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「デフレ」の沼に落ちた中国。

 7月中国CPI(年率) ▼0.3% 予想 ▼0.4% 前月 0%

 遂にCPIがマイナス圏に突入して「デフレ」の沼に落ちた中国。不良債権問題の深刻さが徐々に明らかになってきた

 恒大集団(エバーグランデ・グループ)の債務総額は約2.4兆元 ≓ 47兆円と伝えられ、債務超過に転落。投資銀行と不動産会社の違いはあれど、破綻したリーマンブラザーズの負債総額が約64兆円日本でもそうだが保有不動産を競売で「損切り」すれば「半値八掛け二割引」で評価額の3分の1になるのが相場。実態はもっと悪いはずだ。

 緑地控股のドル建債(表面利率6.75%)はデフォルト、政府系の遠洋集団控股は8/2満期の人民元建債を今後1年かけ分割で償還することを提案。他にもドル建債の支払いを控えた大連万達集団や瑞安房地産も資金不足となる可能性が高まっており、不動産会社のドル建債が急落(金利は急上昇)。苦境に陥る不動産会社は枚挙に暇がない。 

 「邦銀の不良債権額は100兆円」

 日本の「バブル崩壊」時、米投資銀行やいわゆる ”ハゲタカ” に指摘されて慌てふためいた政府が必死に否定していた事を想い出す。その後訪れる「失われた30年」を考慮すれば案外 "いい線" だったのだろう。

 今の中国を見ているとどうしてもこの事が思い浮かぶ。おそらく金額は少なく見積もっても日本の倍以上「バブル」研究に余念が無く、ここ数年必死に不動産投資を抑制しようと「利上げ」したり規制したりしたが、人の欲望には歯止めがかけられない。政治体制の違いこそあれ、その辺の国民性は日本と似ているのかもしれない。

 既に10数年前から中国の住宅セクターにおける過剰投資は危険視されていた。あり余った住宅は2割以上が空室「鬼城」(ゴーストタウン)という中国語も流行った。中国の不動産投資はGDPの14%を占め、土木建設業関連分野を含めると約30%にもなる。問題はかなり深刻。

 中国では全てが国有である建前上、デフォルト(倒産)という概念がない。しかしこれも考えようによっては銀行を潰さないように「公的資金」で救済し、問題を先延ばしにした日本のやり方と酷似する。まあ日本も「理想の社会主義国家」などと揶揄されているから、実態は一党独裁の隣国とあまり変わらないのかもしれない。

 さてこうなると問題になるのが 世界経済は奇妙な "股割き" 状態。ー 日本は "ゴルディロックス" ?|損切丸 (note.com) 日本は「勝ち組」なのか、「負け組」なのか?

 「中国に "インフラ" が出来ちゃってるから撤退は無理」

 中国工場で生産しているメーカーに勤めている同級生からこう告げられた事がある。これが企業現場の偽らざるところベトナムや東南アジアに移せばいいなどと簡単に言うが「熟練労働者」も含め10年以上かけて中国に構築してきた "インフラ" を他国に移すのは容易ではない製品レベルの維持には膨大な時間と「お金」が必要だ。

 とはいえ「米中対立」の鮮明化からここ5年間で「脱・中国」を推し進めてきたのも事実。「円安」効果もあって半導体生産等の日本移転も進み、ある意味巻き返すチャンス「お金」のかけ方は足りないが、政府も支援姿勢を示しているし、日銀が「金融緩和」を続ける "裏の狙い" はここにある。

 はたして日本の「脱・中国」は上手く行くのか

 欧米に寄り過ぎるのもリスクはあるエネルギー価格高騰の影響をモロに喰らったドイツは明らかに景気が悪いし、フランスと共に中国に擦り寄っているのも何だか日本が抜けた穴を狙っているようで気持ち悪い。まあこの辺りは、過去に何度も苦汁を嘗めさせられた日本経済のトップは十分理解しているだろう。米経済の行方も気掛かりだ。

 東欧の「戦争」も気掛かり。 "プロパガンダ" も含め "識者" やコメンテーターなる人達が勝手なことを色々述べているが、筆者はどれも信用していない。追っているのは:

 ①ロシア、中国の10年国債金利
 ②ルーブル、人民元の対ドルレート
 ③モスクワ、中国の株価

 「お金・数字は嘘をつかない」

 中国が「人民元」を通じてロシアを支援しているのは事実だし、e.g., 日本のサハリンガスの権益金を人民元で支払い①10年国債金利が@11.6%まで急上昇しているロシアで「お金」が足りないのは明白中国国債金利が上がらないのは「デフレ」に加え足りないのが「人民元」ではなく「ドル」だから。*②「ルーブル安」「人民元安」も同列だ。

 *「円安」と比較する向きがあるが、一種の "プロパガンダ" 。輸出競争力を強化できる日本と違い、向こう側の2国はこちら側と切り離されている。歴史用語でいえば「ブロック経済」この状況の「通貨安」は「お金」が足りない事を端的に示している。だから国債の「実質金利」が高い。いつの日も「戦争」の引金が「お金」なのは歴史が証明している。

 本来「戦争」の支援をする余裕などないはずの独裁国家。本当に「お金」に窮したらどうなるのか。日本としても様々なリスクを想定しておくべき。これは国レベルの話だけでなく個人も「投資」リスクとして良く見ておく必要がある。「灰色のサイ」「黒い白鳥」は忘れた頃に現れる。



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