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嘘はいかん、嘘は。ー またも日本の十八番 ”先送り戦略” 。

 「昨今、世界的な資源価格の高騰等を背景とした燃料価格の高止まりが続いており、当社の電力調達価格においても大きな影響が生じております」

 皆さんのお手元にも届いただろうか?

 2023年8月からの「電気料金見直し(=値上げ)のお知らせ」である。覚悟はしていたがこれは酷い。百歩譲ってこれも「インフレ」の一環と諦めるとしても、「お知らせ」冒頭の ”言い訳” に腹が立つ

 嘘はいかん、嘘は

 本当の所は:

 「1バレル=@120ドル超まで上げた原油価格も昨今WTIで@70ドルを切るなど落ち着いてきており、一時@150円を超えた "円安" も@140円近辺まで戻っています。しかしながら、①ロシアの天然ガス等、我が国のエネルギー調達戦略の失敗、に加え②人手不足による人件費の高騰、により、今回電力料金の見直し(=値上げ)を決定するに至りました」

 こんな所だろう。

 処理水等々、嵩む原発事故の処理コストも回収したいのだろうが、本来エネルギー戦略の失敗を認め消費者に頭を下げてお願いするのが筋。ところが謝るどころかこの「値上げ」をテコに「原発再稼働」に持っていきたいという霞ヶ関の思惑も見え隠れする。いやはや「利権」は恐ろしい。突っ込み所満載のこの事案に手を突っ込まないところを見ると、所詮野党も与党と ”同じ穴の狢” 。日本人も舐められたものである。

 昨年戦争の影響でイタリアやイギリスで電気料金が月8~10万円に急騰して大変、という記事を見て「日本はまだマシ」と勘違いした方もいたかもしれない。だが実態は*「補助金」などで見た目の「値上げ」を抑え付け、ヨーロッパの現状に1年遅れでアップデートしただけ

 そもそも資源に乏しい島国の日本がエネルギー戦略で優位に立てるはずもない。おまけに「補助金」のツケは増税や社会保障費の負担増という形でこれから消費者に廻ってくる。またも日本の十八番 ”先送り戦略” である。

 さて「インフレ」「利上げ」で "先行" している欧米だが、こちらは違った兆しFRBの一部に「利上げ」停止の議論が持ち上がっているようだ。

 さて、そこで発表された5月の米雇用統計 ↓

 5月米雇用統計
 失業率 @3.7% 予想 @3.5% 前月 @3.4%
 非農業部門雇用者数(NFP、Non-firm Payrolls) +33.9万人 予想 +19.5万人 前月 +29.4万人  ← 25.3万人
 平均時給(前年比) +4.4% 予想 +4.3% 前月 +4.3%

 またもや何とも微妙な数字平均時給が落ち着いてきているのはFRBにとって朗報には違いないが、NFPは依然目処とされる+20万人を大きく上回る。まだまだ とてもじゃないが「利下げ」を言い出せる状況には無い。|損切丸 (note.com)

 実際1年以内のTB(Tresury Bills、米国短期債)の動きを見ると、政策金利は@5.5%までの上昇を見込んでおり、2023年の「利下げ」は殆ど無い

 但し、一時@4.6%台まで急落(金利は急上昇)した2年債や@4%に接近した5~30年ゾーンには猛烈な買い戻しが起きた。おそらく "リアルマネー" の買いが出たのだろう。確かに2年の@4.5%5年超の@4%近辺は一旦買ってみたい水準ではある。

 ウォール街がそれに"提灯" を付けて米国債を買い上げ(利回りが低下)、 ”イールドスプレッド” (株価と10年米国債を比較した指標)などをテコに米株も持ち上げている。まあこれも 「利下げ」しないと株価は上がらない?|損切丸 (note.com) お馴染みのパターンではあるが、**本格的な底打ちになるかどうか、今回も様子を見てみよう。

 **筆者が「過剰流動性」のベンチマークと見ているWTIとビットコイン(BTC)だが、上値を抑え付けられている所を見ると市場に溢れだした ”あぶく銭” は大分減ってきたようにも感じる。政策金利もCPIと同レベルの@5%まで上がっており、徐々に効果が出てきているのかもしれない

 さて "周回遅れ" の日本人手不足、人件費高騰に関しては欧米に遅れて拍車がかかりつつある。ホテルや飲食に関してはパート時給を@1,500円まで引上げても人材の確保が困難になっており、いよいよサバイバルの様相を呈してきた。今後は正社員の比率を増やし人員を安定させないと「人手不足倒産」が続出しそうな雲行きであり、CPIは日銀が示しているような「+2%以下」に収まるような状況にはとても見えない

 「利上げ」でも "周回遅れ" の日本果たして日銀はFRBの後を追うのか、それとも「預金大国」の利を生かして「インフレ税」の徴収、e.g., 「円安」+「低金利」、に勤しむのか。日本の消費者にとって重要な意味を持つ。

 いずれにしても電気代がこれだけ上がると、太陽光や蓄電池等、自家発電設備に傾倒する家計が増えるかもしれない。実際、そういう機器は価格もこなれてきて大分売れている。今は10年もあれば元が取れるし、今後の「値上げ」にも「預金」で持っておくより余程有効だ。

 実際「損切丸」が怒ったように、こういう事が社会変革の口火になるのかもしれない。特に「現状維持」指向の強い日本人にはこのくらいのショックが必要。背中を押されて社会が動くなら、それも良しだろう。

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