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日本共産党結党100年の2022年に「共産主義」の限界を考える

 2022年は日本共産党結党100年ということである意味で記念の年です。ということで今回は改めて共産主義とは何かという話から、彼らの理想はいかにして今後達成されうるのかという話を書こうと思います。

・共産主義とは?

共産主義とは「財『産』」を「『共』有」するで「共産主義」と考えてもらうのが単純かと思います。

始まりは1848年。産業革命による技術革新によって従来の国王と臣民の関係とは別に、資本家と労働者という関係が生まれていました。

格差はより多様な形で拡大し、これを解決しようと社会における格差を是正し、労働者の立場、社会的弱者の立場を変えて豊かになろうという社会主義が社会的弱者の間で一定の支持を受けていた時代です。

この流れに新たな風を呼んだのがマルクスエンゲルスでした。

マルクス
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 マルクスとエンゲルスはそれぞれ当時の社会主義者の代表であったフランスの社会主義者であるブルードンなどを批判した活動を行い、彼らとは違う新たな社会主義の風を吹かせようとしていました。

※マルクスと当時の社会主義者の関係を描いたのがこの映画です。

そして1848年に「共産党宣言」を執筆し、社会主義と同じ理念ですが若干内容の違う「共産主義」を提唱しました。

 「社会主義」と「共産主義」に共通するのは格差の是正です。

従来の社会主義の思想や方法では限界があると感じたマルクスは共産主義において「暴力」による武力革命の必要性、そして資本主義の問題点などを続く「資本論」で批判し、世界に大きな影響を与えました。

 社会主義と共産主義の差は

社会主義が政府による資本の収集と分配であるのに対して、共産主義はあらゆる「所有」をなくし全ての資産を「共有」することに差があります。

 こうなると今度は無政府主義と混同するかもしれませんので、無政府主義と共産主義との差を説明すると、

無政府主義は暴力に訴え、現在の秩序を徹底的に批判して何でもありの無秩序による政府からの自由が目的で、共産主義は政府の打倒というよりも世界中が共産主義なら政府って結局いらないよねという話です。

 さて、ということで共産主義の内容をまとめると

「目的=平等のために個人の所有の放棄」
「方法=暴力による資本主義の打倒」

ということです。

・共産主義の失敗の歴史と理由

「共産主義の失敗」というと多くの人は「ソ連」などの共産主義国家の崩壊をイメージするかもしれませんが、実際それ以外にもたくさんあります。

先も上げました通り共産主義は武力による資本主義社会の打倒(=革命)が特徴の一つです。こうなると別に共産主義国家の失敗はむしろ共産主義の実践の失敗であって共産主義の失敗ではないのです。

革命が成功した段階で共産主義陣営にとっては痛くもかゆくもありません。むしろ革命の失敗の方が彼らにとっては大きな痛手です。なぜならその理念が広く受け入れられてないことの証拠だからです。

 そして「革命」の失敗は結構な数あります。1848年は欧州中で反乱が起きましたが、政権打倒が必ずしも成功したわけではないですし、単なる体制変更に終わり、共産主義革命とは言えないものもたくさんありました。

では、なぜ革命に至らないのでしょうか。

それはやはり共産主義という「イデオロギーの特殊性」にあるように思います。

共産主義者は資本家に抑圧されているのが労働者であり、社会においては自分たちの意見に共感してくれる労働者の数が資本家よりも多いから理念に共感してくれる人が結果として多いと感じています。

しかし実際そんなことはありません。

なぜなら共産主義とは現在の資本主義社会における常識の徹底した破壊であり、新しい常識の提唱に他ならないからです。

フランスの共産主義哲学者であるルイ・アルチュセールは現在の社会状況は資本主義体制を再生産するための機能を果たしており、共産主義は革命を可能にするために「資本主義の外側にいなければならない」と述べています。

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若いころのルイ・アルチュセール

 共産主義は理念こそ一定の評価を受けるかもしれませんが、多くの人は現在の資本主義の常識の中に生きているのであり、共産主義の常識に共感できるかは怪しいのです。

多くの労働者が資本家や自らの社会的状況に不満があり改善はしたいが、平等や暴力による現状の転覆、自らの所有の放棄ということには相当の抵抗があります。

共産主義とは基本的に資本主義の常識からの転換である新たな常識に触れ、それを受け入れることで始めて成立するのであり、それを受け入れるのは基本的に簡単なことではないのです。

ゆえに基本的に革命という行為自体は成功することもありますが、共産主義社会の形成という新たな世界を創造することはできていないのです。

・だけど共産主義がなくならない理由

労働者が共産主義の理念を活用して自分の問題を解決することはありますが、共産主義の社会を求めているのかは別の話です。

結果として革命は過去にも起きましたが、成功した共産主義革命は僅かですし、その成功した末にできた共産主義国家はみんな現在では崩壊しています。

また20世紀後半においては自由主義陣営で成功した革命(フランスの五月革命は失敗)はありません。

なぜなら「民主社会主義」「平等意識」の広がりによって共産主義がターゲットとしてきた人々の不満が分散して相対的に共産主義への支持が減少傾向になっているからです。

さらには共産主義国家の代表格であったソ連の崩壊によって共産主義の支持は減少傾向になりました。しかし、未だ共産主義者たちはこの理想を捨ててはいません。

なぜでしょう?

