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日銀の資金繰り「3つのシナリオ」。

 まずは「日銀バランスシート」@2020.9.20の速報 ↓ 

日銀バランスシート @20 Sep 2020

 「貸出」が遂に94.7兆円。ここまで膨らむと、その分を財務省が短期国債の発行 →「 政府預金」で支援していると考えるのが正しいのかもしれない。9/20時点では今回増加分の+8.8兆円が「預金」として残り「資金繰り」がついている格好だ。いずれにしろ市場からの「再調達」で資金繰りを賄ってる構図に変わりは無い

 (参考)「国債」は9月償還分(5兆円程度?)があるので残高は増えず。

 そういえば、9/23@大阪経済4団体共催の懇談会で黒田日銀総裁が妙な言い回しをしている:

「経済主体の課題が、”流動性” から ”支払い能力” の問題にシフトしていく中で金融システムに影響を及ぼす可能性もある。」

 日銀の「資金繰り」の現状を把握している者には:「問題は ”流動性” ではなく個々の ”支払い能力” なのでこれ以上の量的緩和は不要。(あとは財政で対応を)」とも読み取れる。

 これを「過剰流動性」修正のサインと捉えれば、直近の株価の調整基調とも整合的だ。NYダウは年初来マイナスまで下落している。(日本円の米国市場への影響については9.22 マネーマーケットの「鯨」。ご参照)

主要株価 23 Sep 20

 ここからの日銀の資金繰りを睨んで、3つのシナリオを立ててみた。

 1.楽観シナリオ

 「GoTo」キャンペーンが奏功、感染の押さえ込みにも成功して経済が急回復。 預金の取り崩しも限定的に留まり日銀からの「緊急貸出」の返済が進む「政府預金」による支援も不要となり「資金繰り」が安定化。

 2.悲観シナリオ

 「GoTo」キャンペーンにより再度感染爆発が起き経済が停滞。更なる「経済支援」のため、日銀による「緊急貸出」が増加預貯金の取り崩しも急速に進み、日銀の「資金不足」が深刻化

  ①金利上昇型 ー 短期国債などの国債増発(→「政府預金」)だけでは資金不足を賄いきれなくなり、日銀は「保有国債」の売却を決断「金利上昇」を容認して「資金繰り」を優先

 (結果)円高、株安を誘発して日本のマーケットは荒れ模様に

 ②インフレ容認型 ー 政府・日銀は「銀行券増発」を決断「通貨法」改正(緊急事態条項?)等の法整備を行い、総選挙などの政治日程に合わせ大型「給付金」を実行。e.g.1人100万円=総額100兆円。結果として負債側の「日本銀行券」が増え、国債増発や日銀による「保有国債」売却を回避

 (結果)円安が加速しドル円は@130円方向、日経平均は輸出関連株が引っ張る形で@30,000円方向へ通貨流通量の増加+円安による輸入インフレで国内のインフレが加速。本格的な「インフレ時代」突入。

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 ???。一見 2.② は全然「悲観的」に見えない。だが良く考えてみよう。仮に年率@+10%で物価が上昇すれば、持っている現金、預貯金は確実に年▼10%減価する。つまり10%の「現金・預貯金税」をかけられたのと同じ状態なので、10年でその価値はゼロになってしまう。

 加えて@130~150円の円安ということは、輸入品や海外旅行のコストが上がってしまい、これまでのように気軽に手が出なくなる端的に言えば日本人が貧しくなることを意味する。これは*歓迎すべき事態なのか?

 *財務省を中心とした政府の人達は ”大歓迎” 。多少の金利上昇があっても「インフレ税」の効果はてきめん。仮に+5%の物価上昇が10年続けば1,000兆円もの借金の半分はほぼ帳消し。消費税の増税など目ではない。

 大体こういう時のマーケットの鉄則は「大多数が望まない方向に行く」1.楽観シナリオはどう見ても楽観的すぎる(苦笑)。

 2.② ”インフレ容認型” は 当初歓迎されるだろう。何せ**一家庭に突如3百万円とか4百万円が振り込まれるのだから。「ドラム式洗濯機」現象@「10万円給付金」が示したように、ちょっとした「消費爆発」が起きる。大型家電に自動車、はたまたマンション購入か。贅沢旅行や宝飾品にも火がつく。「お金」が一方的に余るのだから極めて自然な現象とも言える。

 **おそらく「給付」に使われるのは旧来紙幣ではなく「デジタル・マネー」ではないかと推測している。そのための「デジタル庁」であり「マイナンバーカード」ではないのか。「Gotoキャンペーン」による「デジタル・クレジット」も同様の効果を持つ。

 しかし...しばらく立ってあらゆる物の値段が急騰している事に気がつく懐が温かくなったと思ったら生活は逆に苦しくなる一方だ。これが「インフレ税」の恐ろしいところで、筆者もバブル時代にこれと似た経験をした。給料は上がるが、生活は全然楽にならなかった。

 ”インフレ容認型” シナリオには更に続きがある。円安@130円程度で収まっているうちはいいが、これが一気に@150円を超えるような流れになると円安が加速するかもしれない。幸い外国人が保有する円資産は限られているので彼らにマーケットを蹂躙される事はないが、怖いのは「自家中毒」日本人自身が円売りに殺到すると手が付けられなくなるだろう何しろ日本人というのは周りに合わせて一気に同じ方向に動く習性が強い

 実は内包するリスクは断然 2.② > 2.① 。”金利上昇型” は一時的な金利上昇を我慢すれば大したことではないが(一部の財務官僚は「金利上昇」で大騒ぎするかも)、”インフレ容認型” は「トルコ型」「アルゼンチン型」に転化するリスクがある。「一か八か」の賭けに近い。

 と書いてはみたものの、「本格的な物価上昇」を経験した事がない今の30代以下の世代は 「何を大袈裟な」と思うだけかもしれない。「一度くらいバブルを経験したい」という気持ちもわからなくはないが...。

 筆者は「バブル」「インフレ」はもう御免だし「アルゼンチン型」などもってのほかだが「悲観シナリオ」に対してはある程度の ”備え” はしていくつもりだ。台風や大雨警報と同じで「避難したけど何にもなかった」で構わない「何かあった時」の被害、後悔が甚大過ぎる

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