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演劇と但馬地域。豊岡市長選を経て

4月25日、豊岡市長選。
4期務める現職・中貝氏と新人・関貫氏の一騎打ち。
前回は無投票当選でしたので8年ぶりの選挙です。
結果、関貫氏が新市長になる運びに。
得票数は21,526票対19,591票。ギリギリの戦い。

争点となったのは「演劇のまち」

近年の豊岡市の躍進は明らかで、演劇の推進で全国的に関心が高まっていました。
私は但馬地域(豊岡市、養父市、朝来市、香美町、新温泉町)の移住相談員をしており、この2年で「豊岡市への移住を考えている」という声がグッと増えてきていたのを実感していました。
豊岡市の基本構想「小さな世界都市 ー Local & Global City ー」に則って、演劇に限らずジェンダーギャップ解消の推進やコウノトリ共生の取り組みなどが注目を集めた結果だと思います。

そのような成果が出ていながら、なぜ市民の理解を得られなかったのか。
その辺も少し触れながら、但馬地域は今後どのように演劇と関わっていくべきか考えたいと思います。

ちなみに私は新温泉町在住なので外野です。


演劇と豊岡市

但馬地域との関わりの前に少し整理します。

移住検討者の声が増えた要因の一つに平田オリザ氏の存在が挙げられます。
平田氏の最近の著書には豊岡市の取り組みがよく紹介されており、「平田オリザさんの本を読んで豊岡市に興味を持ちました」との声も多い印象があります。特に「下り坂をそろそろと下る」の影響が大きいですね。

豊岡市内には演劇の拠点が複数できました。
豊岡市北部の城崎アートセンター(KIAC)はアーティスト・イン・レジデンスの拠点として、世界中の劇団が滞在して作品制作をしています。南部の日高では、江原河畔劇場がオープンし、平田氏が主宰を務める青年団の劇団員が東京から移住。また、昨年は第一回豊岡演劇祭が開催されました。平田氏曰く、「近年中に世界的な演劇祭にする」とのことです。

そして、平田氏が学長を務めることになった「県立芸術文化観光専門職大学」の誘致。
国の新しい取り組みである専門職大学であり、国公立ではじめて演劇が扱われるとあって話題になりました。今年4月に1期生を迎え、これから地域と交わっていくところです。

と、このように豊岡市は芸術文化政策にかなり力を入れています。
2015年に平田氏が豊岡市文化政策担当参与に就任してから加速した動きですので、いくら市民に説明しても説明が追いつかないのは仕方のないことなのかなと思われます。市民がメリットを直接享受できるのであれば納得いくでしょうが、芸術はそのあたり説明しづらいですからね。。特に演劇はお金になりづらいので、還元が遅いように思います。


演劇と但馬地域

さて、ここからが本題です。
平田氏の個人的な活動や青年団はともかく、専門職大学は兵庫県立であり、但馬地域で支えるものです。

この大学の特徴はクォーター制。夏休みと冬休みに、但馬各地の観光地にインターンで派遣され、大学で学んだ理論等を学外で実践します。
旅館でバイトするのか、各地のホールで演劇するのかは不明ですが、関わり方を作るのが豊岡を除く4市町の腕の見せどころ。

正直、昨年までは大学の全貌が見えていなかったことと中貝氏&平田氏タッグが強固なことから4市町は演劇に関わりきれていなかったように見えます。
豊岡市:4市町=9:1くらいのバランスだったんじゃないですかね

今回の市長交代で空気感が変わりますので、4市町は大学や地域にどんどん提案して受け皿になってもらってもらいたいところ。

大学生は豊岡市長選で豊岡市の雲行きが怪しくなったことを不安に感じているでしょう。
でも、但馬地域は大学を見捨ててなんかいないのだと知ってほしい。
地域はあなた達に期待しているのだと。
だから、多くの市民、行政担当者、民間企業が大学に足を運び、学生や講師・教授と繋がりをつくってほしい。学生もどうように街に出て、街の人と触れ合ってほしい。

養父市は昨年度から演劇手法を取り入れたコミュニケーション教育を導入していますし、香美町は今年度から大学担当の職員を配置しています。新温泉町は湯村温泉にあるホールをリニューアルしました。朝来市は元々芸術に理解がある方なので力を貸してくれるでしょう!

はじまった専門職大学。
フルに活かしましょう!

新市長になり、豊岡市としては多少お金の出が悪くなるでしょう。
しかし、4市町は大学に関わりやすくなったくらいだと思います(多分)
但馬地域全体で見れば、パワーバランスの安定は持続的な大学運営にとって良い方向に動く可能性が大いにあります。
但馬地域で支えましょう。


演劇が悪いわけではない

さいごに。
マニフェスト等を見る限り新市長は演劇全否定なわけではないようです。
ここのところ豊岡市の最優先事項が「演劇」に見えていたために、矛先が演劇に向かっただけなのです。
演劇に数億円支出するのに、子供の医療費は無料じゃない、住民税が全国トップクラスといったあたりが住民感情と合わなかった点でしょう。さらに、どの議論においても平田氏の名前が出るのも辛いものがあるように思われます。
外から見たキラキラした豊岡とは裏腹に、住民の暮らしの細かな部分でほころびが生じていたのだと思います。

また、日本自体が芸術文化の理解に乏しく、芸術文化政策に市民の理解を得るのはそもそもハードルが高いことなのです。
4期続いた長期政権の中で、前回は無投票当選。この6,7年で一気に勧められた芸術文化政策。今の豊岡市の姿まで進められたのは本当にすごいことです。
ビジョンを語ることで理解を促す中貝氏の戦略。僕はとても優秀だと思います。
一方で、やっぱり直接的な利益が十分に還元されていなかったことが敗因になったのかな
コロナによって観光業が苦しみ、市民の心にも余裕がなくなっていたことも背景にあるかと思います。

コロナによる経済の打撃は数年で落ち着きます。
日本の、世界の観光が動き出したときに「但馬に行きたいね。演劇見て美味い飯食べたいね。」と言われるように、今のうちに醸しておきましょう。
専門職大学の学生の笑顔が、但馬の観光を盛り上げると僕は信じてます。


外野が長々とすみません。
僕は芸術が好きなので、演劇が媒介となりコンテンツがつながっていく豊岡市を羨ましく思っています。
応援してます。
学生のみなさんもせっかく来た但馬を存分に楽しんでくださいね
新温泉町なら案内できます。

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