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”値上がり” は景気の腰を折るのか?

 4月米住宅着工件数 157万戸(▼9.5%) 予想 170万戸 前月 173.3万戸  ←  速報値173.9万戸

  “ウッドショック” (4/29稿 ↓ )の影響が景気に影を落としてきた。4月の米住宅着工件数が予想を大きく下回り、さすがに ”強気” のアメリカ人もあまりの価格の上昇にビビった格好。

 最も影響を受けたのはNYダウでエネルギー関連中心に引けにかけて▼$267.13下落。為替市場では全般にドル安で、インフレの悪影響を意識し始めたと言っていいだろう。ちなみに*ビットコイン(BTC)の不調も続いているが「お金」の移動先と見られる「金」はドル安を背景にしっかり

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 *今日(5/19)中国人民銀行が「BTCでの決済を認めない」と発表したことがきっかけで急落。@$40,000.-を割り込んでいる。このところ「富裕層」への締め付けが厳しくなり「資本逃避」に敏感になっている当局としては当然の措置。やはりBTC高騰に「中国マネー」が絡んでいたようだ。

 「アメリカは ”日本化” するのか?」

 日本のデフレを20年以上タップリ現場で見てきた筆者にとって今の関心はこれ。物価連動債(TIPS)を見ていると、5年BEIは一時@2.80%に迫ったが住宅着工を見て@2.76%に押し戻されている

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 アメリカCPI@+4.2%の衝撃。(5/13稿 ↓ )の後も@1.70%を突破できず@1.60%台でうろうろしている米10年国債を見ても市場の "気迷い気分" が見て取れる。ショート(売り)のトレーダーもいらいらしているだろう。

 1990年台の「インフレ国・アメリカ」も現場でドルを担当した身としては単純に ”日本化” するとは思えないが、ここは慎重に見る必要がある。もし現在の米国債の主な買い手が大手米銀で、背景として「預金増加」があるとすれば大きな変化が起きている可能性もある。現役のトレーダーなら米銀の知り合いやNY支店に問い合わせて確認が必要な場面だ。

 ポイントは1人当り15万円の給付金など、100兆ドル単位でばらまかれた「ヘリコプター・ドル」の行方。解消するには:

 ①極端なドル安

 ②米国債の売り等、ドル金利の上昇

  "金融的解決法" はこの2通りしかない米民主党政権は伝統的に「ドル安政策」を好むのでそれが狙いなのかもしれないが、「ドル安」は輸入物価の上昇を通じて結局インフレ・金利上昇を起こす

 その辺を熟知しているのが元・FRB議長の現・イエレン財務長官だ。先日FRBにテーパリングを促すような発言をしたのはそのため。②金利上昇をFRBの金融引締で人為的に起こせばを①極端なドル安を防ぐぐことができるので、最終的なコストはかなり安くなる。極めて合理的である。

 そこで問題になってくるのが ↑ アメリカCPI@+4.2%の衝撃。でも書いた「FRBの信任」の問題CPIの ”楽観論” をベースに低金利継続を繰り返す現・パウエル議長に市場が不安を感じるのはある意味自然だ。FRBの利上げ無しで②米国債の売り等、ドル金利の上昇が起これば、結局①極端なドル安も起き、株安も誘発する ”カタストロフ” シナリオが現実味を増す

 おそらく一部投資家や個人が予防的に ”カタストロフ” に備えて手元現金や「預金」を増やしているのだろう。それで米国債売りが止んでいるように見えるが、果たしてこれが全米の ”日本化” に繋がるだろうか。筆者は極めて懐疑的だ。ばらまかれた兆ドル単位の「ヘリコプター・ドル」を回収するのは容易ではない強烈な「増税」か「利上げ」を敢行しない限り「お金」>「物」の量を変えるのは至難の業。結局インフレを押さえ込めない

 金利は語る。(5/15稿 ↓ 

 いずれにしろ米国債の金利動向が今後の "道標" となる。1つヒントとなりそうなのが欧州国債の金利上昇だ。米国債が止まっている間に猛烈に名目金利上昇で追いかけてきた。10年で見ればもうドイツとスイス以外はマイナス金利ではない。全てがプラスに転じる可能性も出てきた。

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 もし全米の ”日本化” の流れならこんな動きにはならない。ヨーロッパも必ず巻き込まれる。やはり欧州債売-米国債買のポジション構築がシーソーのように米国債を持ち上げる効果を発揮しているのではないか。こういう  "儲かる取引" にトレーダーは殺到するものだ(後の反動も怖いが...)。

 1つ不確定要素があるとすれば「中国」の不良債権問題。既に人口減少社会に突入しており、 ”日本化” の蓋然性はアメリカより余程高い。ここで変調を来すようだと日米欧が巻き込まれるのは必至。全てがひっくり返るだろう。もっともインフレが止まるとも限らないが...。

 しかしビットコインではないのだから(笑)、主要株価指数の1つである日経平均が毎日500円も600円も上げ下げするのはちょっと辟易とする。大分被害者も出ているようだし、2021年は ”振り落とし” の年になりそう。

 「休むも相場」

 倒れる前に一度 ”お休み” することをお勧めする。次の大きな展開を見極めてから動いても十分間に合うし、中途半端に仕掛けると思わぬ怪我をしそうだ。 "達人" の事を言うのはおこがましいが、最近バフェット氏が手元現金を増やしているのはおおよそそういう事だと推察する。マーケットは非常に大事な局面に差し掛かっている。

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