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新温泉町の子育て環境に関する調査結果の分析(2022年)

兵庫県北部にある新温泉町で町会議員をしております。
本町は人口13,000人程度の町で、ご多分に漏れず少子化対策に向けて様々な取組を行っているところであります。

既存こども園の老朽化から建替議論がされていることもあり、子育て環境にどう向き合っていくかが町民にとっての大きな関心となっています。
そこで新温泉町の子育て環境(主にこども園関係)について、町民のみなさまがどのような想いを持っているのかを定性的、定量的に明らかにすべくアンケートを行いました。
今回の調査は3議員連名で行い、2022年1月9日〜2月3日の期間で226人の回答を得ました。

【アンケート内容(A4両面程度)】
・回答者属性について
・現在の子育て環境について
  ー園舎、立地などに関する満足度およびその理由等
・将来の子育て環境について
  ーこども園で重視したい項目、望ましいもの、統合についての意見等

本記事では公開している調査結果の資料をもとに分析を公開し、岡坂遼太個人の議員活動の方向性を示すものとします。
ご質問やご意見等ありましたら以下の問合せフォームからご連絡ください。氏名欄はありますが匿名でお送りいただいて構いません。

[ お問合せフォーム ]

※調査結果資料は全30ページと量が多いため、ページを絞って掲載します。

調査概要(回答者属性等について)

子育て世代147人を含む226人の回答はボリューム感としては参考たりうるものだと思います。アンケートの中心としていた浜坂・大庭で約8割を占めていますが、これも調査の主旨としてはありがたいです。

回答方法がウェブフォームを中心としておりましたので、高齢の方から「親切でない」とご意見をいただきました。結果的に、ウェブフォーム中心の回収は集計しやすく、回答者の年齢層のバランスも求めるものとなったため悪くなかったかと思います。
今後、人口分布に沿った回答割合を必要とする調査を行う際には回答方法を改善いたします。

現在の子育て環境について

現在の子育て環境についての設問では、特定の園を指定せず、また利用したことのある園等の記入欄も設けませんでした。そのため、回答者から「どの園について答えればよいのかわからない」とご意見をいただきました。
集計にあたっては住所で区分を分けておりますが、大庭に住んでいる方が必ずしも大庭認定こども園に通っているわけではないので、きれいではないデータとなっています。

園舎の設問に限らず、温泉(子育て)は満足度が高く、それ以外はそこそこである傾向が出ました。平成17年建設の温泉(ゆめっこ認定こども園)の利用者は比較的新しい園に満足しているようです。
一方で、浜坂大庭ともに老朽化に不安を持たれていることが明らかになりました。子育て世代からは「綺麗に保たれている」とのコメントがありながら、子育て世代でない回答者から老朽化についてコメントが多数あることから、「古い」というイメージが浜坂大庭には浸透しているようです。
また、老朽化=耐震性の不安に強くつながっております。耐力度調査の結果、危険建物と認定されてもそれは老朽化の評価であり、即座に危険であることを示す指標ではありませんのでこの不安を拭うことも大切だと感じました。


現在の子育て環境に関する自由記述欄では、大変多くのご意見をいただきました。
意見集約にあたり「サポート体制、支援制度」「保護者が働きやすい環境」「0歳児保育」「保育士」「小中高について」「その他」の6カテゴリに分けて掲載しました。
ハッピーベビーチケットや図書館事業などありがたい支援制度がある一方で、働く親を支援する体制が整っていないことに対する不満が色濃く出ていました。

将来の子育て環境について

今後の子育て環境を整備するにあたり、行政側で直接配慮できる可能性のある点について調べました。「ハード面・ソフト面で重視したいこと」「周辺環境で望ましい・望ましくないこと」「適正規模・適正配置」について回答いただきました。

将来の子育て環境について(ハード面・ソフト面)

こども園において重視したい項目(ハード面)は最大4つ複数選択できる設問で、回答選択数の合計は746件でした。
回答数が多かったのは「災害に強い立地(69%)」「駐車場(59.7%)」「快適な空調設備(39.8%)」「園庭の広さ(35.8%)」でした。
割合は選択数を回答者数で除して算出しています。

現在の子育て環境についてのコメントと比較して考察すると、災害については近年の災害への不安感や浜坂現在地への不安感から来ているものかと推測されます。駐車場についても浜坂・大庭は現在の不満が強いため高くなっています。上から4番目の園庭の広さは、現在の広さに満足している方も多数見られるため、35.8%に留まったようです。

子育て世代と非子育て世代の意見の違いを検討してみます。回答者の割合から2:1が均等ラインになります。
「園内の大型遊具」「ICT活用」は子育て世代からの支持が強いようです。一方で「建設費用抑制」は非子育て世代からの支持が強くなっています。非子育て世代の財政視点は、統合の欄でも強く出ておりますので、後で改めて言及します。

続いてソフト面。
761件の回答選択がありました。
多かったのは「延長保育55.3%」「通園バスがある46.5%」「0歳児保育41.6%」「防犯対策39.4%」でした。

上位3つはいずれも保護者が働きやすい保育体制に関わるものでした。5,6番目には「夜間・休日保育31.4%」と「病児病後保育30.1%」が続くことから、保護者が安心して働ける環境構築へのニーズの高さが伺えます
本調査の回答者は浜坂・大庭が中心でしたので、観光業への就業者が多い温泉地域の回答者が増えれば夜間・休日の保育の回答数も増えるかもしれません。

