと人類が、少しでもハッピーになれるような言葉を紡いでいけたらと思う。

あの日もらったお菓子と置き手紙みたいに。

それではみなさん、よいクリスマスを!

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