製造業と監査法人の組織文化の違い
製造業は他業界と比較してゴマスリが効果を発揮しにくい。理由は簡単で、上司が誤った指示を出し、それにゴマスリ部下が迎合し指示通りに製品を設計・製造したら、後で困るのは自分だからである(製品不具合として必ず自分に跳ね返ってきて、もっと酷い目にあう)。特に、私が所属していた重電産業は一つのミスが人命に直結し、人々の生活に大きな影響を与えるためその傾向が強かった。したがって、ゴマスリという文化がほとんどない。対する監査法人はというと、監査結果に責任を持つのはパートナーと呼ばれる上席社員個人であり、パートナーによって重要視するポイントはバラバラ!更に、監査に失敗したところで(※1)、本当に困るのは財務諸表に重要な虚偽表示をしたクライアント自身であり、ぶっちゃげた話、監査法人への影響なんてたかが知れてる(※2)。したがって、財務諸表監査はパートナーやマネージャーの自己満要素が非常に強く、彼らの嗜好が色濃く反映されたものになる。そういう環境下においては、偉い人の自己満に付き合う=ゴマスリが幅を利かせる!とならざるをえない。以上、今回は業界が変わるとこんなにも組織文化がガラリと変わるのかという話でした。
※1 監査失敗 : 重要な虚偽表示リスクを看過し、重要な虚偽表示がある財務諸表に対して、無限定適正意見を表明してしまうこと
※2 監査法人の責任 : 監査法人の責任は正当な注意を払って監査を遂行したか否かであり、正当な注意を払って監査をしていた場合、たとえ、重要な虚偽表示を看過しても免責される。ここでいう正当な注意とは、他の経験豊富な監査人が払うであろう注意であり、よほど悪質な場合や重大な瑕疵を除いて言い逃れはいらでもできる
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