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先日の学びの中でこんな問いに対して考える機会がありました。

「わたしは何者なのか?」


簡単には答えが出ないようで、それでも何か言えそうな感じがします。


ではこう尋ねられたら、とっさに何と答えるでしょうか?


実はこれ、日ごろからよくやっていることなんです。

そう、それは「自己紹介」です。




例えばみなさんは自己紹介の際に、どんなことを話しますか?

「長野の岡部泰幸です。専門学校で教員として働きつつ、就職支援を行う中でキャリアカウンセリングを行っています。どうぞよろしくお願いします」

・・・うーん定番(笑)

ここでは、「居住地」「氏名」「職業」「仕事内容」などを話しています。組織で働く人なら「社名」「部署名」「肩書」などでしょうか。

これってすべて【外的キャリア】ですよね。
職業や肩書・資格・年収など、外から見たキャリアは、比較的話しやすく、かつ相手にとってもわかりやすいものです。


一方で、先日の学びではこんな自己紹介をしてみました。

「長野の岡部泰幸です。普段は専門学校で教員として授業を持ちつつ、就職指導にあたっています。わたしは熱しやすく冷めにくい性格です。だからいろいろなものに興味を持って手をつけるのですが、なかなか止められなず、どんどん趣味が増えてしまって困っています。最近はオーディオインターフェースに興味を持って、先日これを買ってしまいました。こんな多趣味な人間です。よろしくお願いします」


・・・いかがでしょう?

少しだけ【内的キャリア】の方向で話をしてみました。
性格や趣味、働きがいや生きがい、モチベーションなど、本人しかわからない内面のキャリアです。
そこには必ずその人の人生経験が影響を与えています。
だからほんの少し、自分のことを語ってもらうだけでも、どんな生き方をしてきたのかに触れることができます。


ちなみにわたしは、熱しやすく冷めにくいことから、授業内容や教え方を工夫することが楽しくて、つい熱中してあれこれと考えてしまいます。
実際に試していく中でよいものに仕上げていくことが好きで、いまの教え方は7年近くかけて築き上げてきたものです。
それはキャリアカウンセラーとして、あるいはファシリテーターとして参加する学びの場でも生かされていて、伝え方や話の展開は仕事で培ってきたものが自然と出てきてしまいます。




キャリアを築くうえで、【外的キャリア】はとても重要な役割を果たします。

例えば、「国家資格キャリアコンサルタントの岡部です」と伝えるだけで、「就労支援や相談業務ができる人なんだろうな」ということが一瞬で伝わります。
「情報セキュリティマネジメント試験、第一種情報処理技術者(現在の応用情報技術者)、日商簿記2級などの資格を持っています」と言えば、情報処理や簿記会計の知識も一定程度あることがわかっていただけます。
「職場の基礎代謝(R)改善ファシリテーター、雇用環境整備士Ⅱ種(障碍者雇用)、長野県発達障がいサポーター養成講座修了など、対応できる範囲は様々です」と言えば、学生だけなく組織や働く人へのサポートもできる可能性を感じていただけます。

でも、これは「どこかで取得・習得したもの」であり、外から獲得した知識や技術ばかりです。言い換えれば、努力次第で自分以外の人でも手にすることができるものです。

ですから【外的キャリア】だけでは、自分のキャリアすべてを語ることはできません。なぜならそこにその人らしさが存在しないから。

資格の有無や肩書、身についたスキルなどは、「何ができるか(What)」「どうやってやるか(How)」にフォーカスしています。
「なぜ、何のために(Why)」が語られないんですね。
それは【内的キャリア】に含まれるからです。




【内的キャリア】は、自分の中にあるものです。内的動機とも深く結びついており、「なぜ、何のために(Why)」という問いの答えに当たります。

ただし、自分自身の働き方や生き方をじっくりとふりかえる機会がなければ、なかなか語ることは難しいでしょう。場合によっては本人ですら気づいていないこともあります。
また、本音で語れない(弱みを見せられない)場合には、真実を語れないこともあります。
例えば、「ポジティブでめげないと言いつつ、時には大きく落ち込むこともある場合」などです。「いつでも前向き」と言い切れず、何となく歯切れの悪い語りになってしまう感じがしませんか?


