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映画感想文_エンパイア・オブ・ライト

美しい映画。文学を映画にしたような。
見ながらも見終わった後も、まずそんな印象だった。

たくさん映画を見るけど、美しいなと感じる映画はそう多くなくて、
洋画で美しいと感じるのはそうそうない経験だった。
邦画では最近見たものでは(といっても昨年だが…)「ケイコ 目を澄ませて」や「窓辺にて」は美しいなと感じたが、おそらく聞こえてくる日本語と、見慣れた役者の表情と、そんな近しさが相まって感じた感情なんだと思う。
洋画で、時代設定も今ではなくて、という作品において美しいと感じることができたのはなんとなく嬉しかった。

私の大好きな「映画館」が舞台の作品。
おそらく20世紀後半のイギリス、穏やかな海辺の街の物語。
まだまだ肌の色や病気に対する偏見は健在で、思うように生きられない主人公たち。
それでも、自分らしく生きられるように、もしくは夢を叶えられるように、寄り添いながら生きていく。

おそらくこの時代の生きづらさというのは、現代の日本人が抱える生きづらさと全く異なるもので、それこそ生きていくことに必死にならなければならなかったのだろう。私はそういった時代の生きづらさを産んだ環境を映画でしかしらない。だからこそ好き勝手言えるのだが、現代の生きづらさを感じる若者よりもよっぽど精神的にたくましいんだろうな。
いや、逆か。
環境が、社会が、たくましくないと生きていけないものだったのだろう。
そんなこと考えていると、今の自分なんて甘ったれているなとしみじみ思う。
今の生きづらさの要因のひとつとして「選択肢の多さ」みたいなものがあると私は思っているのだが、やっぱり改めて、生きていくための選択肢が多いことって幸せなことだ。
選択肢が多い、どれを選んでいいかわからない、どれも自分で決められない、どれも選びたくない、他人や環境に選択を委ねたい、でもそういかない、
なんていうのは贅沢病だな、って感じる。
かく言う自分もそんな贅沢病患者で、
いつもなにかを考えていて、でも何かに寄りかからないと判断ができなくて、
そんな自分に嫌気が刺すことばかり。
そうして自分にゲンナリしている時にこういう映画を見ると、
なんとなく救われる。自分はまだまだだなと感じることができる。
たくましさがキラキラして見える。

美しさを全面に感じながら、前向きにさせてくれる映画。
弱い自分を恥ずかしくないと思える生き方をしていきたいな。
そんな壮大なことを感じた次第です。

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