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下がりだした中国国債金利Ⅲ ー 「金利」と「リスク」を秤にかける 。

  "外国人の中国国債の保有残高は5月末時点で約2.1兆元(約36兆円)と前年同月比+46%増え、2か月連続で過去最高を更新。保有比率は10%超と3年で2倍になった"(7/8日経新聞)

 外国人の中国国債の保有額は:2016年初めで2,500億元(4.3兆円)程度 → 2018年夏1兆元(17兆円)を突破 → 2021年に入って2兆元(34兆円)を上回るなど急ピッチで拡大している。背景としては、2017年7月から "債券通" (ボンドコネクト)と呼ばれる香港の債券決済システム「北向通」が中国本土向けに先行開始され、*海外の機関投資家も中国本土の債券を売買できるようになった事が大きい。

 *10月末からは英国のFTSEラッセル国債指数に中国国債が段階的に組み入れられる。指数に応じて運用している投資家は、指数にマッチさせるため、ある程度の中国国債を購入する必要性が出てくる。その中には総資金160兆円のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も含まれるようだ。

 生保の一部に既に購入の動きが出ているようだが、何と言っても「金利」が高いのが魅力頼みの米国債が予期せぬ金利低下に見舞われた状況下なら、金利系の投資家は喉から手が出るほど欲しい「高金利」だろう。直近1年間で10年が@3.30%台から@2.92%まで低下したが、それでも「実質金利」@+1.44%は十分高い米10年の@▼4.23%とは比較にもならない。

中国10年国債金利(1年)

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 ではなぜそれほどの「高金利」が放置されてきたかと言えば「政治リスク」に他ならない。**根源的にはいつ元金が没収されるかわからない、という "恐怖感" がある「米中対立」が先鋭化している今は尚更だ。

 **同様の例としては1998年に突如宣言されたロシア国債のデフォルトがある。当時ロシア国債を大量に保有していたLTCMが破綻するきっかけになった "事件" だ。その結果LTCMは保有ポジションの解消を迫られ、ドル円は3日間で▼20円以上値下がり "コピーファンド" を保有していた欧米の金融機関にも多額の損失が出た。かく言う筆者も「日本円」が突然+2兆円も戻ってくる ”被害” にあっている。

 それでも「資金繰り」と同時に「金利収入」を生業としてきた「損切丸」には、実務担当者の気持ちが良くわかる***「収益ノルマ」を課されているトレーダーにしてみれば「米中対立」なんて関係ない。ただひたすら「金利収入」が欲しいだけ。そんな時にこんな「高金利国債」が現れたら、何とか買える「口実」を探そうと必死になるだろう。この辺りは高いと判っていても株を買わなければいけないファンドの事情と共通する。

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 ***こういう話は金融に限らない。社員にプレッシャーをかける会社は数多あり、営業職員が「ノルマ」達成のために ”何でもやる” のと同じ構図だ。一般常識では考えられないような事まで起きるが、法律を犯せばただの犯罪者である。最近だと「カボチャの馬車」騒動などがそれに当たる。

 中国人民銀行も「金融緩和」に傾斜しているし「金利」の理屈から「中国国債買い」は正しいとも言える。だが不動産中心の「不良債権」等の無視できない問題も内包しており「ロシアの二の舞」の怖れもある( ”彼ら” デフォルト等のアクションを最も効果的なタイミングで切れる「政治カード」にしている節もある)。それでも「ノルマ」に追われるトレーダーは「見ないふり」をするかも知れない

 相場やマーケットはこういうファンドや銀行の「都合」で動いている事が多く、いつも理性的に動いているとは限らない大事な「お金」を投じる「個人」には幸い会社からのプレッシャーも「ノルマ」も存在しないので、こういう「都合」を認識しつつ投資、リスクに臨みたい

 「銀行や証券会社の ”お勧め” は買ってはいけない」

 よくこういう事を言われる所以はこの「都合」にある。多くの方が指摘しているが、本当に儲かるなら自分達で手掛けているはず「損切丸」でも投資成功の秘訣の1つとして「金融機関に儲けさせないこと」を掲げているのもそのためだ。何でもそうだが「人任せ」は高く付く

 「他人の損は自分の益」のマーケット原則から言えば、相場の世界で「顧客第一主義」なんてあり得ない中国向投資「イカロスの翼」か「フェニックス(不死鳥)」か ↓ の判断は自分自身で行うべき

 実際中国当局の様々な締付で中国株は調整局面を迎えている ↓(7/26)。「お金」そのものが絡む「投資」「お金」を投じても投じなくても「後悔」のないよう、準備吟味を怠らないように心掛けたいものだ。

アジア太平洋株 26 Jul 21


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