上っ面に針
パァン、と破裂した水風船みたい、その下にはそれぞれ、隠した顔があるってさ。
非常事態が長く続けば続くほど、破裂してゆく水風船。生温い水がポタポタ落ちて、水滴辿ればあんたへたどり着く。
「自分だけは大丈夫だって思ってた?」
「ちっとも変わってない。強いて言うなら、騙すのが少し上手くなっただけ。」
「いつまでも、自分だけが主人公のつもり?」
だからあなた、嫌いなの。底が浅いからって、クスクス笑う、私だってあんたは嫌いだ。
何もかもわかったフリして、全部を打ち消していくあんたが嫌いだよ。
結局裏切られるのが怖いだけの臆病者なら、私と同じなのに。
「でも私の言うことは当たるわ、あなたもどこかでそれを感じているから、奥底まで傷付かずに済んでるはずよ。」
勘違いしているようだから言うわね、とあんたは私を諭すように、でも確実に刺すように畳みかけてくる。ミツバチじゃない、スズメバチだ。毒性を持つ、強い針が確実に食い込んでくる。
「裏切るな、って理想押しつけて、それからはみ出たら裏切りだって、虚像に理想押し付けるのがどれだけバカバカしいことか、わかるでしょ。」
「それこそ、ソーシャルディスタンスじゃないの?今までだってアクリル板を隔てて人の声聴いてたようなもんじゃない。基本は自分の声しか聞こえないのをうまく使って、都合よく繋ぎ合わせていたんでしょ?」
「わたしは、そんなあなたの、犠牲者。裏切りが怖いなら、刺し違えても構わないわよ。」
あんたは私を裏切ったじゃない…
あなたが私を裏切ったのよ、
ああいえばこう言う、追い詰めてくるあんたは、私が泣いてもやめはしない。
不甲斐なさに泣けばいいわ、私が全力で全てを打ち消してあげる、
と、微笑むあんたは、まさに女王蜂のようだ。
上っ面に針、割れた風船の跡を辿れば、泣きっ面に蜂な展開。
自分という、誰かと、対面。
私はいったい、どこにいる。