「インフレ」と「資金繰り」の狭間で。 ー 「倒産」を巡る葛藤。
”7/20 米最大手EVメーカーのテスラ社は2022. 4〜6月に保有するビットコイン(BTC)の75%を売却”
「あのイーロン・マスクでも "資金繰り" に苦労してるんだな...」
折しもツイッター社買収でゴタゴタしており、BTC売却によってテスラが手にした「お金」は9.36億ドル ≓ 1,300億円。6月末時点の保有残高は2.18億ドル ≓ 300億円へ減少している。通りで相場があんなに下げたわけだ。
2021年1~2月に15億ドル ≓ 2,000億円、平均約@31,000ドルで購入、今回の平均売却価格は@28,000ドル〜29,500ドルと推計されている。あれだけ*派手に喧伝した割には儲かっていない。マスク氏でさえこうなのだから、2022年にBTCで儲かった人はごく少数だろう。
「インフレ」はコスト増を通じて「淘汰」を加速する。残念ながら提供する商品やサービスに付加価値のない企業やお店はコストを価格転嫁できずに消えていく運命だ。「コロナ対応緊急融資」や「給付金」で凌いでいたところも多かったが、「倒産」は「支援」が消えるこれからが本番。2021年も多かったが、2022年はそれを上回るペースになりそう。↓
やはり圧倒的に多いのが「飲食店」( ↑ 標題グラフ添付)。それも人口の多い都市圏に集中している。そもそも東京は飲食店が過剰に多いので、 ”今度こそ” 「淘汰」が進むだろう。
雇用の流動化が進んでいて ”Crash & Build" (一度壊して再生)で立ち直りが早いアメリカに対し、バブル期以降、ずっと ”ゾンビ企業・店舗” を温存してきたのが日本。これを象徴するのが日銀による「超低金利政策」と1990年台以降30年以上、超低空飛行してきたJGB金利 ↓ だ。
丁度「損切丸」が英銀に転職した時期(1994年~2016年)が日本人の給料の上がらない「失われた30年」と符合するが、山一証券倒産等に起因する「金融危機」、「ITバブル」(~2001)、「リーマンショック」(2008)、「東北大震災」(2011)と "変わる" チャンスは何度もあった。
そして今回の「コロナ危機」。
その都度** ”ゾンビ” の「資金繰り」を支援し ”現状維持” を選択してきた結果が今の日本だ。それを "外" から見てきた筆者はラッキーと言えばラッキーなのだが、日本人としては随分歯痒い思いもしてきた。
「一旦きれいにしてやり直せばいいのに...」
「金利を引き上げるつもりは全くない」
これだけはっきりとした「インフレ」にも関わらず、こう断言する70代後半の日銀総裁は "変わる" 気などさらさらない。ただし今回の「資金繰り」支援の対象は「国」そのもの。冒頭で例示した「仕手筋」ではないが「借金」の額は何と1,200兆円で+1%の金利上昇で12兆円もコストが上がる。これでは金利が上げられない ”ゾンビ国家” だ(苦笑)。
もっとも「借金」の額で言えばアメリカは日本の2.5倍 ↓ 。ただ「主要通貨ドル」を握っている強味があり、40兆ドル近い株式時価総額が「返済原資」として効いているのでガンガン「利上げ」が出来る。日本も過去の蓄積 ≓ 「国内預金」だけに頼るのではなく、高度成長期のように継続的に "稼げる企業" を育てないと将来的に「資金繰り」は厳しくなる。
「借金」の額だけならアメリカとタメを張っているのが中国。↓
だがこちらは問題だらけ。「返済原資」は不動産に頼るしかないが、これが「不良債権化」している。政治的要因も相まって ”稼ぐ力” にも陰りが見えており株価も下落基調だ。この状況を端的に映しているのがやはり「金利」であり、それと連動して動く人民元の「為替レート」である。↓
もし融資先として①アメリカ・コーポレーション②日本株式会社③中国公司とあったら、一番「お金」を貸したくないのは③中国公司。だから「インフレ」を考慮した「実質金利」が異様に高い。つまり ”危ない” という事。
③中国公司の苦悩はそれでも***「資金繰り」がままならないことに尽きる。「不良債権」を考えれば、かつての日本のように「超低金利政策」により銀行を支える必要があるが、国内のリソースが十分蓄積しておらず、国外からの資金に頼らざるを得ない。仮に「ゼロ金利」に移行すれば大幅な人民元安を招きかねず「利下げ」は容易ではない。
ちなみにECBが予想通り+0.5%「利上げ」を敢行したヨーロッパで「資金繰り」が怪しくなってきたのがイタリア。元ECB総裁のドラギ首相が辞任するのだから、金融機関が不安になるのも無理はない。エネルギー問題で最も苦しんでいるのもイタリアだ。10年国債金利も一時ギリシャを上回った。
もっとも****日本は他国のことを四の五の言っている余裕はない。対人民元での「円安」等を利して国内産業を育てる知恵が必要になる。とにかく「なりふり構わず必死にやることをやる」。ここまで追い詰められて日本人も開き直れるか、マーケットに試されている。ちなみに「倒産」の増加は個別株の急落には繋がるが、必ずしも日経平均など株価指数の売りを示唆しない。 ”淘汰” は競争力を高め、全体でプラスの効果もある。
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