それは共産主義が提唱する史的唯物論にあります。

 史的唯物論とは共産主義の歴史観であり、資本主義の進化として社会主義、そして最終的に共産主義になるという考えです。

そのため、真の共産主義者が共産主義の夢を諦めることはありません。

ソ連にしてもあれは失敗ではないのです。「時ではなかった」と一言で彼らは片付けてしまします。

彼らは「失敗」を「失敗」とは捉えないのです。この歴史観である限り共産主義がこの世からなくなることはありません。

もしなくなることがあるとしたらそれは共産主義者がいなくなり、共産主義が忘れ去られることです。

しかし、それはできないでしょう。なぜならマルクスの書いた「資本論」は未だに世界中で読まれている本だからです。

故に共産主義が世界中の市民の記憶から失われることはありません。ゆえに共産主義というイデオロギー自体は不滅なのです。

・今さら共産主義革命は可能なのか

 日本共産党は結党100年を迎えるわけですが、未だに共産主義が日本に達成される気配はないです。

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むしろ自民党政権下で社会主義(=福祉国家)が進んでいます。ですが共産党は政権を取ることを諦めていません。

それは2021年10月の衆議院選挙でも明らかです。共産党は野党共闘ということで立憲民主党と閣外協力を約束するなどして、選挙協力もしました。

しかし、結果は出ず共産党は成功を訴えましたが、立憲民主党は結果責任ということで枝野代表が辞任。新代表選挙を経て泉新代表が誕生しました。

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泉新代表は共産党との連携の見直しを行う旨を明確にしています。ですが共産党は立憲民主党との連携を諦める気はありません。

 では共産党はいかにして政権を取り共産主義社会の達成を目指すのでしょうか。日本共産党は「二段革命論」という手法を提唱しています。

これはまずは選挙で勝ち(一度目)、そして共産主義社会に変革する(二度目)というものです。

要は暴力に頼らないだけなのですが、それでは資本主義社会の打倒には到りません。

共産主義者も成功のために純粋な共産主義理論の流布よりも内容を薄めたエッセンスを各地に混ぜ込んでいるのが現状です。

では現在の共産主義者はどのような手法で資本主義を打倒するのでしょうか。

 そうなると方法は2つです。

まずは「資本主義の外からの打倒=暴力革命」です。どういうことかというと資本主義を容認している存在は基本的に打倒するということです。

政府、会社などあらゆる組織による秩序の破壊です。そしてそれは無秩序なんです。

ですがこれは福祉国家、社会民主主義が進んでいる現在の日本では難しいでしょう。

また、事実日本で最も社会運動が激化した60年代でさえ、大きな暴動とは至りませんでした。さらに言えば日本では暴力的な政治活動が支持を受けないのは歴史を見れば明らかです。

 では、どうするのか。先ほど挙げたアルチュセールはそれについても触れています。

「基本的に資本主義体制の国家に承認されて活動してる社会主義・共産主義政党は資本主義の犬である」という前提を置いたうえで、唯一の方法を説きます。

1.「共産主義政党が政権を取ります」

2.「資本主義政党が二度と政権を取れないようにします」
=要は政党の解散などです。

3.「憲法の改正です」
=共産主義者にとって資本主義社会の中で作られた憲法は資本主義の一部とみなします。ですので憲法の改正をして共産主義社会に合う憲法の制定を行います。

こうして国家構造を共産主義に変え、政治を全て共産主義者が担うことで、結果として共産主義社会をデザインするのです。

ですけど、いきなり共産主義に移行することは不可能なので、共産主義社会をデザインしきるまでは共産党による一党独裁を行い資本主義に戻らないとうに監視し、共産主義社会を達成するのです。

この手法はヒトラーなんかにも見られた手法ですが、基本的に自由はそこにはありません。

 ここまで読んでくれている読者の方ならわかるかもしれませんが、果たして共産主義は方法論まで含めて実現可能でしょうか?

私の考えでは不可能だと思います。さらにここから私は共産主義は基本的には終わってる理想だと考えます。

結党100年の彼らの目指すものとそこに至るまでの手法、全てが支持されるほどのものではないということです。

 ですけれども、彼らは先ほども書きましたが理想を諦めてないですし、夢を未だに見ています。

ゆえに彼らはその最終的な目標と過程における弾圧を隠していいところだけを見せて支持を得ようと画策するのです。

今更共産主義革命を純粋に行うことは不可能ですが、彼らがうまくその本性を隠して支持を得ようという作戦が成功すると、徐々に支持自体が広がる可能性が常にあります。

そしてまた共産主義は不滅に近い存在ですので永遠に戦い続けなければならないものなのです。

・まとめ

 やはり再び考え直しても共産党の悲願である共産主義社会を達成するための革命は極めて難しいことです。

しかし、彼らは未だその悲願を諦めていませんし、過去には共産党の作戦によって共産党に政権を奪われ悲惨な経験をした国家も数多く(特に東欧諸国)ありました。

永遠に戦い続けなければならないこの思想闘争であるがゆえに常に注意しなければなりません。

 彼らの支持の増加を防ぐためには安定した経済状況と社会状況を維持し、自由の精神を守り続けることが重要です。そのためには政治の腐敗の是正や健全な議会状況・政治環境をつくることが重要です。

 新年、我ながら妙なものを書いてるなんて思いましたが、最近アルチュセールを読んで共産主義理論の理解が多少深まったうえで感じたことをまとめました。

 7月には参議院議員選挙がありますけど、岸田政権にも日本政治にも不安が絶えません。第三勢力がより成長することを望みます。今年一年、明るい年でありますように。

Thank you for reading

Hopefully tomorrow will be better than today.

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