おから
名前を呼ばれると、またもあの部屋へ誘導された。 今日2度目になる内診台。 先ほどまで赤ちゃんが写っていた画面にはもう何も映らなくなっていた。 私の中身が空っぽになったという現実を痛いほど突き付けられた。 子宮内は特に問題も無く、無事に手術が終わったことを伝えられ診察室を後にした。 その後待合室でまた別の助産師さんが薬を持ってきてくれた。 続けて小さな声で薬の説明をしてくれた。 「抗生物質と子宮収縮剤とそれに伴う痛みを軽減する鎮痛剤ね」 この時、隣のソファに座っていた妊婦さん
私は夢を見ていた。 娘と遊んでいてたくさん笑い合う夢。 日常の中で感じる些細な幸せをかき集めたような夢だった。 「...気づきましたか?大丈夫ですか?」 肩を叩かれてぼんやり目を開けた。 「あぁ、そっかここか、、、」と天井に映る映像を見て現実に戻ってきたことを理解した。 もう少し幸せな夢を見ていたかった。 まだ意識が朦朧とする中で医師が口を開いた。 「無事に終わりましたよ。」 その一言で、本当に終わったんだとわかってまたすぐ涙が出てきた。 私の短い妊婦生活は終わった。 その
その後30分ほど経つとまた別の助産師さんに呼ばれ、手術室に移動することを伝えられた。 懐かしい光景だった。 手術室へ向かう途中、娘を出産した際に入院していた部屋の前を通った。 何度も通った新生児室の脇を通りその奥へ入った。 1年前、娘を出産した分娩室の隣で、今日は赤ちゃんとサヨナラをする。 別れを覚悟した。 指示通り着替えてベッドに仰向けに寝た。 天井にはプロジェクターで海の映像が映し出され、不思議とリラックスのできる神秘的なBGMも流れていた。 ぼんやりと色鮮やかな魚たち
手術当日。 午前中に新居リフォームの進捗状況を確認する予定があり、久しぶりに家族で出掛けた。3ヶ月ぶりくらいな気がする。 自分たちの理想通りにリフォームが施された新居を見れたこと、久しぶりに外食をしたこと(私は手術直前の為何も食べれず)、手術までの時間を潰すためお気に入りのショップを見て回ったこと、久しぶりに休日らしい休日を過ごし本当に楽しかった。 今思えば、これが家族4人で過ごした最後の時間だったと思うと幸せだったかもしれない。 有意義な時間を過ごした後、4人で産院へ向か
待ちに待った2週間ぶりの妊婦検診。 表紙に名前だけが記入された新品の母子手帳と、まだ1枚も切られていない補助券を受付で渡し、名前が呼ばれるのを待っていた。 私が第一子を妊娠した頃から通っている産院は雑誌で特集される程評判の良い人気の産院で、1〜2時間待つのは通常、混雑時はさらに時間がかかることもあった。 産科を専門にしているというのも人気の理由で、常に20人前後の妊婦さんが待合室に待っていた。 今日も長くなるんだろうなぁ〜とのんびりスマホでゲームをしながら適当に時間を潰してい
私たちの家族計画では第二子は年子を希望していた。 理由は夫の年齢と母の経験から。 夫は第一子を迎えた時点で38歳、3人で誕生日を迎えて今は39歳。 なるべく少しでも若いパパでいたいという理想と、現役でいられる間に子供の成人を迎えたいという現実的な理由。 母の経験というのは、私が産まれた際に2つ上の姉が相当なヤキモチを妬いたというもの。 同時に姉の赤ちゃん返りにも悩まされたらしい。 私の世話で母の心には余裕がなく、姉に対し怒ってしまうこともあったという。 それもそのはず、2年半