世代間比較では、「夜間・休日保育」「病児病後保育」「オルタナティブ教育」は子育て世代の支持が強いことがわかります。
非子育て世代で特徴的なのは「高齢者との交流」です。
また、延長保育や通園バスの項目も非子育て世代の比率が高いです。延長保育が高い理由は、孫を持つ方々も労働をしており、3世代同居でも送迎のやりくりをしているからかなと予想します。通園バスの理由は、高齢になると運転(送迎)が億劫になることから挙げられているのではないかと考えられます。

ハード面、ソフト面でどちらを重視するかの設問では、子育て世代・非子育て世代ともにソフト面を重視することがわかりました。
ソフト面を重視する層は非子育て世代8.9%に対し、子育て世代は21.1%もあり、保護者が働きやすい環境を強く求めていることが見てとれます。

現在のこども園の施設利用状況では、0歳児保育を行うスペースがないため、ソフト面を強化するうえで最低限のハード面強化が必要であることが課題と言えます。

将来の子育て環境について(周辺環境)

周辺環境として「望ましいもの」と「望ましくないもの」をそれぞれ最大3つ回答していただきました。
望ましいものの総回答選択数は519件、望ましくないものは369件でした。望ましくないものはないという回答が多かったのが意外でした。

選択肢以外の回答で「交通量の多い道路、危ない道路」のコメントが多く、これは現在の子育て環境のコメントでも多く見られたご意見だったので、選択肢として挙げていればさらに多くの選択があったものと思われます。

望ましいものの回答から望ましくないものの回答を差し引いた結果がこちらの図です。
安全性を重視していることがわかります。

世代間のギャップはほぼなく、子育て世代が「駅・バス停」を望んでいないことがわずかに現れている程度でした。

将来の子育て環境について(適正規模・適正配置)

少子化が進む新温泉町において、統合は議論すべきテーマです。
児童福祉法では4,5歳児は概ね30人に保育士1人を配置しなければいけないと定められています。自治体により、下限の人数を定めていることがあるため、本町においてどのように考えられているのか調査しました。

7〜10人が最も多く、7〜15人で70%以上をカバーしていることから単クラスでの適正人数下限は10人程度が望まれていることが明らかになりました。少子化の進行状況や職員の配置等を考慮する必要がありますので、必ずしもこの調査結果が総合的にみて適当とは言えませんが、参考になる数字だと考えます。

約半数が「適性最少人数を下回る前に統合すべき」又は「適正人数に関わらず数年以内程度に統合すべき」と回答しており、統合について容認の姿勢であることがわかりました。
「適性最少人数を下回ってから統合すべき」の回答者は、なるべく統合してほしくない想いの方と下回るようならしっかり統合した方が良いという、大別して2つの考え方がありました。回答選択肢としては「どちらとも言えない」に近いものとして選ばれている印象です。
また、複雑な問題なので「わからない」の17.3%もしっかりと心情を考慮すべきです。コメントをみる限り、思考放棄のわからないを選択しているのではなく、さまざまな考えがある上での選択であるようです。主には「統合した場合の対応の最善策がわからない」「どちらとも言えない」「現状判断できない」「この調査で統合についての設問があることが意味不明」といったご意見がありました。

上図は適正人数の最少人数と統合についての回答のクロス集計です。適性最少人数を多く設定している人ほど統合に容認的であることがわかります。逆に言えば、統合反対の考えを持つ人は少人数保育に容認的な傾向です。
「統合すべきでない」の回答理由を見ると、地域活性化や保護者の負担増大防止が多いですが、「統合=財政面だけ考えている」という視点もありました。

一方で、統合賛成側の意見を見ると、財政面だけ考えているのではなく、集団生活による園児の発達などを考慮していることが伺えます。
ただし、統合すべきの回答が最も多い非子育て世代においては特に財政面を気にしている回答が多かったです。

少子化にあり将来増える見込みがないことは住民も重々承知しており、そのうえで一人ひとりがこの町の現状に向き合っていることがわかりました。

保育士、職員数についてコメントもあるので整理します。
統合により雇用が減るという声がありますが、他方では非正規職員や無資格職員の増加、なり手不足への不安視があります。またソフト面の充実を増やす上で、職員配置に余裕を持たせたい考えもあるようです。

将来の子育て環境について(自由記述)

最後に将来の子育て環境について自由記述していただきました。
カテゴリは「保護者が働きやすい環境」「0歳児保育」「子育てしやすい町」「安心安全を第一に」「保育士」「相談窓口」「新たな教育」「こども園建設場所」「小学校統合」「体験の充実」「雨天時の遊び場」「まちづくり」「その他」に分けました。

まとめ

本調査ではポスティングを中心に配布し、匿名で回答いただいているため回答者の顔は見えません。しかしながら、しっかりと書いていただいたコメントそして200以上の回答から示されたデータは、これまで本町にはなかったもので大変参考になるものであると考えます。

地方では特に人の結びつきが強く、政治の場でも人の顔がわかる意見が民意として表現されることがあります。そのため、先に自分の耳に入った意見が優先されがちであると私は懸念しています。

本調査について町で声をかけれらることがありました。
地区の集まりで正直な声を挙げようと思っても、その意見が原因で非難されてしまうかもしれない。必要なことだと思っていても、顔が見えるとなかなか声を出せない。このアンケートは匿名だからそういう意見も吸い上げてくれてありがたい、と。


さいごに。
本調査にご回答、シェアなどご協力いただきました皆さま大変ありがとうございました。今後の議員活動の参考にさせていただきます。

できれば回答いただいた方全てにこのブログを回覧したいところではございますが、匿名のためそうもいきません。
シェア等していただけると幸いです。

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