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日本の不動産価格が上昇中? ー ここにも「コロナ後」の供給減少の影響。

 ”成約価格が上昇している今が高値売却のチャンス!”

 「ふ~ん...」。ある不動産やのチラシが目にとまった。曰く:中古物件(マンション・戸建て)の供給が▼2割以上減少する中、逆に契約件数は+2割以上増えていて価格が+2~5%上昇していると言う。

 業者というのは手数料商売なので、顧客が売ろうが買おうが関係なく売買を煽ってくる。こういうチラシや広告は大概胡散臭い物だが、顧客には実態と逆を勧めてくるのが主だ。相場が下がる時なら業者は ”買い推奨” してくるはずなので、売却を勧めてくる今は価格は上がっているのかもしれない

 標題に添付したのは国土交通省が定期的に出している「不動産価格指数」(2008~2019)だが、少しデータも古いので他も調べてみた。

 ↓ は三井住友不動産「不動産市場の動向2021年3月号」から抜粋した首都圏の新築・中古マンションの供給戸数と坪単価の推移(2011~2020)。冒頭の不動産のチラシもまんざら嘘でもないらしい。

新築マンション2011~2020

中古マンション2011~2020

 実は大きな趨勢として、東京では2013年以降新築マンションの供給が減少していることが見て取れる。デベロッパーが需給を考慮しながら建築を進めた事もあるだろうが、湾岸地区や武蔵小杉など大型案件が進捗するに連れ、まとまった優良な土地を取得しにくくなったのが大きい。

 そこに「コロナショック」が重なり、2020年4月以降不動産も「供給」が急減している。これは今回のパンデミックの特徴だが、生産調整が強制的に進む結果、供給力が必要以上に落ちてその後の需要の回復に応えられない「半導体」がその典型だろう。

 東京は言わずもがな世界的大都市の1つである。これはニューヨークロンドンシンガポール上海等と共通するのだが、*大都市の不動産資源は限られている「コロナショック」で一時的なクレーター(崖)が起きてもその希少性に変わりは無い。投資家目線で言えば優良な投資物件である。

 ちょっと前まで「東京オリンピック後の湾岸タワーマンションも暴落」を唱える記事が人気だったが、筆者はずっといかがわしく思ってきた。海外の不動産が堅調に推移していたからだ。2012年にオリンピックがあったロンドンでも不動産価格の暴落など起きず、今も値が上がったまま ↓ 

イギリス住宅価格2010~2021

 「リモートワークで東京から郊外に移住が増える」

 これも不動産業者から言わせれば、顧客に買換を促し商売にしたい思惑が強い。東京の不動産価格が下がる要因と言うよりも、比較的土地の取得の容易な東京周辺(通勤1時間圏内)の不動産を高く売りたいのだろう。実際北関東の物件で鉄道が走っている沿線都市の物件は値上がりが大きい。

 「損切丸」的論点で言えば、やはり「お金の陳腐化」が確実に進んでいる証拠の1つ株価や一時@$60,000を超えたビットコインの急騰は「バブル」と言われることも多いが、これらも「インフレ」=「お金の価値の毀損」が進んでいる証拠。実物の不動産価格の動きともリンクしている。

 実際、「J-REIT」も相場の回復が顕著だ ↓ 

JREIT (1Yチャート)

  ”OOOリゾートの新規会員売り出し@1,400万円”

 「1,400万円?」。某大手リゾート会社が北関東の温泉地に作る高級リゾート会員権の売り出し価格を見て驚いた。つい2年ほど前、南関東の有数な温泉リゾートの会員権が@1,200万円に値上がりしていて驚いたのを記憶しているが、その値段をも上回っている。しかも「まん延防止重点措置」発動の最中に、である。おそらく売れる算段があるのだろう。

 残念ながら「お金はあるところにはある」(苦笑)。

 ビットコインが1枚650万円もする時代にリゾート会員権@1,400万円は高くないのかもしれない。某デパートが開催する「金フェア」でも ”金の馬” 等がバカ売れで盛況らしい。ちょっと小市民には理解し難い世界でもある。

 株等で「億り人」になった人達も含め「富裕層」は何も浮かれてこういう物を買っているだけではなかろう。おそらく「現金」で持っていたくないのだ。ビットコイン株を売っても「現金」に戻さずに不動産、金、会員権、etc.,  に振り替えた結果、こんなことになっている。

 こういう状況を考えると「金利」は随分上がったように見えて実はかなりゆっくりした変化に留まっている。資産価格の変化の半分も織り込んでいない。10年米国債金利で年間+1%というのは動いていないに等しい

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 もちろんリスクは存在する。筆者が「最も大きな黒い白鳥」と考えているのが中国の不動産融資だ。企業・家計の「社会融資残高」が42兆ドル(2019年)と桁違いに大きいし、それを反映して「中国国債」の金利も10年@3.2%台と、これまた桁違いに高い

 日本の「バブル崩壊」の例に倣えば、おそらく "引金" になるのは「金利上昇」だ。「米中対立」が激しさを増す中、中国は「頼みの綱のドル」が段々と調達しにくくなっている「金利」というのは@5%を超える辺りから ”複利効果” で負担が ”指数関数的” に増えるため、これ以上「中国国債」金利が上昇するようだと民間の借入コストは急激に重くなる

 中央銀行である中国人民銀行もここ数年「バブル潰し」に躍起だったが、やはり日本同様、その流れを止めるのは容易ではない実際不動産融資の増加と価格の上昇には歯止めがかかっておらず、最終的にトドメをさすのは「市場金利の上昇」になるだろう。

 「損切丸」では「危機」の前に金利上昇が起きるとシナリオを描いているが、果たして「黒い白鳥」は舞い降りてくるだろうか。一旦静かになっている「金利市場」が不気味でもある。

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