人民元やインド・ルピーは「ルーブルの避難回廊」になり得るのかⅢ。ー "非友好国" に「ルーブル買介入」強制?
昨日(3/23)こんな note. (続)人民元やインド・ルピーは「ルーブルの避難回廊」になり得るのか。 ー 開戦後1ヶ月、「お金」の動き。|損切丸|note をした途端、翌日 "大統領" から強烈なカウンターパンチ ↓
「 "非友好国" からの天然ガス購入代金の支払いはルーブルを要求」
なるほど...。思わず感心(苦笑)。このことで1つはっきりしたことがある。彼は一部メディアで言われているように狂ってもいないし、もうろくなどしていない。69歳という高齢にも関わらず、依然頭脳明晰。金融リテラシーも高く、為替などマーケットのことも熟知している。そうでなければこんな「お金」の弾丸を打ち出せるはずがない。
「ルーブルの避難回廊」 ↓ の理屈も十分理解しているだろう。
今回の「ルーブル建強制・天然ガス輸出」↓ には、 "非友好国" に「ルーブル買介入」を強制する効果がある。元々ルーブルのようなマイナー通貨にはハイエナのようなトレーダーが群がるが、このニュースを聞きつけて早速仕掛けてきた。ドル・ルーブルは@104台から一気に@97台へ( ↑ 標題)。天然ガスが必要な国がやむを得ずルーブルを買うだろうという思惑だ。
これで「大逆転」?
筆者はこれは無理筋と考える。早速大口輸入国のドイツは「一方的な支払方法の変更は契約違反」と反発しているし、イタリアも即座に拒否。そもそも為替レートも暴落前の1ドル=@50ルーブルで払え、などと無理難題を吹っ掛けてくるのは目に見えている。まず取引は成立しまい。
技術的問題もある。そもそも "非友好国" は中銀も "SWIFT" から除外しており、新たなルーブル口座を開くことができない。「1週間以内にシステムを作れ」などとそれこそ無理筋の命令が出ているようだが、現場は途方にくれているだろう。新規のアカウントを開く "非友好国" などない。
「力の正義」が信条の彼が言っているのは、要は「俺にひざまづけ!」という事。全てこれで押し通すのが "流儀" なのだろう。
だがこれは軍事侵略同様、思わぬ結果を招くだろう。エネルギーに未練を残していたドイツやイタリア、或いは日本も原油・ガス輸入を諦めるきっかけになる。その分のエネルギーは中国やインドに安く流れるだろうが、全部吸収できるとは到底思えない。過度なエネルギー依存は "友好国" でも避けたいのが本音。まして油断のならない ”彼の国” なら尚更だ。
おそらく「ルーブルの避難回廊」について中国、インドがアメリカに釘を刺され道を閉ざされてこんな策を思いついたのだろう(それにしては秀逸。苦笑)。だがこれは将棋でいう「指し過ぎ」で逆転の手を喰らう。
ドイツやイタリアが「それならもういい」と腹を決めてエネルギー輸入のために "SWIFT" に残しておいたズベルバンク等も全て排除すれば外貨調達の道が断たれ "The End" 。「デフォルト」一直線となる。
ルーブルの「スケベ・ロング(買い)」(=どさくさで儲けようという魂胆)もいいが、こういう相場は一旦動きが止まったら終わり。せいぜいルーブルの買い手がいるうちに利食っておく方が身のためだ。 "非友好国" が「原油・ガス禁輸」「 "SWIFT" 除外の拡大」と言い出したら、今度はドル・ルーブルは@150~160どころか、@200,@300なんて展開も有り得る。「デフォルト」に中途半端な結末はない。
日本でもガソリン、電気等の料金が上がり、イタリアでは電気代月13万円なんて家庭もあるようだから、簡単な決断でないのは判る。だが今後ミサイルで脅されて「言い値」でガスを買わされるのとどちらを取るのか。
「インフレ」は確かに苦しいが、所詮「お金」の問題。街を滅茶苦茶にされるより余程ましだろう。エネルギーに関してはアメリカや中東が代替を言い出しているし、値段が上がれば水素発電や高性能蓄電池など、新たなビジネスチャンス、イノベーションも起こる。蠢いているのはドル・ルーブルとエネルギー相場ぐらいで、株等の主要市場が動揺していないのもマーケットが前向きな証。
今回最大の発見は "大統領" が "ぼけた老人" なんかではないのがはっきりしたこと。でなければ「ルーブル建・ガス輸出」など思いつかない。全て計算尽くであり、今の ”強面” はつまり「ハッタリ」。 "核" のボタンをカッとなって押したりする人物ではない。その点、欧米各国首脳も実はほっとしているのではないか。これも「お金」が語る真実の一部だ。
ケンカも交渉事も、そして相場やマーケットも圧力に屈した者は果実を得られない。事実検証が大事なのはもちろんだが、それ以上に "胆力" が問われる場面が必ず訪れる。「脅迫」「恐怖」に対する対語は「降伏」「逃避」ではなく「覚悟」である。
今回の侵略、戦争で改めて思い知らされたのは、個人レベルで腹をくくる事の大切さ。「インフレ」時代の到来で日本人も「覚悟」が試されている。象徴となる「金利上昇」は忌むべき現象ではなく、むしろ歓迎すべき事。その点、筆者は現・日銀総裁とは全く逆の意見だ。
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