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下がりだした中国国債金利。 ー 物価も不動産価格も上昇する中なぜ?鍵を握る ”豚肉” 。

 上昇を続ける米国債金利に逆らうように、ここに来て中国国債金利が下がり始めた。 e.g. 10年国債金利@3.25%→3.19%(@4/13)。物価指標を見れば3月の中国生産者物価指数(PPI)は前年比+4.4%と2018年7月以来の高い伸び3月の新規人民元建融資は+2.73兆元(約45.6兆円)と前月+1.36兆元(約14.4兆円)から増加。中銀である中国人民銀行が銀行に再三再四融資残高を減らすよう指示してきたのにも関わらず、である。ここだけ「社会主義」が効かないようだ(苦笑)。

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 本来なら金利は上昇する局面である。海外から資金が入って来た気配もない(株価を見ればむしろ流出気配)。ここで国債金利が下がる理由は2つ

 ①中銀が蛇口を開けて「資金供給」しているから

 ②信用リスクの高い社債等から国債に「お金」が移動して金利スプレッドが開いているから(=Flight to Quality、 ”質への逃避” )

 (参考)4/13中国最大級の不良債権受け皿会社、中国華融資産管理の社債価格は急落。破綻の可能性に触れた報道で:社債3億ドル(表面利率3.375%、2022年5月償還)▼13.1セント下落=金利で@16%強、2025年償還のドル建債(表面利率5%)は▼12.1セント、金利@8%強

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 いずれにしろこの局面での「国債金利低下」は余り良くない兆候だ。

 これはここ数年筆者が中国に対して抱いてきた "疑念" なのだが、本当に景気は回復しているのか?「コロナ危機の克服」を大々的に宣伝している割にはCPIが年率マイナスに転落するなどチグハグさが半端ない

 不動産関連のデフォルトが頻発しているのも気掛かり。人民銀行「バブル潰し」を意図して金利を高め誘導していたはずなのに融資や不動産価格の上昇にも全く歯止めがかからない。それがここに来て蛇口を緩めるのは...

 国内の「お金」が足りなくなってきているのではないか?

 もしこの読みが当たっているとすれば事態はかなり深刻だ。人民元は実質「ドルペッグ」 ↓ 。そのドルが足りなくなって人民元だけ供給量を増やせば「真性インフレ」に至る懸念が高まるからだ。アメリカによる「ドルの締め付け」が徐々に効いてきているのかもしれない。

人民元と外貨準備増減

 実は日本も1980~90年代にこれと同じ目に遭っている。”Rising Sun" などと褒めそやされ「バブル」の勢いに乗ってアメリカの ”覇権” に挑んだが、急激な「円高」を仕掛けられ、株、不動産価格が上昇しているのに「不要な利下げ」を強いられた。その後の結果は見ての通りである。

 筆者が「中国景気」に関して1つ気になっているのが「豚肉」。標題 ↑ に添付したのは2017年以降の肥育豚・子豚の価格推移であるが、2018年8月に発生した ”アフリカ豚熱” 以降、急カーブを描いて値段が上昇している。1人当りの年間消費量が23㎏(日本のほぼ倍。日本では鶏と豚が同程度)で年間生産量が5,000万トンに及ぶと言うから途方もない量。これがたった2年の間に生産者価格が2~3倍になるインパクトは半端ではなかろう。暴動も起きようというものだ。

 「インフレ」的観点で見ると中国人の「可処分所得」は急減しており「体感物価」の上昇は外から見るより激しいはず。「富裕層」が日本のタワマンを買い漁るのも「資産防衛」の観点からは実は合理的だ。だが当局は「資本流出」をますます厳格に管理するようになり、その結果が国内不動産価格の高騰なのだろう。表向き人民銀行「バブル潰し」を公言しているが、実は不満の "ガス抜き" のために価格上昇を容認しているのかもしれない

 しかしそんなこんなを繰り返しながら中国の「不動産バブル」はもう5年余りが過ぎた。だが、長年「金利」を見てきた「損切丸」今回の「中国国債金利」低下には何か嫌な雰囲気を感じる。そろそろ限界ではないのか...。

 またこんな事を書くと「中国バブル崩壊の話は聞き飽きた」と言われそうだが、敢えてここで書く理由は3つ

 ①政治体制や14億人もある人口など、既存の日欧米の資本主義諸国とは何もかも違い、社会変化の「周期」が長くなってる可能性

 ②20年以上続いてきたが「グローバリゼーション」 → 「ディスインフレ」から「インフレ」への「大転換」がより現実的になってきた

 ③「コロナ危機」をきっかけに米中経済のデカップリングが始まった

 そもそも国内の経済、政治の状況が安定しているなら、あれほど隣国や欧米に喧嘩を吹っ掛ける必然性はどこにもないエネルギーが外に向かうにはそれなりの理由が存在するはずだ。

 何かがおかしい

 かつて金融危機を何度も潜ってきた筆者が一種の "デジャブ" に見舞われた。同じ臭い。できれば杞憂に終わって欲しいが...。今後も「金利」が様々なサインを出すはずなので ”覚悟” を持って追っていきたい。

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