難病になって気づいたこと

「人生は不公平だ」

高校3年生、秋。病室のベットに横たわりながらそんなことを感じ、ひとり、涙したことは一生忘れないかもしれません。

小さい頃から夢はパイロットになることでした。飛行機がかっこよくて、ビシッとした制服を着た機長もかっこよくて。空港の展望台から飛行機を眺めるのが大好きな少年でした。乗らないのに、飛行機を見に行ったり。でもそれがすごく楽しくて。パイロットになって世界中を飛び回ってたくさんの人を笑顔にしたい。幼い頃からの夢でした。でも、その夢に挑戦する権利すらないことを、高3の秋に知りました。  

難病を患っているせいです。国が指定した130個の難病のうちの1つです。原因はまだ解明されておらず、適切な治療法もはっきりとはわかっていません。今の医療では一生治らないとされています。

闘病10年を超え、今までたくさん入院したし、手術もしました。みんなには見えない部分で辛い思いをたくさんしました。生活に支障が出る部分もみんなからは見えないようにカバーしてきたつもりです。それでも、また、入院しています。悔しいことに、またしても病気に負けました。何度入院しても慣れないし、病室の居心地はいいものではありません。肉体的にも精神的にも不自由な4畳半です。

健康な人は自分が健康であることに幸せを感じることがすごく難しいと思います。なぜなら健康でない苦しみを本当の意味で味わったことがないからです。誰かが適当に生きた今日は、誰かが死ぬ気で生きたかった明日かもしれません。

人はいつだって無い物ねだりです。あの人かっこいいなとかあの人頭いいなとか、自分に足りない能力を持つ相手を羨ましがり、つい盲目になる生き物です。だから、今ある幸せには気付きにくいものです。

健康であることは健康な人からすればなんてことありません。それが当たり前で、それが普通です。しかし難病患者からすれば、その普通が欲しくて、欲しくて、でも一生手に入りません。正直に言えば難病になってから、普通である感覚を忘れました。生活していても常に病気のことを無意識に考え、選択するようになりました。



病院はとても人間臭い施設です。いろんな人がいろんな悩みを抱えてやってきます。何十万人に1人の病気を患っている人もいます。幼くして、髪の毛も全て抜け落ちながら、一日一日を小さな体で必死に生きている子供もいます。一年のほとんどを病室で過ごす少年とも出会いました。京大と金大と筑波に医学部の友達がいるのでステキなお医者さんになってほしいです。おこがましいお願いですが。

パイロットがダメだとわかった今もなお、国境を越えて海外で活躍するのが夢です。海外でバリバリ働きたいのに、体調がそうはさせてくれない不自由な体を持つ一方で、多くの人は海外には全く興味もなく、国内で一生過ごすでしょう。人生は不公平です。健康な体をわけてほしいです。でも不可能です。海外が好きになったことを後悔したこともありません。だからできる範囲で夢を模索しようと思います。

よくテレビでは重い病気を患いながらも、めちゃくちゃ明るい子が出てきます。24時間テレビとかが典型例です。いろんな病院の病棟で入院してきましたが、あそこまで明るく振る舞えるのは、ごく一部のスーパーマンです。

だから自分は自分のペースで、これからも病気と向き合い続けたいと思います。

しばらく入院します。退院したらまた遊んでください。

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