【内的キャリア】は自分の中で育てるもの・培っていくものです。「仕事とは?」「生きるとは?」「生きがいとは?」と問われたとき、自分の内側から出てくるものです。

だから、自分の仕事経験や人生経験をふりかえって、「あのときあの瞬間に何を思い、どう考え、なぜその決断をしたのか、その行動はどんな影響を与えたのか、そこから何を学び何に気づいたのか」といった深い内省が必要になるわけです。

そして、ふりかえるときには自分自身に対して誠実であり、正直であることが欠かせません。それは自分一人の自問自答でもできなくはありません。
ですが、もしそこに信頼できる他者が寄り添ってくれ、内省を深めるための問いかけをしてくれたのなら、より深くより質の高い内省が期待できます。




わたしの例ですが、こんな経験があります。

いまから10年ほど前に担当したクラスでのできごとです。
当時のわたしは決めつけや指示的な態度で、「あなたはこうでしょ」と上から目線で言ってくるような先生でした。学生を正しい方向へ導くことが先生の使命とでも言わんばかりの、熱血漢?だったように捉えています。

あるとき、授業中にどうも学生たちが離れていってしまうような感覚に襲われたことがありました。問いかけても反応が薄い、こちらを見て話をしてくれない、学生同士では普通に話しているのにわたしが来るとよそよそしくなる―――そんな印象です。

その後、学生たちが他の先生に「岡部先生は嫌だ。話を聞いてくれない」と打ち明けていることを人づてに聞きました。ショックでした・・・

その後、わたしは「きちんと話の聞ける人になる」と決め、まずは決めつけや指示的な態度を改めようと取り組みます。しかしながら、『正しい方向へ導くことが使命』と思っているため、形だけのうわべだけのかかわりになっていたのでしょう。なかなか距離は縮まりませんでした。わたしは悩みました。「なぜ自分を変えてまで接しているのに伝わらないのか」「どうして話を聞いているのに認めてくれないんだ」と。

そんなとき、当時の上司から「キャリアカウンセラーという資格がある。今度長野で説明会を行うようだから参加してみてはどう?」と言われます。わたしは「話を聞くプロになるためのチャンス」と捉えて、参加することにしました。それが日本マンパワーのCDA養成講座です。

資格を取得したのはそこから3年後のことです。実技試験の不合格を乗り越え、ようやく「人の話を聴く」姿勢が身につきました。同時に「正しい方向へ導く」ためには「まず相手の話を聴くこと」が大切だと痛感します。

以来、学生を尊重し、対等な立場を心がけて話を聴くことを心がけてきました。その結果、わたしは「ちゃんと話を聴いてくれる先生」として、学生たちに少しずつ認められていきました。

わたしの【内的キャリア】として培ったものは、
・人の話を聴く
・自分を省みて、改める力がある
・人を導くために矢面に立てる
・年齢や立場は関係なく相手を尊重できる
・目的のために数年がかりでも努力し続けられる
・スキルよりもあり方を大切にしている
・CDA/国家資格キャリアコンサルタントの資格を生かせる
といったものです。

働きがい・生きがい・やりがいとして自覚していますし、性格・思考パターン・行動パターンなどにも現れています。

それを支えているのは【外的キャリア】でもある「CDA/国家資格キャリアコンサルタント」の資格です。【外的キャリア】のおかげで【内的キャリア】が育ったと、わたしは考えています。




【外的キャリア】と【内的キャリア】は車の両輪です。そして両輪がどのように連動しているのかは、自分自身の経験をふりかえることでしかわかり得ません。

実はこうやって自分のことを言葉にできるようになったのも、キャリアカウンセリングの学びのおかげです。
特に、自分自身に正直かつ誠実に向き合えているか(=自己一致)が問われる場面を多く経験したことで、自分を客観視する力が養われました。
そして思いや考えを繰り返し人に話すことで、結果として何度も自分の経験をふりかえり、今のキャリアに結びつくところまで見えてきたわけです。


「あなたは何者ですか?」


そう問われたとき、一つの答えとして【外的キャリア】と【内的キャリア】は役立つでしょう。

みなさんはどう思いますか?




明日も佳き日でありますように

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