雨の日のイロドリ

雨が降れば灰色の世界に音が響く。

ざあざあ、しとしと、パラパラ。
ザーーーッ！！、ぴちょ、ぴちょ。

雨が降ると匂いが変わる。
アスファルトが、草木が、土が、濡れた湿りっ気のある独特な匂いに。
水分を吸った服から生乾きの匂いがする。

雨降りの日は気が滅入ることも多い。
靴は濡れるし、傘が必要になるし、何処かに出掛けるも中々億劫になる。
洗濯物だって乾かないし、駅のホームで吹き込まれると冷たい。

湿気のパワーで自家製天然パーマが暴れ出し、以前は『エースをねらえ』のお蝶夫人。ボブの今は『風と木の詩』のジルベールみたいになってしまう。

それでも雨降りは結構好きだ。

特に夏になる前の今の時期の雨が。

例えば雨降りの休日、自分の部屋の中。

外の世界が灰色に霞む。
いつもに比べて薄暗い部屋で、風向きを見つつ少し窓を開けて。
ひんやりした風が通って行く。
風と一緒に音が入ってくると、次第に匂いが漂う。

そんな中でぼんやりと、小説や漫画を読むのが好きだ。

読むのはシリアスな話だったり、じわっと温かい話だったり、ホラーだったり。
雨が打ち付ける、心地良い音を聴きながら。ベッドに寝転がり本を読む。

時々思い出したように起き上がって外を眺める。

静かな雨の日ならば窓を背に座り直して、またページを捲る。
首を擽る冷たい空気が心地良い。
晴れた日ならこんなこと、暑くて、日焼けが怖くてできやしない。

激しい雨の日は雨が入ってこないよう、ほんのちょっぴり開けていた窓を全部開けてみたりする。

開けた瞬間、一気に風が音が通る。窓一枚でかなり違うものだ。

激しく、叩きつけるような雨。目の前の駐車場に水たまりが出来ている。

傘を差した人が急いで歩いている。近くの大きな道では渋滞が起きている。

ああ、雨だ。結構降ってるなあ。
あまり深くは考えず、何故かボーっと見てしまう。

開けっぱなしだと流石に部屋が濡れてしまうから、窓を閉めて。
また寝転がる。持っていた本から手を離し、天井を見上げてぼんやりする心地良さ。

こんな風にのんびりする休みも良いなあと目を閉じる。

雨の日の通勤。

行きで激しく降られると少々困る。
靴が濡れると足が冷たいし、電車の冷房で冷えると寒い。
ジーンズの膝に雨がじわっと染みる。
鞄が濡れないように、と一苦労。

でもそんな中、電車に乗るのは好きだ。
イヤホンを耳に入れて音楽を聴く。
こんな日は手元のスマホを弄らず、流れる景色を見るのが楽しい。

B'zが好きで好きで仕方ないので『TIME』『雨だれぶるーす』『Shower』『Calling』『睡蓮』あたりを気分で聴いて歌の世界に入り込む。
そしてお決まりのように稲葉さんのソロ曲『静かな雨』を聴いて情景と曲をリンクさせる。

静かな雨に閉じ込められ、薄い膜の中に居るよう。

帰り道は濡れたって構わないとばかりに、のんびり歩く。
駅を出てしばらくは傘の群れの一員になって歩いていき、次第に人が減ってきたら住宅街をゆるゆるした速さで進む。

落ちる雨を弾く傘。
傘はいつも自分が気に入ったものを使うようにしている。

好きなものを使っているとそれだけで楽しくなって「ふふん」と何処か得意な気持ち。視界に入る度に嬉しくなる。

傘の中から外の世界を覗き見る。頭の上で響く音に何処か癒されて。

いつもだったらコンビニには寄らないのにこんな日は足を伸ばしてお土産を買ってしまうのは何故だろうか。

雨降りのおでかけ

雨女疑惑が出る程度に雨が降る私。
特に夏から秋にかけて、ライブのついでにどこかへ行く時は結構雨に降られる。
それを踏まえて予定を立てるのもまた楽し。
雨の中の観光は億劫な面があることは否めないが、妙な楽しさもある。

仙台に行った日は次の朝駅が水没するくらいの雨が降った。

傘を差しながら、時々雨宿りしながらも結構楽しいものだ。

常滑では雨が強くなり急遽入ったINAXライブミュージアムが面白くて長居してしまった。

京都では雨に降られながら新選組にまつわる場所を回った。

東京では雨の中バラ園を見た。

愛知でのLIVE。会場からの帰りは大雨の中をホテルまで歩いた。

和歌山では足元に気をつけながら高野山を散策した。

確かに、雨の中歩くのは歩き辛いし動きも制限される。

でも、雨だったからこそ印象深くなる思い出もある。
雨とセットの景色と匂い。傘を差して一緒に歩いた相手。
会話に、その後食べたもの。
もしかしたら普段よりも覚えているかもしれない。

雨で彩られた世界。
この時期だけのささやかな喜び。

本格的な夏がくるまでの間、充分楽しみたい。