ふたりぼっちの末路
1×1は1。
だから、二人でいても、一人だった。
ふたりぼっちの世界では、一つの空を共有していた。
でも1+1は2。
それぞれの空を持った瞬間、画面共有が解かれた。
好きにマウスポインタを動かすことができる。
広い空へはばたくことができる。
窮屈だった場所から飛び出して、駆け出す。
それぞれがそれぞれのまま。
一方は帰ってくる。一方は帰らない。
帰ってきたほうは待ちぼうけ。
「誰を待ってるの?もう、自由なのに。」
共有されていたものはすべて真っ黒に塗りつぶした。
一方通行であることの辛さを思い知った。
言葉に出しても、きっと何一つ響きやしない。
空が広がったことがうれしかった。たくさん飛んで、どこまでもいけるように見せたかった。
「だれに?」
おんなじ空を見ていたひと…?
あれ、誰だっけ?
「いつも通り」な君に何も聞けなかった自分が悔しかった。
「ぎこちない笑顔」に気づかないふりをした自分を少し薄情だと思った。
隣が自分のものだと言い張る気はないけれど、
隣にいたい人は自分で決めるけど、
ふとした瞬間に思い出させるのはやめてほしいよ。
ふとした瞬間に思い出してしまうのはどうしてなのかわからない。
ふたりぼっちだったあの頃に二度と戻ることはない。
記憶は消えなくても、人は忘れ行くから。
「縛られるものがなくなった」ふたりぼっちは、ひとりとひとりになる。
依存すらできず、恋にもならず、執着めいたものすら抱くことができず。
見ていた空の、もろさに気が付く。
より繊細なほうが痛手を負うだけ。